サイバーエージェントには一見変わった『ミスマッチ制度』がある。
ベンチャーならでもと言えるこの制度がサイバーエージェントをサイバーエージェントたらしめているのかもしれない。はたしてその制度とは。
サイバーエージェントの『ミスマッチ制度』
サイバーエージェントでは半期に1回社員の査定を行っている。かつては四半期に1度査定を行っていたという。
その際に、必ず下位の5%がDという最も低い評価を受ける仕組みになっているという。そういったD評価を受けるのはパフォーマンスが低い社員といった内容ではなく、‟会社と価値観の合わない人”であるという。
このD評価を2回受けると、ミスマッチ制度に則り、部署異動か退職勧奨のいずれかを選択することになるという。この制度で今まで100人がミスマッチ評価を受け、50人が会社を去ったという。
藤田晋の意図
このミスマッチ制度についてサイバーエージェントの藤田晋社長は、自信のブログで以下のように語っている。
ミスマッチ制度は厳しいようですが、この会社で成長や昇進の見込みのないことを率直に伝えることのほうがよほど誠実だと思います。
本人のためにも、会社の文化と肌が合わず、いつも不満を感じている人は、一度しか無い人生の時間を無駄づかいすることなく、できるだけ若いうちに転職するべきだと私は思ってます。
また会社の価値観と合わない人に対し、どうして21世紀を代表する会社を創らなければならないのか、から経営陣が説明しなおすつもりはありません。
厳しい制度ではあるものの、本人のキャリアのためにも早めに新しい会社に馴染むことがプラスになるということである。たしかに頷ける内容ではあるし、実際に会社に合わないのであれば、それは合理的なことであろう。
外資では当たり前な追い出し制度
外資系企業ではこうした制度はざらにある。そもそも朝出社したら自分のデスクがないという現象は決して都市伝説ではないし、かなり良心的と言われ、人事制度など大企業として優れているとされているGEではサイバーエージェントより多い下位10%の評価を受けた社員(この場合は、仕事のクオリティに対する評価)はそれが2回続くとクビとなる。
サイバーエージェントは下位5%が2回、しかもその内容は‟会社に合っているかどうか”であり、おおむね優しい部類であると言えるだろう。その社員にとっても有益である(実際がどうかは定かではない)ことを意図している部分が異なる。GEのCEOを務め伝説の経営者と呼ばれたジャック・ウェルチ氏は『下位10%の人材のために時間を使うのは生産的ではない』とまで言っている。
サイバー村と揶揄される現状
しかしながら、こうしたサイバーエージェントの風土についてはあまり評判のいいものではない。自社の風土に合わせることを強い、社員のほとんど全てがあまりにも藤田社長を崇拝していることから、『サイバー村』と揶揄されることも多い。サイバーエージェントの代名詞でもある顔採用(サイバーエージェント側は否定している)で選ばれた女性社員については‟喜び組”とさえ呼ばれることがある。
サイバーエージェントの風土は良くも悪くも大学生のサークル感覚である。勤務地のある渋谷から2駅以内の場所に住めば会社から家賃補助が出ることから渋谷近辺に住む社員が多く、社員は社員同士で常にいることが多いという。
サイバーエージェントは渋谷周辺に居心地のよい“サイバー村”を作り、似た感性を持った社員を集め、そこで愛社精神を高め、村内での結婚なども頻繁にある。これはこれで1つの企業の形であろう。