爆買いの裏に潜む危うさ


大きな市場になっている爆買い。
景気の上向きが期待できる需要ではあるが、そこには危うさがある。

爆買いに黄色信号?

東京オリンピックに向けて、小売店や自治体のみならず日本政府も訪日外国人の獲得へ向けて力を入れている。中国の旧正月(春節、おおよそ2月第2週)に建国記念日(国慶節、おおよそ10月第1週)では銀座や新宿で爆買いする中国人がニュースになり、その経済効果は非常に大きい。

しかし、その一方で”爆買い”の終焉がささやかれるようになっている。その原因の1つが、中国の税制の変更で、2016年4月に中国政府は旅行客が購入したものを自国に持ち込む際の税率を大幅に引き上げている。例えば、高級時計はそれまで30%が60%に引き上げられている。中国では真贋の信頼性が乏しく、ROLEXなど海外製の時計でも日本であえて購入するケースも多かったが、この税制の大きな引き上げは痛いだろう。中国人富豪の爆買いは減っている。

爆買いによるデメリットは

また、もう一つの懸念点が、爆買い客によってその地域のモラルが低下するという部分である。ニュースでお馴染みの中国人爆買い客のマナーは決していいとは言えない。例えば、それが新宿などならおおよそ違和感はないのかもしれないが、銀座などの長年培われた街のイメージからするとあまりいいものではない。爆買いによって大きな利益を得る一方で、長年のブランドイメージを貶めているという見方も決して少なくない。長年の顧客が新規顧客によって遠のいてしまうという現象はあらゆる老舗店舗で見られる共通の現象である。

たとえ、1年の中でごくわずかな時間であったとしても、そのときにそういった新参者によって不快な体験をした顧客はもう一生戻ってこないかもしれない。そうした現象は顧客単価の高い店舗であればあるほど見られる現象である。洗練されたイメージを築くのにかかる時間は長くとも崩れるのは一瞬だ。

10年後はたして何が起こるか

ブランドイメージがどうという部分よりもお金を出して商品を買ってくれる人の方が大事であり、それで売り上げが今まで以上に上がるのであればそれでいいと思うかもしれない。しかし、訪日外国人は10年後20年後もそこで買い物をしてくれるとは限らない。もっと言えば、5年後に日本で買い物をするとは限らない。そういったリスクが存在するのは事実である。

訪日外国人への施策を行う一方で、いかにして既存顧客とブランドイメージを守るかというのももう少し考慮されてしかるべきではないだろうか。