なぜ投資家はセラノスに騙されたのか


稀代の嘘つきとなりつつあるセラノス。
なぜ投資家はこの会社に、エリザベス・ホームズに騙されてしまったのだろうか。

世界を騒がせたスタートアップ『セラノス』

ここ1年で最も世界を騒がせたベンチャー企業はセラノスかもしれない。
セラノスはたった一滴の指から採取した血液を用いてあらゆる検査ができるという技術を有するベンチャー企業で、2014年6月に時価総額が9000億円になったと言われた時にはCEOのエリザベス・ホームズは世界最年少のビリオネアになった女性として注目を浴びた。

しかし、ウォール・ストリート・ジャーナルの記者が告発記事を2015年10月に掲載したことで雲行きは一気に怪しくなった。セラノスが自社の仕組みを利用しているのはごく一部の血液検査だけで、それ以外は競合他社の製品で診断しているのだという。その後、政府機関の調査が行われ検査の不正が確認された。そのことで、エリザベス・ホームズは2年間医療検査会社で働いてはならないという禁止命令を受けた。

なぜセラノスに投資家は騙されたのか

では、なぜこのような事態を招いた会社が700億円もの資金を集めることはできたのか。なぜ彼らはセラノスに騙されたのか。そこには、エリザベス・ホームズの人脈構築術があったとされている。まず、幼馴染のベンチャーキャピタリストから1億円を調達したのを契機として、彼女は雪だるま式に人脈を広げていった。

それを見て、『多くの有名人がこれだけの人とつながっているのだから彼女は本物だろう』と判断され、さらにその人脈は大きくなる。いつの間にかとてつもない大きさの虚像ができたのだという。

大きなのミスを犯した投資家たち

セラノスは主にPEファンド(プライベートエクイティファンド)から資金を調達しているが、その際に投資家には技術を全く開示しないまま投資を受けていたという。投資家はなんと自身にもブラックボックスの技術に対して700億円を総額で投じていたのである。彼女の人脈や発言によってその技術を真実であると信じ込んで投資を行ってしまったのであるが、それが大きな問題を招いた。

IT系のスタートアップは1年単位で成果が出る世界の為、怪しい人間はすぐに淘汰される。しかし、医療においては開発から製品化まで10年かかるのはざらだ。そのため、化けの皮がはがれるまでに時間がかかったのだろう。
海千山千の投資家でもこのように騙されてしまう。今後こうしたことがないように祈りたい。