ストリーミングは音楽業界を復活させるのか


音楽ストリーミングサービスは大きな期待を受けている。
特に日本において沈みゆく船である音楽市場を再建させる可能性があるのはもはやストリーミングサービスだけなのかもしれない。ストリーミングサービスの音楽市場における期待、そしてどこまで伸びるかを考えたい。

衰退しゆく音楽市場

音楽業界は依然危機を迎えている。当たり前のように存在したミリオン(100万枚以上の売り上げ)作品は今ではAKBやジャニーズなど一部のアーティストに限った話であり、その市場は下がり続けている。

CDが売れない分、音楽業界はライブなどの”体験”にシフトしており、事実、音楽ライブの市場は伸び続けている。しかし、CDが飛ぶように売れた時代と比べると厳しくなっているのは事実である。昔に比べても、人々はiPodで移動中も音楽を聴くようになったし、そもそも音楽に触れる機会、時間自体は増えていると言っていいだろう。

音楽業界の抱える課題は、人々は今まで以上に音楽に触れるようになったし、音楽への関心は薄れていないが、それにお金を払ってくれないという問題である。どれだけ音楽が好きでもそこにお金を落としてくれなければ市場は成り立たない。

音楽の次の形がストリーミングサービス

音楽の次なる形がストリーミングサービスである。ストリーミングとは、従来のダウンロードなどと異なり受信しながら再生する形を指す。ダウンロードしようと思ったら全てダウンロードしきる必要があるが、ストリーミングの場合であればその場で再生できる。YouTubeなどの動画サービスもこのストリーミングの形式をとっている。

多くのストリーミングサービスは定額で、そのサービス内の音楽が聴き放題となっている。CDにいちいちお金を払わなくなった(そういったことをしなくてもインターネット上でそれが違法であるとはいえ、音楽を聴けるようになった)中で定額の仕組みの中で正規の形で音楽を楽しんでもらおうとしている。
大手のレーベルなどは、未だにストリーミングサービスには楽曲を提供していない場合も多いが(当然、CDの売り上げは下がるだろう)、ストリーミングサービスの中で音楽を気に入ってもらってライブなどでお金を落としてもらうといった方向へ音楽業界は目を向け始めている。

Spotifyは有料会員で4000万人も

では、ストリーミングサービスはどれだけ普及しているのだろうか。

streaming
出典 https://www.statista.com/

こちらは、各ストリーミングサービスのユーザー数であり、トップのYouTubeは8億人のユーザーがいることが分かる。有料会員で言うと、Spotifyが4000万人、Apple Musicが1700万人となっている。それぞれ料金が月額1000円とすると、月額400億円、170億円ということになる。年間の売り上げで言えば5000億円、2000億円ほどである。

世界の音楽市場は1兆5000億円

現在、世界中での音楽市場は1兆5000億円ほどである。なお、この場合の市場はライブシーン、映画などでの使用料などは含まず音楽のデジタル版(iTunesなどで音楽ファイルをダウンロードする形式)とアナログ媒体(CDなど)の2つの合算からなる。ちなみに、CDとデータはおおよそ半分ずつほどとなっている。

つまり、Spotifyに関しては世界の音楽市場の3割ほどを占めていることが分かる(この場合、純粋な音楽の販売でないライブなどは含まない)。音楽業界においてストリーミングサービスが伸びれば、音楽市場を押し上げる可能性が十分にある。

音楽ストリーミングサービスの可能性は海外市場に

ここまでで音楽ストリーミングサービスは音楽市場における大きなウエイトを占めていることが分かった。日本市場はもともと音楽の市場自体が大きく相対的に見るとストリーミングサービスの割合は低い。

日本のようにCD、ないしは音楽を買う文化ができていない国では、今後音楽市場がストリーミングサービスで伸びる可能性がある。音楽ストリーミングサービスの市場が現在おおよそ8000億円くらいではないかと想像をすることができるが、これが2倍くらいになる可能性はある。そうすればストリーミングサービスだけで今の音楽市場の大きさを超える可能性もある。

音楽ストリーミングサービスの可能性は非常に大きい。日本の音楽市場が目指すべきは日本ではなく海外だろう。