『何のために頑張るのか?』
使い古されたそんな問いかけですが、少なくとも起業家にはそれは当てはまらないのではないでしょうか。
起業家は”何のために頑張るとかない”
たまに学生団体さんやらのセミナーに読んで頂き喋りにいくのですが、質疑応答のコーナーなんかだと決まってある質問が、
『私は頑張ろうと思ってもすぐサボっちゃいます。どうしたら頑張れるのでしょうか?』とか
『何をモチベーションにして頑張っているのですか?』
といったものです。要するに、お前の頑張る理由はなんだということですね。人によってもちろんその答えは違うのですが、多くの起業家の回答っていうのはおそらく嘘だと思います。なんか本当の理由とは違う適当なそれっぽい建前をでっち上げていることでしょう。
だって別に理由とかじゃなく勝手に毎日仕事してるだけだもん
私ならそう答えます。別に頑張ろうと思ったこと自体がないんですよね。頑張ろうって言ったことはあっても頑張ろうと思ったことは無いです。とりあえず毎日あれやろうこれやろうと思いながらオフィスで動き回っているだけです。多くの人々が月曜日に感じる『あー、頑張らなきゃな』という感情もないです。理由は簡単です、土日も平日と同じ働き方をしているからです。うちの会社では日曜日が基本的にミーティングやら業務とはちょっと離れた1週間の振り返りや、将来的な話に充てられるのですがそれはそれで楽しいですよ。日曜日9時過ぎまで楽しくやっています。
おそらく多くの起業家は頑張る理由は特にないと思います。”~だから頑張ろう”と考えているうちはモチベーションに波が出てきてたぶんレベルが低いと思うんですよね。だってイチローは頑張る理由とかないでしょう。あの人のルーティーンとして毎日ヒットを打ち続けているんじゃないかと思います。
言い方を変えるならば、『理由とかなくても自然と(頑張っているとすら思わずに)やるべきことをやり続けられる』ことが最も強いんじゃないかと思います。
本田宗一郎氏が奥さんに『今日はなぜみんなこないんだい』と聞くとその日は正月だったという話が印象に残っています。本田さんは別に頑張るとかじゃなく毎日を過ごしていたのでしょう。そこに理由などなかったはずです。
勝ちたくてしょうがない人こそ起業家向き
起業家に向き不向きとか言ってもしょうがないとは思うんですが、『どうしても勝ちたくてしょうがない人』というのが起業家には向いているんじゃないでしょうか。大企業のトップはまだしも会社を大きくしなければいけない創業者は結果を出し続けないと社員が食っていけません。大きくし続けるのでなければベンチャー企業である意味もないし、中小企業がわざわざ存在する必要ってそんなになくて、それなら大企業に吸収される方が幸せじゃないかという話になるわけです。(もちろん技術力を持つ町工場などの例外もあります)
ともなると、自分の利益を越えて、『もうお金持ちなんだから頑張らなくていいじゃん』と言われるレベルまで頑張る人が勝ち残るわけです。少なくとも上場を達成する人間というのは憑りつかれたように成果を追い求めます。理由は分からないけど上にいきたくていきたくてたまらないのがそういう人々の特徴です。
まだまだ大したことないレベルの私が言うのもなんですが、今の事業をバイアウトすればおそらく一生働かずに暮らすことは可能でしょう。起業家というのはそのくらいの域にはわりかし簡単に達します。でもそれでも働き続けるのは『勝ちたくて仕方ない』からなんです。自社の規模をあの会社よりも大きくしたい、あの起業家に勝ちたいというように。
『勝ち負けにこだわるのなんかバカバカしい』という人はフリーランスもしくは会社員をオススメします。そうでないと経営者はともかく社員が不幸になることになります。そのくらいある意味でバカげた人種が起業家なのではないでしょうか。
できないこと、知らないことが気持ち悪くてしょうがない
私は自分ができないことがあるのが気持ち悪いし悔しくてしょうがないです。例えば、LINEがこんな事業を開始したと聞けば、それを自社ではできる規模にないのが屈辱に感じます。『いやいや、LINEと比べても…』とそう思うことでしょう。GoogleだろうがAppleだろうが負けたくないという異常なまでの対抗心を持っています。
『あの人はうまいから勝てないや…』と諦める人は当然スポーツの世界では向いていないでしょう。同じです。
当然、身の丈というものがあるため、そのときの自社のレベルに合った経営をしていくことになりますが、もちろん長期的にはGoogleのように経営したい、などの野心を持っています。メタップスCEO佐藤航陽氏のブログの中の記事、『現実を直視しながら理想を持ち続けることの難しさ、人生の「賞味期限」』なんか非常に参考になるのですが、世の中のほとんどは自分のレベルを知らずにでかい野望を掲げることのできる身の程知らずと自分の身の丈を知りわきまえた行動をとるビビリの2つしかいません。自分のレベルを客観視した上で野望を抱えることのできる人間というのはビックリするほど少ないものです。多くの人間は自分のレベルを知り、その差を知り、必要な努力量に白旗を挙げます。それでも理想を抱き続けるというのはそれほどまでに『勝ちたくて仕方ない』という病的なまでの負けず嫌いに他ならないでしょう。
同様に、知らないことがあるのが気持ち悪いので本を読むようになりました。今すぐ使い物になるかは知りませんが、知識をひたすら知るようにしています。今までは知る必要の出た時に知るスタイルでしたが、社員を引っ張る立場である以上常に最適な解を導くために知識をつけることに多くを注ぐようになりました。企業の規模に合わせて自分のするべきことも変わってきたということでしょう。それに専念できるということは非常に感謝すべきことであると思います。
それでも世の中を動かすのが経営者だ
自分がその一員だからというのもありますが、世の中で経営者が敵対視されていることが理解できません。おそらく最も税金を納めていることでしょう。社会主義的なみんな同じ収入という考えではたしかに高給とりは不平等だと感じるのかもしれませんが、給与は努力の範囲内のうちですし、何より金持ちが税金を納めているから成立しているわけです。
例えば、エジソンが電球や電話を発明したことで世の中が豊かになったことは間違いないでしょう。多くの人々はエジソンに対して称賛を送ります。同様に、日本の家電が素晴らしいものであるのはソニー、シャープなどの家電メーカーの功績です。それに対して敬意を示すのは自然なことです。ともなれば自分の使っている商品の会社に対しては感謝しても悪くないんじゃないでしょうか。そしてその会社の経営者にも。
そんなこんなで世の中を動かし、よりよいものにしているのが経営者だと思うのです。当然ながら悪いものは誰も使いませんから、良いものを作らなければ利益にはなりません。ところが、人から批判を浴びることの方が多いのが経営者かもしれません。人間の嫉妬やらの感情の犠牲になっているのであろうと想像できます。
そんなこともつゆ知らずとにかく勝ちたくて仕方なくて毎日仕事をし続けるのが起業家です。なにはともあれ私はそんな起業家とは素晴らしい職業なんじゃないかと感じます。