VICEの運営する新たな形のテレビ局は普及するのか


VICEというカナダ産メディアを覚えているだろうか。
新しい形でのメディアを実現したVICEではあるが、そんなVICEがテレビの放送局を運営する。はたしてテレビの形は変わるのだろうか。

VICEのテレビ参入

http://kigyo-ka.com/00308/

YouTubeなどの動画共有サイトで映像コンテンツを提供する同社は、テレビ局への放映権の販売にスポンサー収入を2つの収益化の柱としている。このように、VICEは従来の広告による収益モデルとは異なったメディアの形である。

そしてそんなVICEが次の土俵として選んだのがテレビへの参入である。2015年10月3日に発表されたこの参入では、衛星・ケーブルテレビ局であるA+Eネットワークの保有する『H2チャンネル』を『VICELAND』と改名しコンテンツの提供は全てVICEが行うことが明らかとなった。

なぜテレビなのか

ところで、なぜインターネットで数億人のユーザーにリーチを持っているVICEがなぜわざわざテレビへ参入するのだろうか。様々なメディアが、さらにはテレビでさえテレビからインターネットへと舵をとる中で、その先駆者であるインターネットメディアがテレビをまだ利用するのは不思議な話である。

もちろん、理由は1つではないのだろうが、その1つがインターネットではまかないきれない層へのアプローチだ。テレビのメイン視聴層は中高年、そして特に主婦層であるのだが、インターネットは逆にそこへのリーチが弱い。当然互いに得意不得意がある形である。インターネットからすればキャズムでいうラガード(保守層)へのアプローチをするためにはテレビが非常に都合がいいということである。

VICEはテレビにネイティブ広告を持ち込む初のメディアだ

ところで、なぜそこまでにVICEが注目されているのかと言うとそれはVICEの独自の収益モデルにあると言える。多くのメディアが広告収入をメインとしてビジネスを構成する中(テレビももちろんCMという形の広告がおおよそ唯一の収益源だ)、VICEはライセンス収入の他、ネイティブ広告を用いたいわゆるコンテンツ広告を武器としている。

このコンテンツ広告(より正確な表現を用いるためにあえてネイティブ広告ではなくコンテンツ広告と呼ぶ)というのはスポンサーに関する、ないしはスポンサーのプロダクトに関するコンテンツを配信することでコンテンツ自体が広告であり、なおかつユーザーに対しても見る価値のあるものであるという形である。いわゆる今までのような見たくないのに間に挟んでくるという広告ではなく、広告でありながらもユーザーがそれに魅力を感じるという自然な形での実現がなされている。

VICEはそのコンテンツ広告をはじめてテレビに持ち込むメディアになるだろう。今までYouTubeなどインターネット上で公開していたものをテレビ局の電波に乗せて行うだけの話だ。
そのことでテレビ自体の形も変わるかもしれない。

意外なところで存在するコンテンツ広告

とはいえ、新しいと思われているコンテンツ広告も実は徐々に進んでいるし、今までも存在したと言っていいかもしれない。例えば、アニメをテレビ局の作成で放送したとして、それはアニメのグッズの宣伝になる。視聴者はそれを広告として嫌がることもないし、広告としてのユーザーロイヤリティも高い。

テレビ上での映画の放送なんかも映画の続編の広告と言えなくもないだろう。視聴者が広告と思わないほどにユーザーフレンドリーな広告(味方によっては広告という場合も含めて)は、今までも存在するし今後増えることだろう。