10年物の日本国債の利回りが史上初のマイナスに転落した。
利回りがマイナスになるという事態ははたしてなぜ起こったのだろうか。
日本国債マイナスの衝撃
本日、10年物日本国債の利回りは主要7ヶ国(G7)で初めてゼロ%を割り込み、マイナス0.035%まで低下した。日本銀行の提言したマイナス金利政策の影響を受けてのものと思われるが、マイナス金利政策発表前の0.225%から、わずか7営業日でマイナス0.035%まで金利は低下することとなった。G7の中で初めてであることから分かるように異常な数字であるということは言うまでもないだろう。
欧州中央銀行(ECB)が今から約1年7ヶ月前にドイツでは10年物利回りが0.2%前後とプラスで推移していることを考えると、マイナス金利政策によるだけのものとも言えない背景が存在すると言えるだろう。それほどまでに国債の利回りがマイナスになるという事態は大きな衝撃をもたらした。
スイスでも起こった国債マイナスという事例
実は国債の利回りがマイナスになるという事態は日本が初ではない。2015年1月にスイスの10年物国債が人類史上初めて、つまり世界初でマイナスに転じた。実は日本の事例が初ではなく、これまでに国債の利回りがマイナスになるという事態が起こっている。日本の例はたしかに特殊であるだろうが、世界的にマイナスの利回りというのはありうるケースであるということである。
スイスと日本に共通するのは自国の通貨が金融危機時の避難場所となっているほどに経済が安定しており、スイスフランと日本円はたしかに世界で3本の指に入るほどに安定した通貨であるだろう。国債の利回りはおおむねリスクの度合いと相関するから安定した経済である日本やスイスの国債が低くなるのは頷ける話であろう。
国債の利回りがマイナスになる理由
とはいえ、これは利回りがマイナスになる理由にはなっていない。利回りとは当然のごとくそのものの仕入れ値に対する一定期間後の収支であるわけであるが、利回りがマイナス0.035%であるということは100万円の国債を買ったら99万9650円になって返ってくるということである。それではなぜこれを買う人間がいるのだろうか。
当然ながら、買い手がいなければこの価格(利回り)にはならない。
結論から言うと利回りがマイナスになるのはマイナスでも需要があるからである。つまり、マイナスでも買い手がつく、マイナスでも買う者がいるということに他ならない。では、その買い手とはいったい誰であろうか、それはただ一つではないが、一つ挙げるのであれば大手の都市銀行である。日本銀行の当座預金に対してマイナス金利が設けられていることから、都市銀行はお金を外に出す必要がある。その際にお金の使い道として最も安定的であるのが日本の国債なのであろう。当座預金に預金しておくよりもマイナスの利回りの日本国債の方が利益につながるとみてそうしたことが起こったと思われる。
日本経済の信用が伺えるマイナス国債
国債の利回りというのは経済への信用に相反するような形となる。当たり前の話で返ってくるか分からない借金に対しては高い利回りがつかないとお金を出すインセンティブがない。そのため相応なレベルまでに利回りが上がる。
それを考えてみれば日本経済への信用というのは非常に高く100%返ってくるとすら見られているのに近いようにも思える。
日本国債の利回りから分かる日本経済への信用は非常に高い。こうした結果からそれが明らかになったように思える。