なぜバブルは生まれ、そしてはじけたのか?


バブルは未だ語られる人類最大の経済的失敗だ。
では、そのバブルはなぜ生まれるのか、そしてなぜはじけるのか。

バブルという過ち

日本のバブル崩壊、アメリカのリーマンショック。これらは人間のリスクの読み違いが引き起こした行き過ぎた過熱が引き起こした経済危機である。もしかするとここに2016年の中国のサーキットブレーカーの発動なんかも名を連ねる可能性があるだろう。EUもまたそうした側面が存在するのは事実だ。バブルという言葉は1600年代に起こったネーデルラント共和国(現在のオランダ)でのチューリップバブルに端を発している。つまり、300年以上前に存在した現象にも関わらず同じことを人類は繰り返しているということになるわけである。

なぜ人類は同じ過ちを犯してしまうのだろうか。そしてまたバブルは引き起こされるのだろうか。そもそも、なぜバブルは起こったのだろうか。そのことを考えることで経済におけるある一定の失敗のパターンが見えてくるのではないだろうか。日本でバブルが起こったのは1980年代のことである。

バブルが生まれた経緯

1989年12月29日、日経平均株価は3万8915円という高値をつけ、この日は後にバブルの絶頂の時と言われることとなる。日本のバブル景気がスタートしたのは、ドル高是正のための『プラザ合意』からである。これによって、円高が引き起こされ、日本の輸出産業は大打撃を受けることになる。もともと、日本の円が安く、アメリカへとどんどんと安い日本製品が輸出されていたわけであるが、それを食い止めるためにドル安円高にしたわけである。

このことをきっかけに、製造業が一定の陰りを見せ景気が低迷した日本では金利を引き下げることで貨幣の流動性を高め企業などの投資を増やす方向へと進む。これで大きな流行になったのが、『財テク』と呼ばれるような土地を買うこと、ないしはお金を借りてそれを土地などで運用する行為である。このときにこうした財テクが流行ったのは、日本が大きく成長していたことと『土地神話』と呼ばれる土地の値段は必ず上がり続けるという幻想が原因である。

日本では、国土が狭く限られており、経済は上向き続けているために土地は上がり続けられると強く信じられていたわけである。多くの経営者が本業そっちのけで財テクに力を注いでいたのもまた印象的で、資産を運用することが最も大事であり、利益の出る方法であると考えられていたわけである。そのせいか、土地を買ってはゴルフ場を作るということが多く行われていた。

なぜバブルは起こったのか

この際に最終的に大きな問題となったのは、土地を担保にして銀行からお金を借り、そのお金でまた土地を買うということを繰り返していた部分にある。この繰り返しで、銀行は返せるか分からない借り入れを多く許していた。そしてその保証が全て土地であったわけである。

銀行もまた、土地が上がる前提で1億円の土地を担保に1億2000万円を貸し出すことさえあった。その結果は多く知られているように、土地の下落と同時に一気に不良債権の山になるという現象である。銀行などの金融機関はリスクを分散させるために融資先を分散させたり、様々な方法でリスクを軽減しようとする。しかし、この発想には穴がある。分散させているはずの債権は土地の価格という要素で非常に密接に関連しているのである。そのため、起こるはずのなかった多くの不良債権が生まれるということが起こった。
リーマンショックも同じだ、サブプライムローンという低所得者層向けのローンが証券化されていたが、それらは一気に同時に不良債権と化したのである。

バブルの正体とは

このように、多くのバブルは同じ構造をとっている。そしてそれはリスクを徹底的に計算したものが実は全くもって抜け落ちた理論であったことが原因である。なぜこのようなことが起こるのだろうか。それは人間はそのときの雰囲気や高揚感に乗せられて判断を誤るからである。
バブルを象徴する現象としてNTT株がある。わずか2ヶ月で3倍ほどまで上昇した株価に対して、本来株に疎いはずの主婦までが『これは今乗らなくては損だ』という風に考え株を購入していった。結果としてそういった人々は大きな損失を被るわけであるが、これを引き起こしたのは『今まで上がってきているからこのまま上がるだろう』という誤った予測である。

人間は実際に目にしたものに弱い。『そんなうまくいくわけがない』と冷静な判断ができる、リスクを嫌うときがほとんどであるが、実際に自分の知り合いが儲けていたり、周りがみんなやっていると途端に信用してしまうのである。冷静に物事を分析した上で行動を起こせばいいのだが、人はいつだって冷静か高揚かの二択でしかなく、理論的に考えるときは全くないのである。これがバブルの正体だ。