もし彼が当選したら史上最悪のアメリカ大統領になるだろう。
それでも支持されるのはなぜなのだろうか。
アメリカ大統領選は一騎打ちに
アメリカ大統領選はクライマックスを迎えている。選挙は2016年11月8日(現地時間)に行われるが、その候補はこの1年でヒラリー・クリントンとドナルド・トランプに絞られ、一騎打ちとなっている。
ヒラリー・クリントンがここまで残るのはおそらく多くの人が予想してきたことだろう。第42代アメリカ合衆国ビル・クリントンの妻であり、国務長官を務めた過去や、2008年の大統領選ではある程度の支持を集めたことから間違いなくこの大統領選の第一候補であった。
では、トランプはどうだろう。彼はそもそも不動産会社を経営し”トランプ・タワー””トランプ・プラザ””トランプ・マリーナ””トランプ・タージマハール”などの物件を手掛ける不動産王である。政治経験はなく、突如立候補することになった。
2012年の大統領選では、その前の年からバラク・オバマ大統領を攻撃するなど存在感を示していたが、まさか立候補するとはという驚きがあっただろう。
トランプはなぜ支持されるのか
そして彼は失言王と言えるほど過激な発言が多く、立候補から今に至るまで常に世論からは大統領に相応しくないとの烙印を押されている。しかし、彼は未だ大統領候補として支持を集めている。大統領になるかはともかく、残り2人の候補まで彼が残ったのは紛れもない事実だ。
失言が多く、アメリカの大統領としておおよそ相応しくない彼がここまで支持される理由は何なのだろうか。
1.自らの資金で選挙に挑んでいる
日本の選挙戦に加えアメリカのそれは資金面で自由だ。多くの候補者は、企業から資金援助を受け、その範囲で選挙を行う。CMを出したり、メディアに出演したり、選挙には当然お金がかかる。どれだけ国民に対する露出を増やすかは票数を増やす上で重要な要素だ。
ヒラリー・クリントンはウォール街をはじめとするアメリカ企業から献金を得ており、それが”企業の犬(言いなり)”と揶揄されることにつながっている。アメリカ国民は政治や法までも企業に操られていることにうんざりしており、自分の資金のみで戦うトランプはそういった意味で後ろめたい部分がなくむしろクリーンという印象すらあるようだ。
2.アメリカの庶民の願望を代弁している
トランプは、アメリカの高所得者に重い所得税を課すと宣言したり、アメリカで車を売る日本企業に大きな関税を課すと宣言するなど、考えなしとも言えるほどに政策について口を出している。そうしたことをすることがどういう結果を招くかはともかく、アメリカ国民は金があるならもっと税金払えと思っているし、日本企業が貿易で儲けていてずるいとも思っている。
そうした、政策や現状に不満のある国民からすればトランプの発言には可能性を感じるのかもしれない。少なくとも『自分にとってこいつが大統領になれば得だ』と思うかもしれない。現状に特別不満のない国民はあまり関心を持たないだろう。トランプは、誰に向かってしゃべることが最も効果的なのかを心得ていると言える。
3.発言が誰にも分かりやすい
トランプは、決して難しい言葉を使わない。そして、人の感情に訴えかけるような話し方をする。なぜ、選挙になると日本の候補者は駅前で自分の名前を連呼するのだろうか、それは政策について話しても誰も最後まで聞かないし覚えてないし効果がないと分かっているからである。
人に何かを伝える際に最良の方法は分かりやすく簡潔に話すことだ。言葉を選び、言葉を取り繕って話す他の候補者に比べて彼はシンプルに自分の意見を投げつける。それは彼が何を意図しているのか、何を考えているのか分かりやすく、人の支持を集めることにつながっているのかもしれない。