電力小売自由化の行方は


2014年4月に一般家庭に向けた電力の小売は全面自由化されました。
これにより新規電力会社の参入を促し、価格の競争性が進んでいくと見られます。しかし2016年半期を終えた時点で普及数は100万世帯弱であり規模としては未だ小さいものとなります。ではなぜ普及が進まないのでしょうか。

電力サービスの違いとは

まず電力会社の価格はアンペア数毎の基本料金+従量料金の二つにより定められています。ここに各社サービス提供やポイント付与が加わる形となります。
一例を挙げますと小売自由化により新規参入したloopでんき社はこの基本料金を完全撤廃し、従量料金を一律26円(関東圏内)と定めることとしました。これによりKwh数による価格変化を無くし、よりシンプルな料金プランを提供しています。

また東京ガスでは自社サービスとして東京ガスと電気を両方契約すると電気の基本料金が270円/月(税込)となります。更に光回線と契約することでセット割引の色を強めています。各社それぞれの料金形態があり、消費者は正しい選択をすることで従来より電気使用料金の無駄を省ける仕組みとなりました。

なぜ一般家庭への普及が滞っているのか

このように各社がこぞって価格競争性を生み出しているのにいまいち普及していない現状です。その理由として考えられるのは人口密度が高く電力消費量の多い関東圏や関西圏に新規参入会社が多く、地方まで事業を伸ばしている会社が少ないという点です。そして関東、関西の1人暮らし世帯にはあまり電気使用料金に変動がないことも要因の一つです。

こうした状況を踏まえても都市部の家族世帯への普及率もそれほど高くはありません。都市部に住む世帯は地方より電力会社を選ぶ意思決定をよりし易い立場にありながら、従来の契約形態を持続する人が多い現状です。
これは高齢化社会による影響が大きいと見られます。高齢の方々は従来の電力安定供給型政策を信用し、価格より安全性を重視する人が多いと見られます。

従来プランとのシェア競争

新規参入業者は既存電力会社よりテクノロジーをいち早く導入し迅速な意思決定経営が行うことが可能であり、設備投資費や人員コストを削減することで低価格で電力を供給することができます。しかし、有事の際の安全性の面では大手電力会社に未だ軍配が上がると言えます。そのため新規参入業者はまず一般家庭からの信頼性を得る土台固めから始めなければなりません。

現在は市場における信頼性を構築する期間であり、アーリーアダプタ層を取り込み市場に浸透させることが第一と言えるでしょう。各社は中期的戦略プランを立ててシェアを確保する見込みであり、長期的視野で参入していると見られます。

これからの電力会社競争

現在は電力間コストを是正する期間と言えるでしょう。意思決定者が増えるにつれ市場は活性化し、通信事業のようにコストの縮小から付加価値へサービス転換を迫られる時期が到来すると予測します。

auがすでに、ケータイ料金などとセットで電気を売るなどしており、各種料金が一元化できるのは消費者にとってニーズがありそうです。

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電力自由化の未来

従来は政府主導で電力を管理し、不測の事態には計画停電等を行ってきました。しかし東日本大震災等、地震や津波の有事の際に対応しきれない面も多いことが露見されました。そのため新規参入を促すことで電力会社間の相互運用性を高めて不測の事態に対処するようにしました。

一般家庭ではまだ信頼構築段階ですが、長い目で見れば国全体としての安定性は増すことでしょう。通信事業のdocomo,au,softbankのように新たなサービス、料金プランが次々と施策されていくと考えられます。電力という既存インフラ市場に参入するケースとしては非常に参考になります。これからの動向が気になるところですね。