縮小する飲食業界の中で伸びるピザのブランド力


今ピザ業界が注目を集めています。
そもそも飲食業界全体としてのピークは90年代後半で、それ以降は緩やかに下降しているのが人口の減少する日本での最近の形ですが、そんな供給過多の中でもピザ市場が安定した伸びを見せています。

出典 ピザ協議会

新たな形態のピザ屋が登場

今までピザ屋といえばピザーラ・ピザハット・ドミノピザ等の大手宅配ピザチェーンであり、価格帯でいえば宅配寿司に並ぶお高くて美味しいものだと消費者にイメージさせてきました。これは日本独自の傾向と言えるでしょう。

それが近年、宅配ナシで店舗販売し少しお洒落なファストフードとして取り扱う店が増えてきています。それに伴いピザ一枚がワンコイン以下で食べられる店が増えてきました。(ナポリス、CONA等)

なぜ低価格で提供できるようになったかというと、ピザ窯の独自開発が進められた結果です。ナポリスではファストフードとして成り立たせる為に生地作成から延ばしと焼成まで全部自動的に作ることができる機械を開発し、ピザ一枚辺りにかかる時間と労働力を大幅に削減しました。これによって他社には真似できない価格破壊を引き起こし、ファストフードピザとしての参入障壁を築き上げています。

宅配ピザとのシェア競争

ファミレス業界でも変革が起きています。すかいらーくグループであるグラッチェガーデンズは、一食千円前後でピザ食べ放題コースを提供することで業績を伸ばしました。今では店の看板メニューと言えるでしょう。またコンビニやコストコ、スーパー等の冷凍食品が発達し、冷凍ピザも本物に迫る味となったことで購買する人が増えてきました。

近年ではコンビニや飲食業界の宅配産業の発達もあり、宅配ピザの競合相手は増えつつあります。宅配ピザ大手三社が寡占する時代は終わりつつあります。この状況下でドミノピザではいち早く対応し、お持ち帰りならピザをもう一枚無料とすることでテイクアウト市場を開拓、価格競争に対抗しました。

テクノロジーの発達

ドミノピザはネットでより簡単に注文ができる仕組みを作り上げ、そこにクイズ・くじ引き・ゲーム等でクーポンゲットのお楽しみ要素を混ぜることで大幅にネット注文顧客を獲得してきました。スマホが登場してからはアプリ決済に力を入れるようになりましたし、まだ以前と比べネット注文が盛んでなかった頃にはネット注文するだけで5%オフのサービスを提供していました。

また、ピザトラッカーという宅配そのものの位置情報を利用した機能では、いつ届くかを知ることができ、電話注文方式ではいつ届くか分からない不安を解消するといったネットならではの優れたサービスを提供しています。
こうした時代の流れに合わせた対応もピザ市場が伸びる一因となりました。

外食産業不振の中でピザ市場が好調なわけとは

これまで宅配業界でシェア競争していたピザ屋でしたが、ファストフード産業への新規流入が増えたのが主な理由です。またファストフード業界では長期に渡るマクドナルドの業績低迷やすき家のブラックバイト問題等がありました。
他社が崩れていく中でピザというハンバーガー等に匹敵する大型商品で勝負を仕掛けたことによりファストフード業界内で一定の地位を勝ち得ています。

これから宅配ピザ業界はドローン配達等のテクノロジーやネットを駆使することで他社より宅配効率化を進め、ピザ市場への新規参入はファストフードとしての差別化を図っていく流れになるでしょう。

ピザ市場から学べる商品の本質

現在はファミレスやコンビニ、ファストフードも宅配産業に流入しています。異業種とのサービス混合は更に深まっていくことでしょう。
提供する商品は同じ「ピザ」だとしても、提供する形によってサービスや利益・費用は様々に変わっていくものです。これまで宅配チェーンが高級ブランドとして築き上げてきた「ピザ」という人気の大型商品をファストフードで提供することにより、商品の本質を転換することに成功しています。

ブランディング次第ではどんな食べ物も大型商品として売れる可能性があり、そこが飲食業界の面白いところではないでしょうか。