C2Cの次の市場?D2Cとはどんなビジネスなのか


D2Cという言葉を聞いたことがあるだろうか。
次なるスタートアップの市場として急成長している分野であるが、C2Cの次なる市場として大いなる注目を浴びている。

D2Cスタートアップが急増中

最近、モノづくりのスタートアップが増えている。
従来スタートアップというのはおおよそインターネット上で展開するWebサービスや、最先端の技術にフォーカスする(今で言えばAI、VR、AR、IoTなど)テック企業がお馴染みのものであった。しかし、今回取り上げるD2C企業というのはおおよそそういったスタートアップっぽいジャンルから少し離れた、むしろトラディショナルな企業に近い。

D2Cというトレンドが進むにつれてよりスタートアップの領域が広がってくるだろう。今ではITやテクノロジーがスタートアップの市場になっているが、今後それは何倍にも広がるだろう。

D2Cとは何なのか

それでは、D2Cとはどんな概念なのだろうか。
D2Cは、『Direct to Consumer』であり、B2Bの『Business to Business』、C2Cの『Consumer to Consumer』と同様の文脈で語られる言葉である。消費者に対して直接商品を販売する。つまり、自社で企画、製造した商品を自社の販売チャネル(多くはECサイト)で販売するモデルである。

従来の在り方であれば、自社で企画、製造した製品でもスーパーやコンビニなどの小売に並べるケースがほとんどである。iPhoneなどはApple Storeで直接販売もしているが、おおよその販売経路は3大キャリア(ドコモ、au、Softbank)に頼っている。直接自社の商品を他社を介さずに商品を売るケースはほとんどないと言っていい。小売店に至るまでも卸売業者が関わるケースが従来の商習慣からすればほとんどである。(そして時にはその卸売業者は複数になる。)

しかし、最近ではゼロから始まったスタートアップがいきなり自社製品(webサービスなどではなく実際に形のあるもの)を開発し、販売するケースが目立っている。

スタートアップにIT系が多い理由

そもそも、なぜスタートアップはWebサービスやテクノロジーの分野が多いのだろうか。

スタートアップとは、急成長することを前提としたビジネスモデルである。そういう意味で言うと実はベンチャー企業とは意味が異なる。急成長することが前提であるため、出来立ての中小企業でもスタートアップには該当しない。急成長する市場、ビジネスを選ばないとスタートアップにはなれないのである。

そうなってくると、急成長のためには短いスパンで成果を出す必要がある。そうなると自然とWebサービスや最先端のテクノロジーなどの分野に限られてくるというわけである。特に、Webサービスは人々の関心が移り変わるのが早く、企業もコードを完成させればその瞬間にはユーザーの手に届く。(当然、実物のある商品であれば流通にかかるコストや時間がある。)

D2Cの特徴は圧倒的な速さ

そういった理由で、スタートアップは電子上の商品やプロダクトを扱うケースが実は多い。コンシューマ向けのWebサービスか、エンタープライズ(比較的大きな企業)向けのテクノロジーかその2択に自ずとなってくるわけである。
C2Cはコンシューマ向けプロダクトの中から分化した、まさにインターネット上の場を提供する(例えば、メルカリなどは実際に売り買いするのは消費者同士でメルカリ自体が何かを売るわけでも発信するわけでもない)サービスということになる。

そして、スタートアップの新たな市場がD2Cである。Direct to Consumerの名の通り、消費者に直接商品を届ける仕組みである。つまり、間に他社が入らないため1つのスパン(企画→製造→流通→販売)が自社のみでできて圧倒的に速い。

例えば、あなたが大企業に勤めていて今から考えた商品をコンビニの棚に並べようとしたら、短くても半年間はかかるだろう。これがD2Cなら1ヶ月でできることすらあるわけである。こうしたスピードの速い流通の仕組みがスタートアップとして機能することを可能にしている。

D2Cに多いのはアパレル系ジャンル

では、D2Cのスタートアップはどのような企業が多いのだろうか。顔ぶれを見ると、、Bonobos(アパレル)、Warby Parker(メガネ)、Dollar Shave Club(髭剃り)といった具合にアパレルおよび美容関係のものが多いようである。他では、下着メーカー、香水といったジャンルが多い。

アパレル周辺の分野というのは原価率(この場合では原材料費など含む製造そのものにかかる原価)が低く比較的取り組みやすい分野である。反対に自動車などは小さい規模のスタートアップには手に負えないし、薬品など認可に時間のかかるものも難しい、食品なども原価率が高く大規模な工場での製造が必要になるだろう。

そして、D2Cスタートアップの増えた要因には3つの要素が挙げられる。それが、『SNS』『製造』『流行の変化』である。

D2Cの増えた要因『SNS』

メーカーにとって大事になるのは、流通チャネル、その中でもどうやって消費者に手をとってもらえるかという部分だ。小売店に対してメーカーは常に営業を行い、少しでも売れる棚に置いてもらう努力を惜しまない。いくら商品がいいといっても、どこに置いてもらえるかどれだけ消費者との接点を増やすかという部分に売れ行きは左右される。

そういった意味では従来の大企業よりもスタートアップは優れているかもしれない。彼らにはSNSがある。SNS上でファンを増やすことによって常に購入者を確保することができる。小売店に頼らなくても商品を販売することのできる仕組みを作っているからこそ、それをSNSで構築できるからこそD2Cの仕組みが可能になる。

D2Cの増えた要因『製造』

amazonがスタートアップ支援で見据える未来

『Amazon Launchpad』は、スタートアップの製品を販売する仕組みであるが、その中ではamazonが在庫の管理などを行ってくれるようになっている。こうした大規模な設備を持つ企業が他社に対して設備を提供する仕組みが充実している。

製造段階において、大企業は自社の工場を有し効率のいい製造が可能になるが、スタートアップはそういう設備を持たない。
これを解決するのが小ロットで安価から発注できる製造業の存在である。そういった製造のハードルが下がったことでスタートアップでも商品の製造ができるようになっている。

D2Cの増えた要因『流行の変化』

SNSの普及もあってか、消費者の流行は驚くべきスピードで変わっている。その流行についていくためには、従来のメーカーの数年スパンでの開発ではもはや追いつかなくなっている。それに対応するのがD2Cということである。

仮に、企画・製造という行為にかかる時間が同じだったとしても、小売を通して販売をするのと、自社の販売チャネルで販売を行うのでは消費者の目に届くまでの時間が異なる。流行に対応するためにはD2Cが最も適している。

モノ作りでもスタートアップが躍進か

今まではスタートアップと言えばシリコンバレーでひたすらパソコンと向き合ってコードを書き続けるオタクであったが、D2Cスタートアップは昔からあるモノ作りの形をしている。当然ながら、世の中の全てのビジネスがパソコンで行われるわけではなく、特にITといった情報を扱うものの対極にあるのが実物のあるものを作るメーカーである。

そうした分野にもスタートアップが進出してくることでまた業界の在り方も変わってくるかもしれない。今までのようにゆっくり製品を作っていれば急成長してくるスタートアップには勝てないだろう。新たな風が吹き込んでくる予兆を感じる。