最近目覚ましいのがスタートアップのインフレ化です。
どんどんと評価が上がり、資金が流れるスタートアップにあって、低年齢化も同時に進んでいる中で、学生スタートアップが結果を残すケースは非常に多く、学生が10億円を稼ぐ日はそう遠くないでしょう。
KURASHIRUのdelyが30億円を調達
料理レシピ動画のKURASHIRUを運営するdelyが30億円を調達しました。KURASHIRUは最近もテレビ番組で紹介されたり、App Storeの無料アプリランキング上位に位置するなどサービスのグロースが目覚ましいです。
当初はKURASHIRU FOODという形で、KURASHIRUという総合的なサービスの中の1つにレシピ動画があったようですが、今ではレシピ動画一本に絞ったのでしょうか。
そんなことはいいとして、素晴らしいのは30億円という金額です。1回の調達ラウンドで第三者割当増資する金額の割合はだいたい多くても30%くらいですから(さすがに一気に50%以上の株式を持っていかれる増資は見たことがありません)、delyの評価額は100億円を超えるくらいと考えていいと思います。
これは、十分に上場企業としてやっていけるレベルの額です。delyCEOの堀江氏は24歳ですから、上場の最年少記録がリブセンス村上太一氏の25歳であることを考えるとそれすらも狙える評価の大きさということになります。(現実的な部分で上場という意味では、売上がいくらか分かりませんし、判断のしようがありません。)
ちなみに、最近上場を果たした株式会社はてなが時価総額57億円くらいです。つまり、delyははてなの2倍くらいの価値がある企業ということになります。
スタートアップの躍進相次ぐ
delyの堀江氏は92年世代ということになるわけですが、この92年世代ではハゲラボのgoroo株式会社の花房氏(ユナイテッドに約12億円)などすでにイグジットに成功した例もあります。もっと若い93年世代でもmarbleの株式会社candle(CROOZに約13億円)といった面々がすでにイグジットしています。
そして、この世代でもトップを走るのがdelyということでしょう。リブセンスの上場時の時価総額が約34億円ということを考えるとそれを遥かに上回る規模であると言えます。
他にも、本誌で紹介させて頂いた株式会社ジラフの麻生輝明氏は92年世代、プログラミング学習ツールとして有名なProgateも92年世代です。大学生の頃に起業して、すでに(25歳前くらい)結果を残すというケースが相次いでいます。起業家の低年齢化、およびレベルアップが目まぐるしい状況です。
スタートアップはインフレ状態に
古くは、上場したGunosyやDeNAに買収されたMERY(株式会社ペロリ)から始まって日本の、特に大学生くらいの年齢の若いスタートアップがいい結果を残してきています。
こうした多くのイグジットを経て、スタートアップはインフレ状態になっています。
今までは、シードラウンド(ざっくりとですが、サービスを作る前、アイディアの段階)では、300万円の投資で株式が10%とか、600万円の投資で株式が20%とか、ざっくりと3000万円~5000万円の価値を見込んでスタートするケースが多かったのですが、今はミニマムで1000万円の投資で10%くらい、つまり1億円くらいの評価額から始まるケースがほとんどです。
つまり、色んなスタートアップが結果を残しているので何もしていない状態から期待値が上がっているのです。スタートアップの評価額ももちろん市場が決めますから、先輩経営者たちの実績がよければその分VCは期待しますので、それ自体は自然なことです。(ちなみに、シリコンバレーのシードラウンドは1億5000万くらいの値がミニマムでは多く、これより上です)
delyの30億円調達に関しても、当然期待値が含まれているものでしょう。もちろんKURASHIRUが素晴らしいサービスだからここまで高い評価になったのは言うまでもありませんが、KURASHIRU自体がリリースされたのは2016年の頭くらいのことです。2014年にデリバリーサービスとして創業し、そこから動画メディアとしてピボットしたdelyのわずか1年くらいのサービスであることを考えると売上がめちゃくちゃ立って儲かってるぜ!という状態ではないはずです。そうなると、これからどこまで伸びるか(利益が出るか)という視点で企業の価値を考えるわけですが、
その際には当然今までにイグジットしたスタートアップを基準にして考えるはずです。スタートアップが全てこけていたらdelyもちょっと厳しいかなと判断するだろうし、スタートアップ全体の評価に左右されるのは否めません。
delyが30億円を調達した背景には、スタートアップ全体の評価が上がっていることが無視できないということです。VCというのは、一般的に3年~5年のスパンで投資先をイグジットさせて(もちろんここはVCがコントロールできるわけではありませんが)、利益を出さなければいけません。利益をどんどん出していればVCの大口の投資家である機関投資家もどんどんお金を入れてきます。
VCやスタートアップ全体の経済が大きくなっていることは言うまでもないでしょう。
学生が10億円稼げる時代に
今後、スタートアップの低年齢化はさらに進むでしょう。私のところにわざわざ田舎から会いたいと来てくれた高校生がいましたが、彼はインターネットなどで学生スタートアップの存在を目にしており、大学生になる前からスタートアップへの強い関心を寄せています。もちろん高校生起業家も存在します。少し有名になった慶応の女子高生起業家とかみたいなのではなく、ちゃんとしたスタートアップです。
少なくとも私の時代に、大学1年生から、その前の高校生の頃から起業やスタートアップを志す学生などいませんでした。そもそも、スタートアップという言葉が非常に希薄でした。インターンという言葉がちらほら出ていたくらいです。
時代は確実に大きく変わっています。
大学生で起業し、大学生のうちにイグジットまで達するというケースも出てくるでしょう。事実、22歳でイグジットくらいなら目にするようにはなっていますから現実的な話です。そうなると、大学生が10億円を稼ぐ時代が来るかもしれません。というよりあと5年もすれば来ます。
今後も進むスタートアップの躍進
ここ2,3年の学生スタートアップを支えたのはキュレーションメディアに代表されるSEOハックメディアでした。そのはしりがMERYであり、ハゲラボやmarbleなどもこれに当てはまります。SEOのルールを理解した上で、適切にコンテンツを配置しトラフィックを一気に得る戦略は高学歴のエリート学生にマッチし、利益を出す前であってもトラフィック(月間〇〇PVや〇〇MAU)が評価され、イグジットに至りました。
そして、delyのKURASHIRUは動画メディアです。学生スタートアップは、新しく生まれた市場に対してうまく事業を展開し、2,3年ほどで結果を出していることが分かります。こうしたケースが今後も増えるでしょう。新しい市場は今後もどんどん生まれます。
新しい市場が生まれればビジネスチャンスは増えるわけですから、その数の分スタートアップは成果を出すでしょう。さらなるインフレは今もなお進んでいます。