高所得者が愛する世界的ベストセラーとは


人は誰しもが成功を求める。しかし、真の成功を勝ち取る人間はわずかだ。

7つの習慣とは

では、成功する人間と成功しない人間にはどのような差があるのか。一度はそのようなことを思ったことはなかろうか。そんな、疑問に一つの解を出してくれるのが、7つの習慣という本である。

7つの習慣とは、1990年に初版が出版されたときにセンセーションを巻き起こした。それ以来1,000万部以上を売り上げ、ビジネス書として今でもベストセラーを続けている。現在は累計3000万部まで到達し、多くの経営者や上位層のビジネスマンなど高所得者に愛されている。
上場企業のビズリーチの調査によると、年収750万円以上のビジネスパーソンに「新社会人に贈りたい本は?」と尋ねたところ、トップはスティーブン・R・コヴィー著『7つの習慣―成功には原則があった!』だった。

読んでほしい理由を聞くと、「人生のエッセンスがすべて含まれている。成功するための法則、習慣を学んでほしい。我慢して読み終え、1つでもいいので実践してほしい」「より良く生きるために行動を変革することの重要性と方法論が書かれている。自己意識の変革をうながしたい」などが挙がった。
これほどまでに成功をおさめた高所得者に愛されるビジネス書は類をみない。

著者のスティーブン・コヴィーは、国際的に高い評価を受けるリーダーシップ研究の第一人者である。
コヴィーは、真に成功を果たすには個人としての有効性と職業としての有効性をバランス良く備えることが重要だと認識しており、それを反映して本書は、この2つの領域でより効果的に行動するための手引書となっている。

そのコンセプトは時に複雑であるため、流し読むのではなく、じっくりと腰を据えてここから学び取りたいと感じる筈である。読み終えたときには、どの章にも付箋や手書きの注釈が数多く残され、コヴィーの集中セミナーに参加したような充実感に満たされることだろう。

今回は、この『7つの習慣』から7つの成功法則をご紹介しよう。ビジネスで結果を出したいビジネスマンや自分の商品の成約率を上げたい経営者などビジネスの世界で成功をおさめたいと考える人には非常に有益なものになるだろう。

7つの習慣は、人間を連続した成長へと導く

7つの習慣とは人間が成長する上で大切な7つの心がけを体系化した思想である。まず、人間は赤ん坊の時は、全てを他者に依存する存在だ。そこから自立に向かうのに必要なのが、第1、第2、第3の習慣である。これを私的成功という。

自立した人間は、尊重し合い、違いを認め合いながら、高度な依存関係(相互依存)を築き上げる。社会で生きる人間としては理想形であり、そのために必要なのが第4、第5、第6の習慣だ。

さらに、知力や体力などを養い、人間としての外枠を広げていくのが第7の習慣。これら7つの習慣は相互に影響し合っており、1つの力を伸ばすことで、他の力も成長する。大切なのは、私的成功があって、初めて公的成功があるということだ。

問題の見方を「インサイド・アウト」に変える

7つの習慣は人生を変える力を持つと言われている。だが、まずその7つの習慣を知る前に、前提として必要な考え方がある。それはあなたの周囲の問題は、「あなたが問題と思っているから問題なのだ」という事実である。
多くの人は、自分の都合の良いように物事を見て、「良いこと」と「悪いこと」を判断している。そういう人は常に「出来なかった理由」を人のせい、環境のせいにする。例えば、娘が反抗期で言うことを聞かない。親は何で私のことを分かってくれないの?といった具合だ。

私たちは、世界をあるがままに見ているのではなく、私たちのあるがままの世界を見ているのであり、自分自身が条件づけされた状態で世界を見ているのである。相手と意見が合わないと、相手の方が間違っていると瞬間的に思う。

「完訳 7つの習慣 人格主義の回復」P.22

物の見方を変えて、自分が変わらなければ周囲の物事も変わらない。こういう考え方を「インサイド・アウト」と言う。コヴィーは本の中でインサイド・アウトのことを次のように語っている。インサイド・アウトとは、自分自身の内面から始めるという意味である。内面の奥深くにあるパラダイム、人格、動機を見つめることから始めるのである。
問題はいつも、相手ではなく、自分の中にある。このようなインサイド・アウトの考え方を持つのが、7つの習慣を知る上で重要である。

「インサイド・アウト」で世界を見る

他人の言動を見て「間違っている」と、つい批判したくなることはなかろうか。だが、本当は相手の方が正しいのかもしれない。人は誰しも、過去の経験や知識を参照して世界を見ている。どんなに「自分は客観的な人間だ」と信じる人でも「事象を自分が見たいように見ている」という呪縛からは逃れられない。
この真理に気づかない人は、自分の正しさを疑わない。

それ故に、物の見方が狭く、仕事で失敗をすれば、職場の雰囲気や上司のせいにする。自分が理解されないことを人のせいにして、相手を責める。結果、ますます周囲から避けられ、成長の機会を逃す。これは、「See(物の見方)→Do(物の見方から来る行動)→Get(行動の結果、得るもの)」の循環が悪いせいだ。いい結果を得たいなら、出発点であるSeeを変える必要がある。

Seeとはパラダイムであり、パラダイムとは、世の中の物事を見るときに基準となる考え方のことだ。人は誰しも、パラダイムを持っており、それが行動や態度の源にある。もし、自分が思うような生活が送れていないなら、自分のパラダイムに問題がある。
では、どんなパラダイムに転換すべきか。そこで、コヴィーは、原則に基づくパラダイムを持つべきだと主張する。原則とは、国や時代を超えて、誰もがその価値を認めるものだ。例えば、公平さ、誠実さ、勇気などだ。

自分は正しい、相手は間違っている、このようなパラダイムを持ち続けていたら、現状維持だ。他人や組織、環境など自分の外側(アウトサイド)が変わらないと結果も出ないと思うのが「アウトサイド・イン」という考え方だ。
そうではなく、自分の内面(インサイド)、つまり考え、見方、人格、動機が原則に合っているかに気をつけ、行動を変えることで結果を引き寄せるという意識が大切である。この姿勢を「インサイド・アウト」と言い、コヴィーは7つの習慣の前提として重要だと考えている。

第1の習慣「主体的である」

成功する上で、まず必要となってくるのが「主体的であること」だ。些細な行動であっても、ただ受け身で行動するのではなく、自分で振る舞いを選択する、そういう意識のことだ。では、コヴィーの言う主体的とはどういう定義なのか。それは人間として自分の人生に対する責任を取ることである。自分の人生の主役は自分であり、どんな人生にするのかは自分以外の誰でもない、ということだ。

主体的で無い人間は、仕事のミスも、異性にフラれるのも、何でも他人に責任を転嫁する。だが、本当に自分の性格を決めているのは、自分自身のはずだ。自分が他人や環境を思い通りに変えることができないように、他人や環境が自分を変えることはできない。嫌な目にあったら、それを防ぐ何かができたはずなのに、そうしないことを選択した自分に問題があったと考えたほうがいい。
人に批判をされて、気分を害する、そんな経験は一度はあるだろう。人間は動物であり、それ自体は仕方がない。しかし、環境や刺激に反応し、その反応を当たり前に繰り返す必要は全くない。なぜなら、人間には自覚するという優れた能力がある。刺激に反応したことを自覚すれば、刺激に対してどんな行動をとるのかというのは自分で選択ができる。

自覚することを意識することで、逆に自分が外部に刺激を与えられることにも気づく。それが「率先力」。率先力は周りが動くのを待つのではなく、自らの責任で行動する力だ。
つまり、主体性を持ち、環境や刺激に反応していることを自覚し、行動を選択する。そのように、自分の行動を変えることで周りに刺激を与え、主体性を率先力に昇華させる在り方が重要である。

第2の習慣「終わりを思い描くことから始める」

次に紹介する成功法則は「終わりから思い描くことから始める」だ。たとえ、どんなに努力を積み重ねていたとしても、ゴールが意識できていなければ、間違った方向に進み、時間が無駄になる。そうならないために「自分は何のために行動するのか」を自覚し、ブレない生き方をするために、自分が大切にする原則を定義しよう。
バーの仕事を例に挙げてみよう。接客の仕事でお店のミスやお客さんの行動で起こるアクシデントやトラブルがある。酔っ払ったお客さんだって来るから、接客の仕事をしている人間は毎日、何か起こると思っていないといけない。そこで、お店の人間として迷ったら、お客さんを笑顔にする方法を選べばいい。現実的に見れば、売り上げがマイナスな日もあるかもしれない。

でも、「お客さんに笑顔で楽しんでもらう」それがバーを開いた目的であり、このお店の原則だと店主は語る。
経営で、色んなところに目移りすることはある、隣の芝生は青く見えるからだ。そういう時は、原点に立ち返る。
迷った時、原点に返ると、自分がどうするべきかが見えてくる。どうしては私は起業することを目指したのか、その領域でこの事業で起業しようと決意したものは何だったのか。
ここがブレてしまうと、今の自分に沢山の選択肢があると勘違いに陥ってしまう。それでは何も前には進まない。だからこそ、「やらない」という選択を自信を持って決断できるようになることで、自分の人生を前に切り拓くことができる。

内面に変わることのない中心を持っていなければ、人は変化に耐えられない。自分は何者なのか、何を目指しているのか、何を信じているのかを明確に意識し、それが変わらざるものとして内面にあってこそ、どんな変化にも耐えられるのである。

『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』P.134

生産的な前進のために、「終わり」を設定する

コヴィーによれば、「すべてのものは2度作られる」という。例えば、家を建てるなら、まず頭の中で完成後をイメージして設計図をつくる(知的創造)。その後、実際に工事が行われる(物的創造)。人生も同様に、人生をイメージし(知的創造)、毎日を生きる(物的創造)。という2つの創造で作られるものだ。

第2の習慣「終わりを思い描くことから始める」とは、この知的創造のことなのである。人生の知的創造とは、言うなれば人生の脚本をつくること。自分の生き方は自分で決められるはずなのに、多くの人はそれを忘れ、いつの間にか他人が決めた脚本通りに生きている。そして、人生の終わりに後悔する。
そうならないように、人生の脚本をつくる責任を自覚する必要がある。コヴィー曰く、自覚、想像力、良心の3つの力は、人間独特のものである。そして、この3つの力を駆使することで、自分だけの人生は見つかる。

では、知的創造を行うには、具体的に何をすればいいのか?まずは、知的創造にはリーダーシップが必要だ。ここでいうリーダーシップとは、目的を考え、そこに到達するために「何をすべきか」を検討して人や自分を導くことである。だが、多くの人間は、このリーダーシップを忘れ、マネジメントにこだわる。マネジメントも確かに大事だ。事実、第3の習慣にマネジメントは大きく関わる。しかし、マネジメントはリーダーシップがあってこそ、効力を発揮する。時間調整やタスク管理は、目的が明確に存在するからこそ、必要になる行動だ。

まず、「目的は何か」を自分に問う習慣を身につける。そして、目的に向かって自分を導くリーダーシップを常に意識する。

迷った時は「原則」に立ち返り、選択する

では、自分の人生の目的はどうやって見出すのか。まずは、生活の中心を考える。生活の中心を考えるとは自分ができることは何か、自分が大切にしているものは何かをはっきりと意識することだ。それは言い換えると、「影響の輪」の中心に集中すること。もっとも自分の関心が高く、影響力を発揮できることに人生の力点を置くことで、日々の言動にブレがなくなり、人間としての安定性が増す。
そうすることで「自分」というものをより強く自覚できるようになり、相手との違いを尊重しながらも、自分らしい振る舞いができるようになるのだ。周囲に流されず、人生のゴールに着実に進んでいけるようになるのである。

自分の生活の中心を考える際に、お金、会社、家族、趣味など、物中心の考え方はオススメできない。なぜなら、物中心の考え方は、行き過ぎるとバランスが崩れ、依存状態を招くからだ。
そこで、結局、多くの人は中心に置くものを固定できず、バランスをとりながら生活しようとする。そういう状態のままでは、人生における一貫性が欠落してしまう。コヴィーは、中心に置くべきものは「原則」だと言う。公平さ、誠実さ、勇気などの普遍的で価値を失うことがない原則を掲げるべきだと考える。
あなたの生きる「価値観」とはなんだろうか。物ではなく、もっとも大切にしたい価値観を生活の中心に置こう。
それが、あなたの人生の脚本を作る手助けとなるはずだ。

第3の習慣「最優先事項を優先する」

次に紹介する成功法則は「最優先事項を優先すること」だ。
多くの人は当たり前のことだと思うかもしれないが、意外にできている人は多くない。多くの人は忙しさに身を委ね、その場は充実するが、人生を振り返り「あれもしたかった」「これもしたかった」と後悔する。もっと「緊急ではないが重要なこと」に時間を割くべきだとコヴィーは主張する。では、成功するための習慣、「最優先事項を優先する」について見ていこう。

スケジュール通りに事が進んだことで、安心するという人は多いだろう。
中には、少しでもスケジュールがずれ込んだり、予定が変わることに苛立ちを覚える人もいるかもしれない。次に紹介する、第3の習慣はそんな人にとって新たな価値観を提供してくれるだろう。
そもそも、時間とは管理ができるものなのだろうか。スケジュール通りに物事が進むというのは、逆に自分が時間に管理されていると考えることもできる。
自分が設定した時間が来たから、さっさと切り上げて次の行動に移る。

それではまるで機械だ、時間を度外視した付き合いから信頼関係を構築できたり、成長の機会を得たりするものだ。
仕事はもっと長期的な視点を持つ必要がある。バーのマスターがお客さんを満足させられるほどのシェイカーを
振れるようになるには、100や200ものカクテルを常に同じクオリティーで作れるようにならないといけない。そのためには、毎日1つずつ練習を積み重ねるしかない。今日明日に何かが起こるわけではない。だけど大事なことを日々積み重ねる、それしかない。

「時間管理」という言葉そのものが間違っているという考え方だ。問題は時間を管理することではなく、自分自身を管理することだからだ。

『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』P.198

多くの人は、目先の結果にとらわれすぎている。スケジュールをもっと柔軟に考えるべきだ。「今はこれが大事だから、こっちを優先させる」という選択を自分でしたなら、それは予定が狂ったわけではない。予定に忠実というのは、実は単に当事者意識がないだけなのである。

人間活動は4つの領域に分けられる

第3の習慣「最優先事項を優先する」というのは、あまりにも当たり前すぎるように思えるが、実は多くの人が勘違いをしている。それは「時間を管理する」という発想にとらわれているからだ。時間を管理するという発想にとらわれている人は、スケジュール表に予定を隙間なく入れて、全てを消化しようとする。効率的な毎日を送れば、
バランスがとれ、充実した生活を手に入れられる。

しかし、スケジュール重視だと、大事な作業があっても時間が来たら終了となり、重要な事柄が中途半端になってしまう。加えてスケジュールに空白の部分があるとそこを何をしてもいい時間と思い込み自分の人生の目的とは全く関係のない自由時間をダラダラと過ごしてしまう。つまり、管理すべきものは、時間ではない。最優先事項を優先するという行動の順序を管理すべきなのである。

第4の習慣「WinWinを考える」

ここからは、人間関係を含めた公的成功に必要な習慣となる。その習慣とは「WinWinを考える」ことだ。多くの人は、交渉には勝者と敗者しかいないと考えがちだが、そうではない。自分の利益の主張ばかりする人間では、周囲との信頼関係の構築などできない。そう、次に紹介する第4の習慣は、周りと信頼構築の構築し、周りと上手くやっていく、公的成功に欠かせないものなのである。では、ご紹介しよう。

月に8万得られるアルバイトをしていて、こんな場面に遭遇したら、あなたはどんな対応を取るだろうか。お客さんから、「こんな小さい店で人に使われて、いくらぐらいもらってるの?」「俺はMBAを取って、20、30代で年収1000万、2000万の世界なわけ。こんなとことは次元が違うのよ」「こんなバイトで日銭稼ぐんじゃなくて、もっと上を目指したら?」
この発言に怒りを覚えるのは当然だ。非常に失礼な客だなと思うだろう。

おそらくあなたは怒りに身を任せて言い返すか、相手に対してトゲトゲしい言葉や態度をみせるだろう。しかしその態度はコヴィーからすると問題がある。理想の態度は笑顔で「いえ、今の私の器ではこれが精一杯ですから…」と言うことだ。

私たちはえてして、強いか弱いか、厳しいか甘いか、物事を「二者択一」で考えがちだ。しかし、このような考え方には欠陥がある。原則に基づいておらず、自分の権力や地位にものを言わせる態度だからだ。

「完訳 7つの習慣 人格主義の回復」P.289

どんなに嫌な言葉をかけられたとしても、そこであなたが相手を言い負かそうとしていたら、どんどん緊張は高まり、最後は喧嘩になっていたに違いない。そこで、意地を張らず会話がエスカレートしないように、さっと相手に譲って降りる姿勢が大切だ。加えて、相手のために先に譲ることで、かえって得をすることは実際多い。

公的成功は、他者を打ち負かして手にする勝利のことではない。関わった全員のためになる結果に達するように効果的な人間関係を築くと、それが公的成功である。

「完訳 7つの習慣 人格主義の回復」P.313

第5の習慣「まず理解に徹し、そして理解される」

話し方や、どんな質問を投げかけるか、相手はどんな話に興味があるのかなど話すということに関して、関心を持つ人は多い。しかし、聞き方、聞く力に関心を持つ人は少ない。だが、本当の信頼関係を構築し、自分の影響力を発揮するには、まず相手の話を深く聞く必要がある。「自分の答え」に急かず、「相手の答え」に耳を傾けよう。

人というのは、自分の話を沢山聞いてくれる人に信頼や親しみの気持ちを抱く。しかし、できている人は少数だ。人の会話というのは「私に言わせて」「俺の話を聞いて」という気持ちの応酬で終わることがよくある。例えば、「A社との仕事が上手くいかなくてさ…」「お前、メールで用件済ませてない?きちんと訪問しろよ」「レスポンスが遅いんじゃないか?俺は必ず2時間以内に返事してるぜ」といった感じだ。人は「話す」ことに快感を感じる生き物だ。だから、皆、自分の快楽を優先する。その結果、誰も人の話を聞いてない。

私たちはえてして、問題が起きると慌ててしまい、その場で何か良いアドバイスをしてすぐに解決しようとする。
しかし、その際私たちはしばしば診断するのを怠ってしまう。まず、問題をきちんと理解せずに解決しようとするのである。

『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』P.340

話を深く聞くことの難しさの一つは、相手に対して無意識に上下関係を作ってしまっているところにある。

「話す」より「聞くこと」から始めよう

第5の習慣は「まず理解に徹し、そして理解される」。家族や恋人、そして友人に自分のことを理解してもらいたいたいという気持ちがあるのに、そのことに成功している人というのは少数だ。その原因の一つとして挙げられるのが、話を聞く姿勢だ。自分の言いたい気持ちが先走り、相手のことを理解しようという姿勢が足らない。「分かってくれない相手が悪い」と責める前に、自分自身を振り返ろう。相手も同様に思っている可能性は十分にある。

では、どうすれば相手は自分の話を聞いてくれるのだろうか。考えてみてほしい、言うことが毎回違ったり、気分屋で態度に一貫性が無い、そんな自分本位の人間に本当の気持ちを打ち明けたいと思うだろうか。そう、まず必要なのは、自分本位の発信をやめて、相手のペースに合わせる努力をしよう。
相手の理解に徹することで、やがて相手は自分の言葉に耳を傾けてくれるに違いない。
コヴィーも本の中で、聞くことこそがコミュニケーションにおいて、最も重要なスキルだと言っている。

WinWinの関係を構築するには

では、WinWinの関係を構築するには、何が必要なのだろうか。そのためには、話の聞き方において、最高レベルのスキル、「共感による傾聴」が求められる。共感による傾聴とは、相手の目線で話を聞き、心の底から誠意を持って相手を理解しようとすること。相手が「何を言ったのか」ではなく、「どう感じたのか」に耳を傾けることだ。

多くの人は、共感による傾聴は時間ばかりがかかって、非効率だと思うかもしれない。だが、心の声を聴くために使った時間は、信頼という大きなメリットをもたらす。人の話に耳を傾ける時は、「話したい」という欲望をできる限り制限しよう。

相手の心の声を聴くためのフォーステップ

では、どうやって共感による傾聴という最高レベルのスキルを会得するか。それには、4つの段階がある。

まず1段階目は、話の中身(キーワード)を繰り返す。これによって、相手の話を注意して聞くようになる。続いて、第2段階は、話の内容を自分の言葉に置き換えて言い直す。これにより、相手の話の内容を考えながら聞くようになる。次に、3段階目は、「辛いね」「楽しいね」など相手の感情を自分の言葉で置き換える相槌を打つ。これにより、相手の言葉よりも、相手の感情に注意して聞くようになる。最後に、4段階目は、第2段階と第3段階を同時に行う。この段階を経て、初めて相手は心を開き、信頼感が生まれる。

第6の習慣「シナジーを創り出す」

次に紹介する成功法則は「シナジーを創り出す」だ。人がチームを組み、何かをしようという時には、多くの人が共通点に目が行きがちだ。だが、お互いの違いをぶつけ合うからこそ、互いの良さを活かし、シナジー効果で大きな成果を得ることができる。それでは違いを活かしたシナジーの創り方をみていこう。

シナジーの本質は「違い」を尊重することである。シナジーとは個別のものを合わせて個々の和より大きな成果を得ることだ。コヴィーは、シナジーは「人生においてもっとも崇高な活動」とみなす。というのも、シナジーを創り出すことで、今まで存在しなかった新たなものを生み出せるからだ。
とはいえ、多くの人は、自分と違うものに否定的になりがちである。年齢や職業の違い、性別の違い、育った環境、文化など挙げれば枚挙にいとまがない。そもそも、人は違う経験をし、違う人生を生きているのだから、考え方や見方は違って当たり前。
人との違いを率直に認め、自分の弱点をさらすぐらいがちょうどよい。

違いを尊重することがシナジーの本質である。人間は一人ひとり、知的、感情的、心理的にも違っている。誰もが「自分のあるがまま」を見ているのだということに気づかなくてはならない。

「完訳 7つの習慣 人格主義の回復」P.407

自分の考え方や能力の限界を認め、
相手の長所から学ぶ。こんな風に相手との違いを尊重できれば、シナジーは生み出せる。

シナジーを生み出す3つのコミュニケーションレベル

シナジー創出の鍵は、コミュニケーションの深さだ。そのレベルは、3段階に分けられる。最初の段階は、「防衛的コミュニケーション」。信頼度も協力度も低く、お互いに守りに入っている。相手を警戒し、隙を見せないとする守りのコミュニケーション。言質を取られないように、相手に押し切られないようにする緊張したやり取りだ。それだと、自分が損しないことを第一に考えるため、結果はWin-LoseかLose-Winで終わる。

そこから信頼と協力がやや高まると、次の段階「尊敬的コミュニケーション」となる。ある程度の相互理解は生まれるが、共感による傾聴には至らず。相手を立てる意識が強く、深い感情移入までには至らず、解決は妥協によってなされる。
そうして、信頼と協力の度合いが最大化されると「シナジー的コミュニケーション」が生まれる。それぞれの相違点ついて深く理解し、個々が挙げる成果を遥かに凌ぐ成果を生み出す。

シナジーには、忍耐が不可欠

シナジー的コミュニケーションにおいて、第3の案が生まれる。第3の案とは、どちらとも当初予想だにしなかった案のことだ。それは、2項対立で、どちらを取るかではなく、両者の意見を取り入れた新たな案。Win-Winを生み出す。とはいえ、実践するとなると、なかなか難しいと思うだろう。他人の批判ばかりする同僚、強引に意見を押し付ける上司、自己主張ばかりが強い友人、そんな相手と相違点を尊重しようとはなかなか思えない。

しかし、そこで妥協を選ぶのは危険だ。妥協は相手の無神経さ、愛情のなさを認めたことになり、後の争いの種になりある。自分の人生をどう生きるかは、自分の問題だ。どんな相手に対しても違いを尊重し、シナジーを創り出す。そういった姿勢を持ちつづけることで、第3の案に到達できる。

第7の習慣「刃を研ぐ」

最後に、紹介する成功法則は「刃を研ぐ」だ。第1〜6の習慣でより大きな成果を出すためには、日々自分を鍛え、切れ味を高めていくことが大切だ。素材としての自分を高めることで、それぞれの習慣で得られる実りも自然と大きくなる。それではみていこう。

人間にとって、成功とはなんだろうか。人間はどうしても見栄や意地を張ってしまう生き物だ。「こう見せたい」という自分のふりをして、つい背伸びをしてしまうことなんて誰もが経験したことがあるだろう。だが、後で辻褄が合わなくなり、辛くなるのは自分だ。

人に優れた自分として接したちいのなら、自分自身を高めて、その姿でありのまま接するほうが本当はよほど楽なはず。見せかけじゃない自分を磨くには、1日1歩、前に進めばいい。それを習慣にして、5年、10年続ければ、積もり積もって、その差は大きくなる。それこそが習慣の力だ。日々、自分は中から変わる用意があるか。それが非常に大切なのである。

一日のわずか一時間を自分の内面を磨くことに使うだけで、私的成功という大きな価値と結果を得られるのである。あなたが下すすべての決断、あらゆる人間関係に影響を与えるだろう。
長期的に肉体、精神、知性を日々鍛え、強くし、人生の難局に立ち向かい乗り越えられるようになるのだ。

「完訳 7つの習慣 人格主義の回復」P.439

日々、自分の器を育てる

第7の習慣「刃を研ぐ」。これは、体調(肉体)、観点(精神)、自律性(知性)、つながり(社会・情緒)の4つの側面でバランス良く自分の刃を研ぐ習慣のことだ。
まず、肉体的側面で刃を研ぐというのは、運動によって体をメンテナンスすること。持久力、柔軟性、強さという3つを意識する。これにより、第1の習慣「主体的である」も継続しやすい。

次に、精神的側面で刃を研ぐというのは、自らの価値観を深く見つめること。第2の習慣「終わりを思い描くことから始める」で行う、自分への反省や内省に関係している。読書や音楽鑑賞によって、自分の心と向き合うのだ。

次に、知的側面で刃を研ぐというのは、情報収集力や選択力を磨くこと。
第3の習慣「最優先事項を優先する」に基づき、自分の目的や価値観に合った番組や優れた本を読むようにしよう。自分の考えや経験を日記やSNSなどでアウトプットするのもよい。

最後に、社会・情緒的側面で刃を磨くとは、人間関係においても自分の価値観に忠実に振舞うこと。仕事やボランティアによる社会貢献活動をし、公的成功を目指す、第4〜6の習慣に必要となる。

7つの習慣が生み出す果実

コヴィーは、7つの習慣がもたらすものは、「4つの側面(肉体、精神、知性、社会・情緒)のリニューアル」だと言う。つまり、人間として刷新されるということだ。それは、自分自身が鍛えられ、自分の価値が高まれば、その分人の支えになる。人の支えになれば、また新たな自分の価値に気づく。
こうして、自分の活動自身がシナジーになっていくのだ。

第7の習慣は、第1〜6の習慣と分離して考えては意味が無い。自分磨きをしている人が壁にぶつかるのは、第1〜6の習慣が身についていないから。
第1〜6の習慣を心がけ、第7の習慣を継続する。そうすることで、上へ向かう螺旋のように自分が高まる好循環が生まれる。そうして、7つの習慣により、あなたの人生は生まれ変わるのである。

以上、7つの習慣から学ぶ、7つの成功法則をご紹介した。情報が溢れ、テクニックばかりが蔓延する現代だからこそ、本質的な人格を磨くこと、これこそがこれからの現代においてより重要視され、成功するために不可欠な要素ではないかと考える。