原価3万円のiPhoneが10万円で売れる理由


先日発表されたiPhone6sの製造コストが判明した。
どうして製造コストの低いiPhoneがこれだけの高価格で売れるのだろうか。

iPhone6sの製造コストが判明

・半導体部位:127ドル(約15,240円)
・通信部位:36ドル(約4,320円)
・A9プロセッサ:25ドル(約3,000円)
・Touch ID:22ドル(約2,640円)
・内蔵ストレージ:20ドル(約2,400円)
・カメラ/ディスプレイ/バッテリー:73ドル(約8,760円)
・ボディ:33ドル(約3,960円)

出典 http://iphone-mania.jp/

大手証券会社メリルリンチの算出によると、Appleが発表を発売したiPhone6sの容量64GBの価格が9万8,800円に対し、原価は2万8,100円ほどになることが分かっている。
製造原価=価格でないことはもちろん明らかではあるが、これだけ製造原価が低いというのは予想されていなかったのではないだろうか。例によって賛否両論が巻き起こり、そのAppleの販売戦略には舌を巻く。

価格を高く維持する経営戦略

理想の経営とは競争しないこと

理想の経営が価格競争を行わなくて済む、オンリーワンのサービス・プロダクトの展開であることについては前回記事で触れた通りであるが、Appleはまさにこれを実践している。実はiPhoneは他のスマートフォンと比べて価格が高い。さらにMacbookなどのパソコンについても通常のものよりも高い価格となっている。それでもこれだけ売れている背景には、”Apple製品が他の商品とは簡単に比較できない”ということが挙げられる。

創業者スティーブ・ジョブズへの異常なほどの憧れやApple製品の持つブランド価値というのがその要因である。もちろんスマートフォンはiPhone以外にもたくさん存在するのだが、iPhoneの持つ性能はAndroidなどのスマートフォンとは大きく異なることからそうしたブランド価値が生まれている。

圧倒的なAppleの人気

もちろんこれだけの価格を維持できる要因はApple製品の人気にあるが、製造コストについては実はAppleはスマートフォンについてはiPhoneのみを製造していることが大きい。
Android(厳密にはAndroidのスマートフォン)とiPhoneの販売数はほとんど同じなのではあるが、Androidが多数のスマートフォンを販売しているのに対してiPhoneはたった一つである。この違いが製造原価において大きく寄与している。

iPhone1本を販売していることでAppleは製造コストを非常に抑えることができる。
さらに日本では3大キャリア(docomo、AU、softbank)はiPhoneの高い販売ノルマがあり、そのせいで実質価格を相当に抑えて販売をしている。結果としてさらに消費者はiPhoneを購入することができる。販売において3大キャリアが価格競争を行い、Appleは価格競争をしなくて済む。
結果として実はAppleはスマートフォン市場の利益の92%を占めている。圧倒的な利益を生み出しているのである。

価格に原価は関係ない

原価主義と非原価主義

上記記事で紹介したように価格決定には原価主義と非原価主義があり、基本的には市場の需要と供給によって決まる非原価主義が望ましいとされている。iPhoneはそうしたように、非原価主義で市場の高い評価に応じて高い価格を維持している。
原価に着目すれば、製造コストが最も低いiPhoneがおおよそ最も高い価格を提示しており、Androidはその逆であるように原価とは全く別の価格設定がなされている。

Appleはその商品へのこだわりからファンに高く評価されており人気も高い。その結果オンリーワンであり高い価格でも受け入れられているのだが、それこそが経営戦略として最高の形であるのかもしれない。