大手出版社ケーイーの倒産が晒した業界の闇


大手出版社ケーイーの倒産。
この事件が世に浮き上がったことで業界自体のいい加減さが白日のもとに晒された。

大手出版社ケーイーの倒産

http://kigyo-ka.com/00270/

先日、本誌でも紹介したとおり、映画雑誌『SCREEN』などを手がける大手出版社ケーイーが破産を申請、倒産となった。出版社は現在冬の時代を迎えており、不況であることは間違いないが今後もこのような倒産が相次ぐことは想像に難くない。非常に厳しい状況が続くことは間違いないだろう。

破産のケーイーがもたらす被害

(株)ケーイー(旧:(株)近代映画社)(TSR企業コード:290039940、千代田区神田小川町2-12-14、設立昭和25年2月4日、資本金1500万円、小杉修造社長)は10月2日、東京地裁に破産を申請し同日、開始決定を受けた。破産管財人には小林和則弁護士(内幸町法律事務所、千代田区内幸町2-2-2、電話03-6205-7697)が選任された。
 負債総額は約9億5000万円(うち金融債権約2億7000万円、一般債権約6億8000万円)。

出典 http://newsbiz.yahoo.co.jp/

1つ上記のケーイーの破産に関する記述に注目すべき点がある。それは、『うち金融債権約2億7000万円、一般債権約6億8000万円』
という部分である。金融債権はその文字通り、銀行からの借り入れや債券などの借金に当たる。一般債権というものは何に当たるかと言うと、給料、家賃、買掛金などにあたる。

このケーイーの場合においては、ライターへの原稿料、社員への給料、家賃や印刷会社への作業料などにあたるだろう。これ自体は自然と発生する債権ではあるが、問題なのはその額である。金融債権(主に借り入れ)よりも、一般債権の方が圧倒的に大きい。借り入れよりも払わなければならない家賃や給料などの方が大きいということはその額が相当に溜まっているということであろう。1ヶ月スパンでの債権でこれは発生し得ない。数ヶ月、はたまた1年に及ぶ払い渋りがあったものと想像ができる。

ケーイーの債権者はどうなってしまうのか

懸念される点は、上記のケーイーの債権者はどうなってしまうのかということである。不動産会社ならば家賃の滞納は慣れっこであろう。ダメージがないということはありえないがそれなりに対処することができる。しかしながら、社員、ライター、印刷会社はそうはいかないだろう。本来支払われるべきお金が支払われないという点については非常に大きな被害が及ぶことだろう。一会社員、一ライターが給料が入ってこないという状態は想定しえるものではない。

そして、ケーイーの雑誌は別組織に移すことで存続するという。権利関係についてどういった処理をするかについては定かではないが、雑誌を存続させるためにはライターや社員の力が必要不可欠である。その人員はどうやって用意するのであろうか。今までの人員をそのまま使うのだろうか。だとしたら未払いの給料はチャラになるが、これからまた書いてもらうように依頼することになる。とんでもない自体であることが分かるだろう。
それに、関わる印刷会社は新しいところに依頼するとしても受けてくれるのだろうか。そういった経緯のある雑誌が、新しい組織になるからお願いしますといってもそれは信用ができないだろう。

ケーイーが露呈した出版業界のいい加減さ

聞くところによるとケーイーはさまザアナ支払いの未払いで有名な会社であるという。もちろん、倒産を想定していたからそうなったのではなく、キャッシュフローの流れが悪かったり、そういった点についてずさんであったのだろう。出版業界にはよくある話と言えばそれまでではあるが、『好きが高じて仕事になった』パターンの業界というのはこういったことが多く起こる。『好きでやっているのだからそのくらい我慢するだろう』というようないい加減なスタイルなのである。

今回の件の異常さは何度も言うようにその一般債権のあまりの割合の大きさだ。借りたお金が返せなくて倒産しているのではなく、払うべきお金が溜まって倒産している。雑誌自体を別の組織に移すとあって一歩間違えば計画倒産ともとられかねないケースではないだろうか。こうした出版業界が廃れていくのは自然なことなのかもしれない。