不動産業界の革命を感じさせるサービスが登場した。
その名は『おうちダイレクト』。ソニーとヤフーの提携で生まれたC2Cの不動産取引プラットフォームだ。この革新的サービスの中身とその将来を探る。
『おうちダイレクト』がサービスを開始
ヤフーとソニー不動産は16日、共同で提供する不動産売買プラットフォーム「おうちダイレクト」において、物件売り出し(掲載)機能と購入者向け機能を公開した。これにより本格的なサービスが開始された。すでに8万超のマンション情報が公開されている。
出典 http://www.rbbtoday.com/
ソニーとヤフーは今年7月に資本・業務提携を行い、『Yahoo!不動産』の持つ情報力とソニー不動産の売買仲介などの総合不動産サービス間での提携を実現した。2015年11月16日より、東京都心6区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、品川区、江東区)のマンションオーナーは『おうちダイレクト』にオーナー登録をすることで所有マンションを売り出すことが可能となった。価格は自由に設定することができる。
不動産業界に革命を起こすC2Cサービス
通常、自宅マンションを売却する際には、不動産仲介業者を通じて買い手を探す。その後、買い手が見つかり契約が成立すると、売り手と買い手の双方が仲介手数料を支払うことになる。だが新サービスでは、買い手側は従来通り手数料を支払うが、売り手側は無料だ。その仕組みはこうだ(下図参照)。
出典 http://diamond.jp/
事業者の手を必要とせずにweb上で消費者同士が売買を行うC2Cは古くはヤフーオークションから始まり、今ではフリルやメルカリなどのフリマアプリが大きく成長、世界中で注目を浴びるAirbnbもホストとゲストを結ぶC2Cのサービスである。他にもUBERなどC2Cサービスは世の中に完全に定着しており、例を挙げればキリがない。
ところが、不動産においては長らくC2Cのサービスがなかったのはもちろん、消費者同士でのフリーマケットのような形での売買も行われてはいない。その要因として大きいのは不動産という商品の金額の大きさにあるだろう。安いものでも1000万程度、高いものでは数億円という規模になる不動産の売買というものは知識がない状態で進めるのは恐ろしいものであるから、通常必ず仲介業者が介在して売買を行う。そしてその手数料は通常買い手と売り手でおおよそ3%ずつを支払い、合計6%が手数料として不動産業者に渡る(買い手と売り手とそれぞれに仲介業者が別々につく場合もある)。3000万円の物件の場合は合計180万円を支払い、その対価として素人の買い手と売り手は安心して取引をすることができる。
そんなお約束を破ったのが今回の『おうちダイレクト』である。マンションオーナーは『おうちダイレクト』のシステムが弾き出す参考価格を元に金額を決めることができる。購入者は『買いたいリクエスト』機能で購入検討中の旨を示すことが出来る。また、条件から売り出し中の物件がなくても推定価格がシステムより表示され『買いたいリクエスト』を出すことが出来、実際に物件が売り出されると通知が届くようになっている。
C2Cの不動産サービスは定着するのか
はたしてこの不動産サービスは業界に革命を起こすのだろうか。今後C2Cでの売買が広まれば不動産業界には大きな衝撃になるに違いないし、不動産の売買は手数料が下がることによって盛んになるのかもしれない。そういった意味で大きな『不動産が気軽に売買される』可能性を持っていると言えるだろう(もっとも、不動産には取得税などの負担もあるし、金額の大きな慎重にならざるをえない買い物であることから服を売り買いする感覚での売買をできるかといったらそれは難しいだろうが)。
とはいえ、このサービスにかかる障壁は決して低くはない。何よりもその大きな金額が心理的な障壁となってのしかかるだろう。C2Cで手数料を安く売買をするよりも不動産業者を使って安く取引しようという考えが働くのは少し納得のできる話である。それに、いち早く物件を買いたい、現金化したいユーザーにはC2Cというのは少し難しい話だ。当初は、不動産の売買に慣れたセミプロの不動産経営オーナーが利用することになるかもしれない。それでも、不動産取引がweb上で完結してしまえばそれは大きな革命である。