日本ではいまだにあまりなじみのないベンチャーキャピタルではあるが、
近年ベンチャー企業の上場も相次ぎ、その名は徐々に浸透してきた。
はたして日本のベンチャーキャピタルの現状と今後はどうなっていくのであろうか。
ベンチャー企業の躍進を支えるベンチャーキャピタル
起業家のイグジット戦略について解説したこの記事では、イグジット戦略はベンチャーキャピタルの存在なしでは語れないことをお伝えした。
このように、起業家がIPOにこぎつけるまでにはベンチャーキャピタルによる資金調達が大いに関係している。当然ながらベンチャー企業には圧倒的に資金が不足している。かと言って融資を受けられるほどに安定性や資産があるわけでもないから大きなリターンを期待して出資を行うベンチャーキャピタルの存在が必要になってくるわけである。
ベンチャーキャピタルは主に企業が黒字転換する前の段階で出資を行う。最近では、創業時からベンチャーキャピタルが付くパターンも多い。資金調達という形でベンチャーキャピタルから出資を受けるよりも、そもそもベンチャーキャピタルの出資ありきで創業をするわけである。
ベンチャーキャピタルの資金力
実は、日本のベンチャーキャピタルは本場アメリカと比べて大きく劣っている。
アメリカ国内でのベンチャーキャピタルの投資額は年間2兆5000億円と言われている。それに対して日本のベンチャーキャピタルは1000億円ほどである。ということは、日本はアメリカの25分の1の額しかベンチャーキャピタルが出資していないということになる。
ただ、『大成長間違いなし!スタートアップ資金調達額トップ10』でもその金額はご存知の通り、何十億円という規模が珍しくなくなってきている。サービスのリリース前に700億円を調達する企業も存在するアメリカ(『リリース前に30億円以上を調達したスタートアップトップ11』参照)にはそれでも当然及ばないが、大きく成長しているのではないだろうか。
ベンチャーキャピタルの収益源は当然ながら、IPO(上場)もしくはバイアウト(売却)による株式の売却である。どれだけ企業が業績を挙げてもベンチャーキャピタルは売却益が出ない限りは投資家に配当を行えないし、現金化をできない。非上場で株主配当を出す企業も稀であろう。
そして、近年は5年以内に上場を果たしたグノシーなど短期間で結果を出す企業が増えているのも事実である。そのおかげでベンチャーキャピタルは短期的に結果を出しやすくなり、投資家も積極的に投資を行うという好循環が起こっている。
今後も日本のベンチャーキャピタルは伸びを予想させる。
ベンチャーキャピタルの弊害
しかしながら、ベンチャーキャピタルが全てにおいてプラスではないことは事実としてある。最年少上場を果たしたリブセンス村上氏がベンチャーキャピタルからの出資の話を受けるも、『ベンチャーキャピタルが入ってしまったら自分の思うように会社を経営できなくなる』という理由で断ったのは有名な話である。
ベンチャーキャピタルも利益を最大化したいという思惑があるわけであるからそれが会社自体の利益と一致しないのはある程度当然の話であろう。
その最たる例がgumiである。もちろんgumiも様々な捉え方や、証券会社やCFOの思惑があることは事実ではあるが、上場ゴールという形で得をするのは証券会社、創業者(すぐに株式を売却した場合のみ)、そしてベンチャーキャピタルである。
ベンチャーキャピタルなどからしたらどうせIPO時に株式を売却するのなら、企業の時価総額を限界まで釣り上げてからの方がいいのは明白である。そのため、悲しいかな上場ゴールは引き起こされる。
もちろんそういった弊害的な部分もあるが、今の日本のベンチャー企業や起業家にとってベンチャーキャピタルは大いに成功の確率を上げてくれる存在であることだろう。これからも日本のベンチャーキャピタル市場には伸びを期待したい。