吉野家が出したある商品は誰からも求められていなかった。
内部でも反対の声が継ぐ中出したその商品は大ヒットを記録した。はたしてどんなわけがあるのだろうか。
誰も求めていない『ベジ丼』
吉野家が今年5月から販売した『ベジ丼』。
牛丼チェーン店の商品ながら肉はたったの一切れも入っておらずどこを見渡しても野菜ばかりである。吉野家では完全に異色の商品だと言っていいだろう。
しかしながらこのベジ丼、異例のヒットを記録する。吉野家の顧客は間違いなく求めていないと思われるベジ丼がヒットしたのにはどんなわけがあったのだろうか。
吉野家、河村社長の強行販売
通常、吉野家にいく顧客が野菜を求めているなどとは思わない。野菜を食べたい時には別のお店に行くし、わざわざ吉野家に足を踏み入れることは無いだろう。そういった発想をするのは至って自然なことに思われるが、吉野家の河村社長の考え方は違った。
「僕が食べたかったから」
そんないたってシンプルな理由からベジ丼の販売を推し進めたという。当然ながら反対の声がほとんど、見る限りでは特に大きな勝算があったわけではなかったようだ。
しかし、それを推し進めた理由は自分自身がそれを食べたいという確実に存在しうるニーズに対してだろう。結果としてヒットを記録したベジ丼に間違いはなかったことが分かる。
野菜を食べたくても場所がない
消費者の声を代弁するとこうなるのだろうか、野菜を食べたいと思った20~40代の男性がいたとしてもそれができる場所というのはそこまで多くない。特に1人でさっとご飯を食べれる場所ともなるとラーメン、牛丼など種類はそう多くないことが分かる。他のだいたいは1人では入りにくかったりするし出てくるまで時間がかかるようでは仕事に支障が出る。
となると、その場で野菜を食べるというのは困難であるわけだ。だからこそ、ベジ丼はそうしたときにふと野菜をとれるメニューとして唯一無二の存在である。男性が野菜をそこまで好んで食べるとも思えないから小さいニーズではあるがそれは確実にあることは間違いない。
企業は、『牛丼を食べる人は肉を食べたくて来ている』と思っていたのかもしれないが、『さっと1人でご飯を済ませたくて来ている』という側面もあるわけだ。だからこそ、必ず肉が食べたいわけでもない。だからカレーがメニューに入るとヒットするし、必ずしも肉が全てではない。
そうしたニーズをガッツリ掴んだのがそのベジ丼だ。
消費者は必ずそのジャンルを求めていない
同じような事例が回転寿司にラーメンを導入した事例だ。
くら寿司他大手回転寿司チェーン店には今ではラーメンや麺類がメニューに存在する。さらにはコーヒーも飲めるようになっている。通常、寿司を食べに来ている消費者がまさかラーメンに手を出すとは思わないだろう。それに、ラーメンの匂いがしてしまうと肝心の寿司にも影響が出る可能性がある。
しかしながら、結果としてラーメンは大ヒットを記録した。必ずしも消費者は寿司を食べたくて来ているわけではないということが分かったいい例である。
これはどういうことかというと、回転寿司にはファミリー層が多く訪れる。ともなると、全員が寿司を食べたいというわけでもないということである。特にこのラーメンについては一家のお父さんが寿司を食べたいわけではなく、ラーメンに目がいくというケースが非常に多かった。そういった回転寿司に来ている中にも他のものを求めているニーズをしっかりと掴んだいい例である。
牛丼なら牛丼、回転寿司なら寿司というような短絡的な発想では消費者のニーズを掴むことはできない。これからの外食産業はより変化を遂げていくだろう。