Airbnb創業者が語った成功の秘訣


Airbnbがもはや世界的企業であることは言うまでもないだろう。
しかし、このサービスは従来の常識からするとありえないものであった。はたしていかに創業者は常識を塗り替えたのか。

Airbnbが覆した常識

7年でリクルートを超えたAirbnbはホテル界のamazonへ

Airbnbは世界でも有数のユニコーン企業である。その企業規模は日本で言えばリクルートや楽天などの時価総額2兆円を超えるものであり、創業10年も経たずにそこまで成長したというのは大きな驚きであり、日本では過去にそこまでの事例は存在しない。世界で数えてもFacebook、シャオミ、UBERなど数える程度の企業の中に入るスピードである。

そのAirbnbが成し遂げた功績は『知らない人の家に泊まる』という今までにはない常識を作ったことだ。従来の発想では、そんな危険なことを…と考えることだろう。しかし、Airbnbはそれを覆し、知らない人のしかも海外の家に泊まるという風土を作った。はたしてAirbnbはなぜそのようなことができるのだろうか。

鳴かず飛ばずだったAirbnb

Airbnbは創業後1000日間はサービスが鳴かず飛ばずであった。ブライアン·チェスキー氏とジョー・ゲビア氏の2人によって立ち上げられたAirbnbは共同創業者の2人からすると自信満々のアイディアであったというが、サービスのリリース直後、Airbnbに登録したユーザーはわずか3人だけだった。個人の部屋を貸し借りして泊まるという新たな発想に対して多くの人は眉をひそめた。ベンチャーキャピタルのほとんどもこのサービスにはそっぽを向いたという。
Airbnbはアメリカの全土から一都市に人が集まるようなイベントの際に需要があると考えられていた。こうしたイベントでは短期間に一都市に人が集まるため、ホテルのキャパが足りなくなっていた。チェスキー氏は2008年のオバマ大統領のキャンペーンに大々的にカンファレンスのためのAirbnbとしてアメリカのある地方都市で開催されアピールした。キャンペーン会場のキャパが8万人にしてその都市のホテルのキャパは2万しかなかった。ブロガーを中心にAirbnbの存在をアピールすることで、すぐにメディアもAirBnBの存在を取り上げるようになり話題となり、ようやく800人が部屋を登録したという。

Airbnbの転機となったのはこの大統領選であるが、Airbnbが成功を収めたのは別のプロダクトだ。この頃、ジョークとしてオバマ大統領をキャラクターにあしらったシリアルをデザインした。Airbnbは‟エアベッド&ブレックファスト”の略称であり、ホストは朝食を出さなくてはいけない。このシリアルをホストに配った。大統領選のオバマ対マケインに合わせて、両氏のイラストをあしらったパッケージのシリアルを作り、テーマ曲まで用意した。これが反響を呼びCNNやMSNBCまでもがこのシリアルのことを取り上げたという。
意外なことにシリアルのヒットがAirbnbの最初の成功だ。

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出典 http://pando.com/

常識を変えたデザイン

Airbnbの創業者2人は実はシリコンバレーの創業者の大部分を占めるハーバードやスタンフォードのエンジニアではない。2人は芸大卒である。また、偶然か必然か彼らの生んだデザインが『知らない人の家に泊まるなんて…』という常識を変えた。そのカギはホストとゲストの信頼性を担保するデザインにある。

Airbnbはゲストがホストの家に泊まるわけではあるが、ゲストからしたらホストの家に泊まることによって身に危険が伴う可能性もある。ホストからすればゲストに部屋を破壊されるかもしれないし家財を盗まれるかもしれない。お互いの信頼性がある状況でなくてはいけない。
それを解決したのが評価システムのデザインだ。ホストの部屋の写真を明るいものにすることや、いいねに相当するボタンをハートマークにしたところ宿泊数が驚異的に増えたほか単純な意味でのデザインも大きくAirbnbの成長に寄与していることは有名な話であるが、評価システムもデザインもまた見逃せない。創業者は評価システムをデザインするにあたり、人間の行動の原則や研究結果なども参考にした。自分と似た人を信用する傾向があったり、他社からの推薦を大きく評価することが分かっているという。

こういったデザインで成果を挙げたのはAirbnbだけではなく、UBERなどもまた同様の相互評価を行っており、それによってタクシー市場を奪うほどに信頼が担保されてきている。UBERなどは評価の低いユーザーのもとには配車がなかなかされないなど今後はユーザーや消費者を評価するような時代がくるのではないだろうか。