20年もすれば世界の中心はアメリカでないかもしれない


トランプ大統領によりアメリカが変わっていっています。
TPP不参加や移民受け入れの厳密化など、アメリカは鎖国の方向へいっていると言えるでしょう。このままいくとアメリカは世界の中心ではなくなるのでしょうか。

トランプ大統領は続々と公約を実現へ

『なんだかんだトランプも大統領になったら現実的な路線になるだろう』
そんな希望的観測がいとも簡単に裏切られています。TPPへの加盟の破棄に始まり、メキシコとの国境への壁の設置、移民受け入れの規制など公約をここまで徹底的に実現しにかかるとは予想外だったでしょう。

少なくともアメリカがTPPに参加することがないことは明白になりました。アメリカは各国と1対1で関税など貿易に関する取り決めをしていくことになります。現在、日本とアメリカの間での自動車に関する関税はアメリカ→日本が0%、日本→アメリカが2.5%です。この関税が大きくなればトヨタをはじめとする日本の自動車産業には大きな打撃が避けられません。ここだけを切り取ればトランプ大統領は日本にとって最悪の大統領です。

移民受け入れが厳しく

日本への影響が大きいのはTPP、そして沖縄の米軍基地でしょうか。輸出業によって収益を立てている日本にとってはアメリカのTPP不参加は経済的な影響が非常に大きくなりそうです。

そして、アメリカという国の視点で見れば、移民の受け入れ条件が変わってくることは長期的に見て大きな影響をもたらしそうです。イラン、イラク、スーダン、ソマリア、リビア、シリア、イエメンの7カ国の難民や移民のアメリカへの入国が一時停止されることになり、AppleやGoogleがこれに対して反応しています。
AppleもGoogleも移民の子孫が作った企業です。特に、故スティーブ・ジョブズに至ってはシリア移民の父の元に生まれた移民2世です。

そもそも、アメリカという国がほぼ移民から構成されている国ですから、優秀な人材がアメリカに入ってこれないとなればその代償は大きいでしょう。

今の世界の中心は間違いなくアメリカ

順位 企業名
1 Apple アメリカ
2 Alphabet アメリカ
3 Microsoft アメリカ
4 バークシャー・ハサウェイ アメリカ
5 エクソン・モービル アメリカ
6 Amazon アメリカ
7 Facebook アメリカ
8 ジョンソン&ジョンソン アメリカ
9 JPモルガン・チェース アメリカ
10 ジェネラル・エレエクトリック アメリカ

今、世界中の企業で時価総額の大きい順から1位~10位まで並べると以上のようになります。アメリカの順位ではなく、世界での順位です。アメリカ以外が出てくるのは13位のテンセントからで、1位~12位までアメリカ企業が独占しています。世界中の総生産の24%ほどがアメリカです。各国のGDPを足し合わせた24%がアメリカによって占められているということです。

言うまでもなく、現在はアメリカが世界を支配しています。アメリカが世界の中心であることは間違いないでしょう。

単純な論理で言えば貿易を増やす方が経済的

現在アメリカが世界の中心であるわけですが、トランプによってこれは変わるかもしれません。まず大きいのがTPPの不加盟です。TPPに加盟しないということは、アメリカは他国に比べて輸入する際の関税を多く設定することが想像されます。これは、トランプ大統領がアメリカ国民の雇用を守ることを第一にというようなことを言っていることからも明らかです。

単純に経済学の論理で考えれば、比較優位が働くため輸出入を増やせば増やすほどに経済的には豊かになります(運搬のコストなどは当然加味して考える必要があります)。それでもなぜ関税はゼロにならないかというと、例えばある種類の資源や製品を1ヶ国のみに頼ると不当に値上げをされるなどの危険性があるからです。みんなで仲良くしているうちはガンガン輸出・輸入をして国ごとに役割分担をしてしまった方が断然オトクなわけです。

貿易を嫌う人々がトランプに票を投じた

それでもなぜトランプが関税をかけて貿易をしづらくしようとしているかというと、他国の製品が入ってくることによって自国、つまりアメリカの産業や労働者がダメージを受けることになるからです。とはいえ、貿易赤字になればなるほどその分の外貨を稼がなくてはならないので、他国に対して何らかの産業で価値を提供する必要があるのでそこでまた雇用は生まれるのですが、それはマクロな話であって、仕事を失う当事者からすればそれで済む話ではありません。
ずっとお米を作ってきた農家が他国のお米が入ってきたからって明日からアプリを作りましょうとはいかないわけです。

トータルで見ればうまいこと回ったとしても、その瞬間瞬間では仕事を失う人がいるということは事実なわけです。そういう、簡単に仕事を失いかねない弱い立場にいる(ビジネススキルが低い)人々がトランプに票を投じたわけです。

アメリカは経済的に取り残されていく

アメリカ国内のレガシーな産業の労働者たちを守るためにかけた関税によってアメリカ経済は徐々に停滞していきます。アメリカが高い関税をかけて他国との経済的な交流を避けるのならば、別の国を中心にして世界の経済を形成していこう、そうなるかもしれません。
徐々にアメリカは経済的に取り残されていくことになるということです。

また、移民の受け入れが厳しくなることによって世界各国の優主な頭脳を持った人材がアメリカに入れないことになるかもしれません。事実、AppleやGoogleはそうした事態を危惧してすでに動き始めているわけです。
世界的なIT企業の数々が活動の拠点を他国に移すかもしれません。シンガポールなどにアジアの優秀な人材が集まる可能性は十分にあります。(ただ、シンガポールのビザの取得条件はそう緩くはなく、現時点ではあまり考えられにくい状況です。)

次の世界の中心はどこになるのか

このままトランプがアメリカを鎖国していくことになれば、世界の中心は中国に移るでしょう。GDPで言えば中国が世界一になることはおおよそ分かり切っているわけですから、アメリカが競争力を失っていくにつれて中心は中国になるでしょう。

とはいえ、中国も中国でグレートファイアウォールという制度によってインターネットの接続が制限されており、GoogleやFacebookなどの使用が制限されています。鎖国の度合いはひょっとするとトランプの作ろうとしているアメリカより上かもしれません。

アメリカも酷いけど他にめぼしい候補がない、という状況が今の世界的な状況ということが言えます。日本は候補にすら上がりません。この部分において世界的なIT企業は頭を悩ませることになるでしょう。