ネットフリックスはテレビを潰すのか


テレビの対抗馬として大本命に挙げられるネットフリックス。
動画配信サービスの巨人はテレビを潰す存在となるのだろうか。

ネットVSテレビの構図

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テレビの敵はネットであり、それはネットフリックスやHuluという有料動画配信サービスよりもスマホで見るSNSやYoutube、ツイキャスなどの動画配信サービスであるということについては周知の通りではあるが、当然ながらテレビに対比するものはネットである。

元来であればテレビの敵は公園で遊ぶことだったり、海に行くこと、ボウリングをすることなどのレジャーであった。それは2000年くらいまでの話ではあるのだが、いかに家で楽しむ娯楽がテレビしかないかということを表している。ネットのない時代において、家庭内の娯楽は完全にテレビの独壇場になる。だからこそテレビは栄えたし、さらには莫大な制作費を投じてありえないレベルのテレビ番組を作っていたわけだ。(クイズ番組なのにハワイで収録をしたり、ヒッチハイクの旅で殺されかけたりそれこそ今ではありえないぶっ飛んでいて楽しい番組があった)
それは、テレビが独壇場であり高い視聴率と莫大な制作費が伴うということが前提の話であり、そもそも情報が増えるにつれて消費者は選択肢が増えるからテレビは絶対になる。そして広告というものの効果も減ってくる。それぞれが負の相乗効果によりテレビは廃れてくる。ただでさえ他の娯楽が多い時代に制作費も半減するのだから再建どころか凋落を食い止めるだけでも一苦労であろう。

フジテレビは本当に凋落している

かつて視聴率三冠をとり(午前6時から午前0時までの「全日」、午後7時から10時までの「ゴールデン」、午後7時から11時までの「プライム」の3つ)、No.1の座を欲しいがままにしてきたフジテレビは現在無冠に甘んじている。
フジテレビの凋落を語る上で避けて通れないのが地デジ化によるチャンネルの移動である。(1,3,4,6,8,10,12)から(1,2,4,5,6,7,8)に移ったことでフジテレビの番組のチャンネルの位置は真ん中から端に移った。そのことでフジテレビの視聴率が落ちたというのは1つの要素として考えられるだろう。
事実、7年連続で三冠を獲得した2010年までから、2011年7月に地デジ化が始まったのをきっかけに2011年は一冠に終わっている。そしてその後3位が定位置になりつつある。

しかしながら、チャンネルの位置でフジテレビは視聴率をここまで落としたという仮説を否定するデータが一つある。フジテレビの放送は全国区ではもちろん8チャンネルであるが中部地区では東海テレビがその枠を担当している。フジテレビの視聴率三冠の頃、もちろん東海テレビでもその視聴率は高いものがあったわけではあるが、その東海テレビは1チャンネルなのである。チャンネルの位置で視聴率がそれほどまでに推移するのならば東海テレビの視聴率に説明がつかない。

フジテレビの凋落はテレビの終わりを告げている?

実のところ、フジテレビの凋落にはシンプルな1つの要素が絡んでいる。それはサブカルチャーの台頭だ。ニコニコ動画などを始めとした”オタク”と呼ばれる層の存在が徐々に受け入れられるようになっている。そしてそれこそが実はフジテレビの凋落に大きく関与している。

一度話を戻してフジテレビの特色について触れよう。フジテレビの目玉はなんと言っても月9と呼ばれるドラマ枠である。ドラマがフジテレビを支えたと言っても過言ではないのではないだろうか。東京ラブストーリー、ロングバケーションなど時代を代表するドラマが名を連ねる。
そのドラマ自体も現在では低迷している。それはなぜかと言うとドラマ自体へのあこがれが薄れたからである。フジテレビを一言で表すと、”リア充感”である。全体を通して言えるのはクラスの人気者や美男美女がワイワイやっていてそれを『いいなー、かっこいいな』という風に眺めるような形でフジテレビの番組は成り立っている。それの最たるものがまさに月9のドラマである。

しかしながら、現在サブカルチャーが台頭している。それはどういうことかと言うと、”リア充”というものに対する興味の薄れを表している。サブカルチャーが受け入れられることによって”リア充”である必要はないんだという方向に世間がシフトしたのである。そうなってしまうとどれだけ”リア充感”を出して煌びやかにしようとも興味を持つ人間は少なくなる。クラスの人気者に憧れを抱いていた”リア充ではない”人々はサブカルチャーや他の文化に興味を持ち始める。それ自体が受け入れられるようになったことこそがそうしたフジテレビっぽさから人々が離れる原因になるのである。

7月25日から26日に放送されたフジテレビの27時間テレビの不調もそれを大いに証明する結果となっている。『(フジテレビ含め)テレビがピンチだから本気でテレビの底力を見せよう』というような名目の番組ではあったが、これは以前ならば通用した方法であろう。クラスの人気者が『みんなで頑張ろうぜ』と声を上げればキョロ充もオタクもついてくるのが今までであった。
ただ、今の時代はそうではない。クラスの人気者についていかなくてもサブカルチャーという自分たちが輝ける文化があり、そちらに大衆の目は向いているのである。
フジテレビのこの企画は、”テレビがピンチだからみんなで盛り上げてあの頃を取り戻そう”という期待を抱いていたのだろが、”テレビがピンチだろうが俺らは知らん興味ない”という冷たい反応を食らう結果になった。
求められていないリア充感から抜けられないフジテレビはこれからも空回りし続けるだろう。

ネットフリックスが満を持して日本上陸

前置きが長くなってしまったが、ここで本題であるネットフリックスの日本上陸について触れよう。世界中で動画を配信し、世界50カ国に6200万人以上の会員を持つ有料動画配信の世界最大手であるネットフリックスは2015年9月2日に日本で動画の配信を始める。常々テレビの対抗馬大本命として挙げられていたネットフリックスはテレビ製品に『ネットフリックスボタン』を搭載するなど、非常に大きな力を持っている。日本でもソニーや東芝の製品にボタンが搭載される。

ネットフリックスでは、オリジナルコンテンツの配信など力を入れ、そのドラマをはじめとしたコンテンツはテレビ局制作のものとひけをとらないレベルにある。懸念されているのは有料の動画配信サービスであるため、無料が当たり前の日本で馴染むかということである。そういった意味ではおそらくすぐにテレビの地位を奪うことはなかなか難しいのではないだろうか、そもそも被っていないのではないだろうか、というのが一般的な意見である。

ネットフリックスはテレビを潰すのか

はたしてネットフリックスが日本のテレビにとどめを指すのかということであるが、結論から言うとそれはノーである。むしろネットフリックスはテレビ局にとっては追い風となるだろう。

まず、ネットフリックスが有料のモデルであることから、テレビと見る側の意識が違う点に注意である。なんとなしにチャンネルを合わせて見るテレビは何か具体的な番組などがある上で見るネットフリックスはどちらかというとレンタルDVDなどとバッティングする部分が大きい。最も焦っているのはTSUTAYAなどになるであろう。

そして、現在テレビのカギを握っているのは広告モデルではなく有料コンテンツである。『あれ?テレビは無料じゃん』と思われた方もいるだろう。有料コンテンツとは、DVDやグッズのことである。近年、テレビ局の大きな収益源となっているのはアメトーークをはじめとした人気番組のDVD、ラブライブなどをはじめとしたアニメのグッズの販売などである。広告自体を視聴者が敬遠している現状で結果を残してきているのがこうした有料コンテンツである。

実は、ネットフリックスはフジテレビのコンテンツを配信することが決まっている。『テラスハウス』の独占配信をすでに発表している。また、日本テレビは動画配信サービスHuluと提携し、共同制作番組『THE LAST COP』を放送した。有料コンテンツのうちの一部としてDVDというアナログで物質的ものではなく、ボタン一つで視聴できるネットフリックスは大きなシナジーを示すことだろう。

ネットフリックスとテレビ局がうまく連携をとることができればアナログであったテレビ局に新しい風を吹き込むことになるし間違いないなく復活の兆しとなるだろう。
もちろん、テレビ局が復活するだろうというわけではないがネットフリックスの上陸で新たなテレビの形が見られることだろう。