『YouTuber』はビジネスとして成り立つのか


9月17日、18日に開かれた東京ゲームショー。
ゲームの祭典であるそのイベントの主役はまさしく『YouTuber』であった。

活躍の場を広げる『YouTuber』

YouTuberの先駆けでもあり、CMやテレビ、映画にも出演している「ヒカキン」、渋谷駅や渋谷109の壁面に多くの写真が貼り付けられ最近の動画再生回数が日本一の「はじめしゃちょー」、実業家も兼ね上場が決まったAppBank株式会社の取締役の「マックスむらい」など彼らの活躍により、YouTuberという職業が脚光を浴びている。

YouTubeと言えば、動画共有サイトであるのだが、
その中でYouTuberは基本的に顔を出してYouTube上でのタレントのような立ち位置で自身の撮った動画を投稿する。
少なくとも日本では2006年にヒカキンがヒューマンビートボックスの動画を投稿したのが走りと言われており、世界では30ヵ国以上に100万人以上のYouTuberが存在、年収1000万円以上のYouTuberも数千人いるようだ。

日本ではヒカキンの露出をきっかけとして、『好きなことで生きていく』のCMなどの露出で完全にYouTuberというものが広く認知されるようになった。アメリカではMCN(マルチチャンネルネットワーク)と呼ばれるYouTuberの芸能事務所」が2013年から開設されており、日本でも『uuum』を皮切りにそういった事務所が開設されている。
最近では、幼稚園児や小学生のYouTuberもいるようでその市場は拡大の一途をたどっていると言える。
今、注目を浴び続けている「YouTuber」に少し着目してみた。

寒い懐事情と逆に増えるYouTuber

ヒカキンやはじめしゃちょーなどのタレント並みの知名度を持つYouTuberともなると年商数億円と言われており、その収入形態もさまざまである。
ところが、一般的なYouTuberにとっては基本的に動画の再生数とある程度比例してYouTube側から報酬が支払われるため、おおよそ再生数を見ればそのYouTuberの懐事情というものは知れてしまう。月に何十本も動画をアップするにも関わらず月に1万円にも満たない金額しか稼げない人の方が圧倒的に多いのが現状であり、生活できるレベルで専業でやっている人間はほぼ存在しない。貯金を切り崩すか副業でYouTuberというパターンが多いようだ。さらに今まで1再生回数あたり0.1円と言われていた報酬がYouTube側のガイドラインの変更により今年の1月から報酬が激減しているとされ、1再生回数あたり0.025円~0.05円が現在の相場とされている。

多く見積もって1再生あたり0.05円だとしても20万円を稼ぐのには再生数計400万回が必要となり、毎日動画をアップするとしても毎回10万回の再生数が必要となるなどのかなりの人気が生活すしていくレベルのお金を稼ぐことだけでも求められていることがわかる。堀江貴文氏のYouTUbe上の番組がほぼ2万回だということを考えるとかなり大きな数字だ。YouTubeというプラットフォームが強い以上、YouTuber自身も下に見られるようだとこれからさらに報酬が下がる可能性もある。動画再生だけで食っていくためにはなかなかそう簡単ではない。

そんな事情がありながらもどこ吹く風でYouTuber自体の数は増え続けている。認知度が上がったことも要因のひとつであろうし、YouTuberのスクールはその後押しに一歩買っているのかもしれない。視聴者に若年層が多いこともあって今後も増え続けていくことは言うまでもない。そのYouTuberという職業への憧れと現実が乖離していることは間違いないだろうが、芸人ブームからお笑い芸人を志す人々、アイドルブームからアイドルを志す人々、それらがどれほど待遇が悪くても減らないことを考えると今後もYouTuberの数自体は増えるだろう。

『YouTuber』は産業となりうるか

今YouTuberの懐事情が寒いからといってはたして今後もそうかというとそれはないのではないだろうか。そもそも、日本のテレビ産業自体は衰退の一途をたどっている(『テレビはネットに飲み込まれるのか』参照)。テレビを見なくなった視聴者がいく先はインターネットということになる。今ではインターネットはまだ回線の状況などもあり、動画全盛期ではない。しかし、今後ネットの動画全盛期が訪れるだろう。

インターネットでしかも無料での市長ができるYouTubeではロングテールの部分が生き残りやすい。テレビはチャンネル数が限られているが、YouTUbeなら選択肢は無限大であるし、中堅や弱小のコンテンツでもある程度のトラフィックが発生することが素晴らしい点だ。現在ではYouTuberは基本的に自らが動画の企画から制作、出演までの全てをまかなっているがそのうちにはYOuTubeなどのインターネット動画共有サービス上のコンテンツにおけるプロデューサーや制作会社が出てくるのではないだろうか。それに一役買うのがYouTubeではなくて、HuluやNetflixamazonであるのかもしれないし、また違ったところが出てくるのかもしれない。テレビが電波が限られているがそれがないのがネットの利点だ、

ただのタレントもどきとしてのYouTuberではなく、それらが着実なビジネスとなったとき、テレビからインターネットへコンテンツは移行するかもしれない。