デアゴスティーニに詰まったマーケティング手法


デアゴスティーニには実は素晴らしいマーケティングが詰まっている。
その手法を5つに分けて紹介しよう。

行動経済学を生かすデアゴスティーニ

デアゴスティーニと言えば、毎週ないしは隔週で雑誌を買っていくと、模型やDVDコレクションが完成するというパートワーク形式の雑誌の出版社である。

ニッチな作品や、専門的な分野を扱うことも多く、それがまたコレクターにウケている。
そんなデアゴスティーニのマーケティングは7つの優れた行動経済学に基づいている。その5つの方法を紹介する。

1.希少性の原理

同じ商品でも、それが10個在庫のある商品なのか、残りたった1個の商品なのかによって消費者の感じ方が異なる。希少性のある商品であればあるほど人はその商品に対して魅力を感じやすくなっているのである。

デアゴスティーニは創刊号は書店などで多くの在庫があるものの、実は2号以降は号数を重ねる毎に発行冊数が減らしている。過去のデータから継続して購入する確率を算出しており、余分な在庫を作らないための方法でもあるが、それと同時に消費者はこのように数が少ないということを知ると、中古で出回らないかもしれないから今買わないと手に入らないと感じ欲しくなる。デアゴスティーニはそうした心理を引き起こしている。

2.イケア効果

人は自分で労力をかけて作ったものに対して、購入した完成品よりも高い評価を下す。これを『イケア効果』と呼び、手作りの料理は不思議と美味しく感じるのはこの効果によるものである。この名前はイケアの家具が自分で組み立てたことによりより良いものに感じるのことから付けられた。

デアゴスティーニの模型商品は、プラモデルのように自分で組み立てて作るという点でイケア効果を利用している。また、人間は同じものでも労力や時間をかけたものほど高く評価するようになっており、時間をかけて購入し作り上げる(ものによっては1年以上かかる)ことによってそれだけ満足度があるのかもしれない。

3.授かり効果(保有効果)

人は自分が一度所持・保有した物に対して高い価値をつけることがあり、これを『授かり効果(保有効果)』という。
人は商品やサービスを手にした時の嬉しさよりも失う時の悲しみの方が大きく(例えばコインを投げて表なら1万円がもらえ、裏なら1万円を支払わなければいけない場合人はそれを実行しない)、自分が持ったものを失いたくないがゆえにこの効果が生まれる。

デアゴスティーニの商品も、一度購入するとそれを手にしたことによって自分の持っている作品を過大評価するようになり、より愛おしくなるということが言えるだろう。

4.コンコルド効果

コンコルドとは、イギリスとフランスが開発した超音速旅客機であるが、開発段階ですでに赤字になってしまうことが発覚していた。赤字になるのならばもう開発をやめて撤退することが賢明なはず。ところが、開発へ巨額の資金を投じていることからそれができず商業的に大失敗で終わった。

デアゴスティーニは、一度購入してしまうとそれを完成させるまで購入し続けない限り、今まで買ったものが無駄になってしまう。コンコルド効果が働き、そこまで欲しくなくても最後まで継続して購入しようと考えるようになる可能性がある。

5.マグニチュード効果(マグニチュードエフェクト)

デアゴスティーニは全てを揃えると、完成までに数万~十数万の費用がかかる。しかし、人は小額の分割払いにすることによりその合計額の大きさを正確に捉えることができなくなる。
これは『マグニチュード効果(マグニチュードエフェクト)』と呼ばれる現象である。

総額が大きくても時間をかけて小額の分割払いをすることによって金額を安く感じて払いやすくなるのである。