四半期売上2億円の企業についた高すぎる1300億円


四半期でたった2億円の売り上げに対して、時価総額1300億円という評価がついた。
強気の経営姿勢で高い評価を得たJIG-SAWではあるがこれは市場としてどう捉えるべきだろうか。

驚異的な評価を得たJIG-SAW

JIG-SAWという企業をご存じだろうか。人工知能をベースにした企業であり、2015年4月に東証マザーズに上場した。
上場時の公募価格が2390円に対して、初値が8040円をつけたことでも知られている。(2016年7月14日現在6490円。)

人工知能といった近年注目される分野であることも相まって大きな評価が得られたようにも思えるが、従業員50人程度の企業に対して時価総額が最高1300億円ほど(株価は最高22460円)になるという非常に高い評価を受けている。Instagramが従業員13人ほどで800億円で買収されたケースなどもあるが、JIG-SAWの事業モデルはそういったものではない。かと言って何か特殊な特許を取っているとか、AlphaGoが囲碁で世界チャンピオンを破ったような功績があるわけでもない。

JIG-SAWが高い評価を得た理由

そのJIG-SAWがさらに有名になったのは、2016年12月期第1Qの決算が発表された時だ。その売り上げは3ヶ月でわずか2.16億円だった。一般的なデューデリジェンス(企業の価値を評価すること)の方法では、最もシンプルな形で言うと、PERが20程度であることが平均的である。(もちろん、ベンチャー企業についてこれが全く当てはまらない場合も多いが、)時価総額1300億円に対しては16億円の利益が四半期ごとに得られなくてはいけない。このことから考えるとJIG-SAWの評価はあまりに高すぎる。

では、なぜJIG-SAWはここまで高い評価を受けたのだろうか。それは、JIG-SAWが自社について語った内容にある。2016年2月12日の決算説明会の資料では、時価総額5000億円は通過点であるとし、世界のIoTの市場規模は365兆円であり(IDCの最新の発表では、2020年に200兆円ほどであり、現状正確かどうかは分からない)、そのうちの1%のシェアを獲得するとしている。
とはいえ、その数字はどれほどまでに正確なものなのだろうか。ここに大いなる疑問がある。

エビデンスの足りないJIG-SAW

JIG-SAWの決算説明会資料はわずか全6ページのスライドから成り立っており、その中に1%およびは時価総額5000億円に対するエビデンスは一切見受けられない。もっと言えば、自社の経営状況に対する数字というものが一切存在しない。要するに、世界のIoT市場の1%を取ることができる根拠は存在しない。

しかしながら、強気の姿勢に対して市場は好印象で、高い評価を下した。gumiの件しかり、ほら吹き(あくまで結果的なだけであって本人は本気で考えているだろうが)であってもそれを信じてしまう投資家が存在する。人間である以上そうした冷静な評価をできないことは仕方のないことなのかもしれないし、大口を叩いてそれを達成したスティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグのような例もある以上難しい問題であるのだろう。