イギリスのEU離脱が決定的に


本日の国民投票でイギリスのEU離脱が決定的となった。
はたしてその理由は何なのか。なぜ国民は離脱を選んだのか。

国民投票でEU離脱派が勝利

本日、2016年6月24日(イギリス時間2016年6月23日)イギリスでの国民投票の結果が明らかになった。イギリスのEU離脱・残留をかけた投票は離脱がわずかに残留を上回り、イギリスのEU離脱が決定的となった。
事前のメディアの報道によれば、EU離脱反対派のジョー・コックス下院議員の射殺事件以来、EU残留派の勢いが増しているとされており、イギリスのブックメーカーの1つ『Predictwise』では、EU残留の確率が75%で残留は確定的と思われていた。

ところがふたを開けてみれば離脱が51.9%、残留が48.1%という結果となった。開票途中では残留が上回る状況が続くなどデットヒートを繰り広げたものの離脱派多数となった。その後、議会のウェブサイトには国民投票のやり直しを求める署名が殺到している。(その数は6月29日時点で350万人以上にも及ぶ。)

イギリス国民投票の余波

また、イギリスでの国民投票の結果を受けてユーロは暴落、それにともなってアメリカをはじめとする各国の経済市場、そして日本の株式市場は暴落した。日本では大きな株価下落、円高が進行し大きなあおりを受ける結果となった。イギリスのEU残留が決定すれば株価等は元に戻ると言われているが(事実、国民投票に拘束力はない)、伝統的に投票の結果を重んじるイギリス議会がこの結果を覆すことは想定し得ないだろう。

とはいえ、EUを離脱するのはすぐに起こることではない。EU理事会などの手続きや、貿易協定結び直しなどの様々なプロセスが実際にイギリスがEUを離脱するまでに必要となる。この新しい体制の詳細が決まるまでには2年~5年ほどの月日が見られると思われる。マーケットが長期的に完全にそういったイギリスの余波を織り込みながら動くとは思えないため、一度マーケットは元の鞘に収まっていくだろう。

イギリスがEU離脱を選んだ理由

では、なぜイギリスがEU離脱へと踏み切ったのか、イギリス国民の51.9%がEU離脱を支持したのか。それにはいくつかの理由がある。
そして、おそらくその最大の要因となったのは移民の問題だろう。ドイツを中心としてEUでは難民の受け入れを行っており、それにイギリスも加わる必要がある。イギリスでは毎年数千人の難民を認定している。この数はEU内で言えば決して多いというわけではないが、もともとEU内でありながら独自の通貨を使用するなどEUに積極的ではないイギリスはこれに耐えられなかったのだろう。

イギリス自体、シェンゲン協定に参加していないため、EU内の域内移動を無条件に受け入れる必要はなく(シェンゲン協定に参加している国では、EU内の人の移動を無条件に受け入れる必要がある)、自国で移民を管理することはできる、ただ、EUに属している以上好き勝手移民を拒むことができることを意味しない。移民が原因でイギリス内では学校や病院などの公共機関をもともとのイギリス国民が利用できないという事態に陥っている。

このことについては、本誌で今後詳しく扱っていく予定となっているが、こうした移民とイギリスで生まれイギリス国籍を持つ国民の権利との関係性がうまくいかなかったということは間違いない。予想外のEU離脱はもはや決定的だ。