イスラエルがスタートアップの聖地になった理由


近年急速にスタートアップが増えている国がある。
それがイスラエルだ。はたしてなぜイスラエルは第二のシリコンバレーと言われるまでになったのだろうか。

スタートアップの聖地イスラエル

イスラエルや今やシリコンバレーに次ぐスタートアップの聖地である。
2016年に入り、アメリカではスタートアップ投資が縮小傾向にあることが、それに対してイスラエルでは2016年の第1四半期で173社の合計10.9億ドル(約1100億円)と、既に日本の年間の資金調達額の1000億円を超える数字であり、第1四半期としては過去5年で最高額をマークしている。

イスラエルは高い発想力と技術力、そしてベンチャースピリットで溢れており、ウォーレンバフェットやセコイアキャピタルなど世界中の投資家、そしてGoogleやAppleなどの巨大企業がこぞって注目する『スタートアップ大国』である。
日本からもYJキャピタル、ドコモ・ベンチャーズといった投資家による投資、企業の間でもソニーによる買収やソフトバンクによる投資など、イスラエルの技術力に注目が集まり、イスラエルという国が徐々に知られている。

イスラエルという国

では、はたしてなぜイスラエルがここまでスタートアップの聖地として注目されているのだろうか。イスラエルはだいたい日本で言えば中国地方ほどの国土と人口を有している。それなのに日本の数倍のスタートアップ投資額の数倍の規模を誇るというのは非常に大きな数字である。

イスラエルは中東パレスチナに位置する国家であり、イメージの通り治安のいい国ではない。国民皆兵国家であり、兵役が義務付けられている。
そんな事情が実は逆にイスラエルがスタートアップ大国である一因に実はなっている。

イスラエルでは、優秀な学生は徴兵を延期される仕組みがある。これを求めて優秀な学生はその中で勝ち残ろうとより勉学に励む。シリコンバレーが起源を軍事研究に持つことは知られているが、こうした厳しい環境がかえってベンチャー精神を育んでいるという見方もできるだろう。

イスラエルがここまでたどり着いた理由

イスラエルの経済規模は日本で言うと埼玉県ほどである。1人当たりの名目GDPは実は日本よりも少し高い。
建国当時、イスラエルは周辺にあるアラブ諸国(北にレバノン、北東にシリア、東にヨルダン、南にエジプトと接する)との戦争状態という非常に劣悪な環境であった。それゆえに隣国との戦争に敗れないように、軍事技術および科学技術の開発に非常に力を入れてきた。それが今のイスラエルを支えている。

科学研究の水準が非常に高く、専門資格を持った人材資源が豊富であり、科学技術の研究開発に注がれる資金の額は、GDPとの比率でみると世界1位という数字を誇っている。
医学と生物工学、その周辺分野極めて進んだ研究開発基盤を持ち、広範囲な研究に取り組んでいる。
土地柄の関係か暗号理論の水準が高いとされ、インターネットのセキュリティーにおいて重要な役割を演じるファイアウォールや公開鍵の開発において、イスラエルは世界的にも重要な役割を果たして来た。宇宙開発技術も高く、独自に人工衛星も打ち上げているなど最先端の研究が進んでいる。

このように、劣悪な環境にあるがゆえの危機意識からくる研究がイスラエルを支えていると言えるだろう。