マイクロソフトを救うガレージ精神


マイクロソフトでは、ベンチャー精神を育むあるプロジェクトがある。
Garageプロジェクトははたしてどのようなものなのだろうか。

マイクロソフトの『Garageプロジェクト』

マイクロソフトは2009年から『Garageプロジェクト』と呼ばれるプロジェクトを行っている。これは、アップルやGoogleなど世界的企業がガレージから事業をスタートしたのことに起因するもので、マイクロソフトとて無関係ではいられない大企業病を回避するためのものである。

小さな小さな規模からスタートしたベンチャー企業が、大成功を収めた、その規模が大きくなり大企業となっていくのに伴い、すっかりベンチャー精神を失い決まりきった製品や特徴のないサービスを生み出し続け、その良さを失っていくことはどこでもあることである。
マイクロソフトはすでに創業から41年を経過し、全世界で12万人という社員がいる。Garageプロジェクトは、ベンチャー精神をマイクロソフトの中に再び生み出すためのものである。

Garageプロジェクトで行われること

Garageプロジェクトでモットーとされているものは、『doers, not talkers.』という言葉だ。口先を動かすのではなく、実際にアイデアを形にする姿勢を重視してる。このプロジェクトではすでに45を超えるテーマにおいて1万人以上の社員が参加している。

その形は、勤務時間以外の時間を利用しながら社員が興味を持ったアイデアを実現することを支援するものになっている。プロジェクトのテーマ対象はその内容を問わず、OSすら問わないものである。最先端のセンサー技術やロボティクス技術を活用したものも多いという。
社内外のフィードバックを得て完成した製品や技術は、実際の製品に、機能のひとつとして取り入れられる場合もある。

大企業にベンチャー精神を

社員がいいアイディアを思いついたとしても、組織の中でそれを実現するためにはビジネスプランを練り、一定以上の成果を求めることになる。そうした現実性ばかりを追い求めていると、隠れた素晴らしいアイディアや情熱が実現されないまま埋もれてしまう。まさにこれが大企業病の一例だ。
それを防ぎ、自由な発想でアイディアを実現させようというのがこのGarageプロジェクトである。その過程で社員が新たな素晴らしい技術を身に付けることもあるだろう。

この16ヶ月の間で、50個のプロダクトがGarageプロジェクトからリリースされている。そのひとつが『Hub Keyboard』だ。異なるアプリを使っていても、キーボード上の統一された操作環境からコピーやペーストの作業、文書検索、情報共有、メッセージ翻訳などの操作が可能になるプロダクトである。
2015年3月に1人の社員が個人的な取り組みとして開発を始めたもので、それに賛同した7人のメンバーがプロジェクトに参加し、社内イベントを通じて社内から資金を調達した。

Garageプロジェクトは大企業が戦い続ける術

ワシントン州シアトル近郊のレドモンドにあるマイクロソフト本社キャンパスの27号棟では、Garageプロジェクトの拠点が存在する。27棟のの一角にあるエリアには、3Dプリンタやレーザー刻印装置などの最新の機器が豊富に設置されている。

創業当時はベンチャー精神によって支えられていた企業も時間をかけて企業の規模が大きくなるにつれてその精神を失う場合はほとんどの企業であることである。Garageプロジェクトは、大企業がベンチャーの精神を持ち続けるための1つの形なのかもしれない。