Uberの『ただの配車アプリを超える戦略』


Uberはタクシーをディスラプトした存在と捉えられている。
ただ、このスタートアップの受ける評価は既存タクシー業界のそれすら上回る。それはいったいなぜだろうか。

Uberの目指すもの

Uberは現在、5兆円にも上る価値があると市場からの評価受けている。ただし、周知の通り、Uberの役割はいわゆるタクシーにあたるものを呼ぶことだ。タクシーがどれだけ普及したとしてもそれは5兆円の価値があるかと言われると非常に懐疑的にならざるを得ないだろう。
ただ、なぜUberがこれだけの評価を受けるかはあと5分もすれば分かることだろう。

Uberはオンライン上のあらゆる部分に顔を出している。Uberは、『我々が出向いていく必要がある。人々が快適に過ごしているところにUberが存在しているべきなのだ』と語る。2014年11月、Googleマップ上にはウーバーを呼んだ場合の所要時間を表示するボタンが表示されるようになった。Uberは自らのアプリ上のみならずあらゆる部分でユーザーとの接点を持つ。

サービスと一体化するUber

Uberのこうした戦略は、APIを初めて公開した2014年8月に始まったものだ。

『Outlook』や『Slack』、『HipChat』これらのいずれからもUberをすぐに使えるようになっている。『Windows 10』からUberを呼んだり、Googleマップからその料金を調べたりすることもできる。
『Apple Watch』やその他のスマートウォッチなどでもすでにUberを配車することができるようになっている。部屋にある置いてある『Amazon Echo』で『アレクサ』(Siriのようなもの)に話しかければ、自動的にUberにつながり、配車がされるようになっている。

アプリのダウンロードをしなくてもUberを利用することができるように常に配慮がなされている。

様々な場で自動化するUber

また、対話によるサービスの利用についてもUberは積極的だ。Facebook Messengerとの連携により、Uberを使う旨を告げると、Messengerは『Uberを呼びましょうか?』と提案するほどの知能すら持ち合わせるだろう。
現にユーザーとの対話はすでに始まっている。

Messenger上でのユーザーとのやりとりについては、到着予定時間や領収書の送信など、一部の自動化されている作業を除いてなんと全て人間が返事している。とはいえ、今後その行為は自動化されていく。まるで人間と遜色ないほどに自然にユーザーとの対話が可能になるだろう。

Uberの新たなプロジェクト

Uberは2016年1月、以前から計画していた『Trip Experiences』プロジェクトの開始を発表した。これは、Uberに乗車中のユーザーがその時間も楽しめるようにするためのプロジェクトである。例えば、Uberで移動する際にはスマートフォンでフライトの最新情報や空港の地図を通知できる。他にも、15分間という移動時間を認識して、15分で読めるニュース記事を届けることができる。乗車の際に、その気分と移動時間にふさわしいプレイリストが提供されることもあるだろう。

Uberはただのタクシーの改良ではない。乗車中もユーザーがその時間を楽しめるように、そもそもUberやタクシーを利用して移動をする市場規模自体を大きくしようとしている。Uberの出現によって、今までタクシーを利用していた時間を遥かに超える時間をUberで過ごすことになるだろう。