なぜメディアはPV至上主義から脱却できないのか


PVという指標は非常に便利だ。
しかし、これほどテクノロジーの発達した時代において、今さらPV?という意見ももっともだろう。なぜPV至上主義は変わらないのか。

メディアの評価軸は変わらない

相変わらずインターネットメディアの評価軸はPV(Page View…1ユーザーが1ページを見るたびに1つとして数える)がまかり通っている。あくまで、”見た”というだけの話でしかないし、PV数〇〇!と掲げるだけでは正しく評価することができない、と言われてはいるものの、実のところPV以上に分かりやすい指標がないのも事実だ。

インターネットの世界では、特にその中でもFacebookやTwitterなどのSNSにYahooニュースやGunosyなどのwebニュースではMAUという指標が用いられる。Manthly Active Userとは、1ヶ月のうちに1回でも利用したユーザーの数だ。登録されたユーザーでもアプリをアンインストールした人もいるかもしれないし、はたまた使い続けているユーザーもいるのだが、ちょうどいい地点をとって1ヶ月に1回使っていればまあユーザーと見なそうということだ。

MERYなどキュレーションメディア、ないしは広告によって収益を上げることの多いインターネットメディアについてはPVがベースになって評価されることが多い。
何ページをのべで読んでもらえているかが分かりやすいため、便利な指標であることは間違いないだろう。

なぜPVを使うのか

なぜPVなのかと言うとやはり広告主にアピールしやすい数字として共通の言語としてPVがあるからだろう。ユーザーの離脱率がこのくらいとか、リピーターがどのくらいとか、SNSでこのくらい拡散力を持つとか、そういった部分よりもどれだけ読まれたか、というのは分かりやすい。

正直な話、広告主はPVが同じであってもその質には大きく差がある場合がある、というか往々にして差はある、ということを分かっていないのである。分かっていたとしてもその差異を明確に見分けることなどできない。
だから、メディアは『〇〇PVです!』と声を大にするし、広告主も『〇〇PVか…この前のメディアよりもいいしじゃあそちらにしようか。』という風に解釈するのである。

もちろん、1PVの価値は常に異なる。PVを伸ばすことを意識しようとすればするほど、1PVあたりの価値は小さくなるかもしれない。そのくらい相反する概念であるだろう。

バイラルメディアのPVの価値は

例えば、バイラルメディアと言われる類のメディアが存在する。その草分け的な存在がBuzfeedであるのだが、これはバイラル、つまり拡散されることを意図したような、そういった種類の題材を扱うメディアである。
よく、皮肉交じりに『FB(Facebook)でシェアされるなら猫か赤ちゃん。』と言ったりするが、まさにその通りで、Facebook上ではそういう内容がシェアされやすいのは事実だ。誰でも分かりやすいし、だいたいの人は猫も赤ちゃんも可愛いと思っている。

また、芸能ニュースなどを扱い、いわゆる釣りタイトル(『〇〇の熱愛発覚!?』みたいなタイトルにするも、中身を見てみるとなんてことない、ただの想像上の噂の話だったりする)でPVを稼ごうとするやり方もバイラルメディアと呼ばれるジャンルでは多かったりする。これについては、Facebookが対策をしており、そのうち減るだろう。

こうしたメディアは、たしかにPVは伸びやすい。というよりも、PVを伸ばすことのみに絞って一点集中でコンテンツを投下しているとすら言えるだろう。じゃあ、そのPV分評価が高いかというとそんなことはない。むしろ、PVあたりの価値は極めて小さい。

広告主にとっての価値はPVと一致しない

バイラルメディアのPVが多かったからと言って、広告主にとってそれは価値のあるメディアなのだろうか。もちろん比例しないし、PVが少ない専門的な内容を扱うメディアの方が広告の効果が高いことはざらにある。

最大の要因としては、メディアの信頼度が圧倒的に違う。専門的な内容、例えば自動車に関する内容を扱ったメディアがあったとして、細かいパーツについて解説していたとしよう。専門的な内容ゆえにPVは少ないだろう(そもそもそういう内容の対象になる人が少ない)が、広告を載せた場合でも信頼性は強い。メディアへの信頼性はある程度、広告の信頼性にもよる。

下劣な芸能ニュースばかりとりあげているメディアの中の広告をあなたはクリックしようと思うだろうか、それ自体そもそも不安なはずだ。

PVあたりの価値が高い事例

もう1つの要素として、内容がバーティカルで専門的であるほどPVあたりの価値は高いと言える。
広告を載せるとして、専門的なメディアに載せる方が効果がある。なんでも扱うニュースサイトにクレジットカードの広告を載せるのならば、そもそもクレジットカードについて扱っているサイトにクレジットカードの広告を載せる方がターゲットに見てもらえるだろう。

格安SIMの広告なら通信キャリアの料金を比較しているサイトに載せれば効果が高いし、英会話スクールの広告なら英語の勉強法を書いているサイトがいい。このように、ジャンルを絞るほどにPV自体は減るかもしれないが、PVあたりの価値は高くなる。

PV自体完全なものではないが、あくまでそれよりも便利な指標がないことは大きい。広告主とメディアはそれを定量化する手段を持たなくてはならないだろう。