スタートアップを支える独自のエコシステムとは


スタートアップは1日にして生まれない。
それを支えるのがシリコンバレーなどスタートアップの聖地に存在する独自のエコシステムだ。

イスラエルへと渡ったスタートアップのエコシステム

2016年もイスラエルのスタートアップ環境は活発だ。
2016年の上半期でスタートアップに投資された総額は、28億ドルにもなり、イスラエルの投資したお金がしっかり戻ってくるエコシステムは高く評価されている。2016年前半のスタートアップの買収総額は、35億ドル程度であり、7月末にはオンラインゲームのPlaytika社が中国のShanghai Giant Network Technology社に44億ドルで買収される。すでに80億ドルに到達し、2016年の買収総額も昨年同様、日本円で1兆円を超えることになりそうである。

では、なぜイスラエルでここまで多くのスタートアップが生まれているのだろうか。それを紐解くには、シリコンバレーから伝わるスタートアップのエコシステムが非常に重要になってくるだろう。シリコンバレーから、スタートアップにはどんなエコシステムが存在するのだろうか。

キーワードは『アクセラレータ』

キーワードは、『アクセラレータ』という言葉だ。
アクセラレータとは、ベンチャーの成長を加速させる仕掛けを提供する仕組みであり、選考のふるいにかけられ残った有望なアーリーステージのスタートアップに対して、数ヶ月の特訓プログラムを提供し、ビジネスモデルを確立するための支援を行い、次の資金調達につなげるためのピッチイベントやデモイベントを開催するといったものになっている。
アーリーステージのベンチャーが独り立ちすることへの支援を行うプログラムとして機能しており、アクセラレータの中でも、各企業の戦略に応じてカスタマイズしたものを『コーポレートアクセラレータ』と呼ぶようになり、今や一般的なものになっている。

シリコンバレーではもはやお馴染みの方法であるが、イスラエルにおいてはアクセラレータプログラムの稼働は2010年まではほぼ存在しなかったところから2016年7月末時点で270ほどまでなった。この仕組みがイスラエルの今の成功を生んだと言っても過言ではない。

日本での導入が期待される『アクセラレータ』

このアクセラレータの最大の目的は、企業の戦略に基づき数ヶ月~1年という短期間で小さく速く失敗をすること。何度も失敗しては修正することで、いち早く知恵を蓄積でき、そのノウハウで成功の確率はぐんと上がる。さらに、そういったプログラムの中で多くの優秀な人材がコミュニティとして集まることになる。

アクセラレータを企業が主導で行うケースも多く、インテルなど一流の巨大企業もこうした動きを見せている。彼らでさえ、スタートアップの力を借りようとしている。スタートアップからすればどのようなビジネスが必要とされており、バイアウトが可能かが分かるため、対応しやすい。 

今の日本ではこうした取り組みは存在するものの、そこまでの大きさではないだろう。特に小さく速くを繰り返すというやり方は、なかなか相容れない部分でもあるのかもしれない。スピーディーな取り組みが進めばスタートアップ業界へ資金も流れやすくなる。どれだけエコシステムを構築できるかというのは1つのキーワードになるだろう。