シリコンバレーが決済サービスに夢中なわけ


最近よく聞くのが決済サービスへの大手IT企業の参入。
はたしてこの分野にどんな可能性があるのか。アップル、Googleの見据える未来とは。

決済サービスにはどんな魅力があるのか

FinTechの未来を担うSquareのIPO価格は9ドルに

このsquareは代表的な決済サービスのスタートアップではあるが、今シリコンバレーの企業はこぞって決済サービスに力を入れている。『Google Wallet(グーグルウォレット)』に『Apple Pay(アップルペイ)』とIT業界どころか世界の2大企業が決済サービスへの参入を行っているが、何がそこまで決済サービスの魅力なのであるだろうか。

この決済におけるgoogleやアップル側の収益は取引額の0.05%と言われ、1万円の買い物をしたときに5円という非常にわずかな額である。そして、決済サービスの導入に当たっては大きなコストがかかる。iPhoneやAndroidのデバイスにそうした機能を搭載する必要があるし、様々な店舗で利用可能にするための労力も決して小さくはない。そう考えたときにメリットがはたしてどれだけあるのだろうかという話になるのはムリもない。

決済でディスラプティブイノベーションを起こすか

ディスラプティブイノベーションとは日本語に言い換えると”破壊的革命”となり、既存の産業の市場を塗り替えるような大きな変化が起こることを指す。特にITの分野ではそうしたことが起こっており、amazonの台頭によって街の書店が売り上げを大きく落としたり、AppleのiTuneによってCDの売り上げが大きく落ち込むなどの破壊的革命が起こっている。実は、決済サービスというのはそうした破壊的革命の可能性を秘めている。

多くのアナリストは特にアップルやGoogleのこれらの決済サービスに対して非常の好感を持っており、決済サービスはクレジットカード会社やATMへの影響が甚大であるとの破壊的革命への可能性を示唆している。特にアップルが進めているのはデビットカード付きの口座開設を含んだスキームであり、通常クレジットカード会社は決済のみ回収のリスクを考慮して3%以上の手数料を取っている。これは、クレジットカードを使用した消費者が必ずしもその金額を支払えないというリスクに基づいたもので、このリスクを負担するのは通常店舗となる。それがデビットカードに焦点を当てれば支払いの未収リスクは存在しないから手数料はごくわずかになるだろう。現在の10分の1ほどになる可能性もなくはない。
それに、仮にアップルがiTunesCardを利用した電子マネーの形での決済を進める場合については、一時的にアップルの懐に金銭が入ってくることになる。結果としてもちろんチャージした金額のすべてを消費者は使用することができるが、その場合は今で言えばメルカリのように一時的に貯まるお金を運用することができるまでになればそれによる収益を見込むこともできる。
要するに、アップルやGoogleが銀行のようにお金を預かっている状態にすらなりうるということである。

デバイスを金融にまで普及するアップル、Google

こうした点を考慮した場合、決済サービスというのはものすごい可能性を秘めているのかもしれない。もしも、iPhoneユーザーが世界に10億人いるとしてそのうち3億人がこのApplePayを利用して平均の残高が3000円だとするとその総額は9000億円になる計算だ。この金額のキャッシュをアップルは運用することができるし、さらには決済の単価を上げることもできる。ディスラプティブイノベーション(=破壊的革命)に多いパターンは採算度外視で普及率を高め、その後手数料などを上げるという形になっている。普及した後であれば仮に手数料が上がってもそうそうユーザーは離れない。

そうなれば、多くのクレジットカード会社は打撃を受けるかもしれない。クレジットを使用する中で残るのはリボ払いなどの金銭的なゆとりのない消費者が多くなるからそのリスクはさらに増加しさらに店舗側への手数料を増やす必要が出てくる可能性も想像できる。一見地味にしか見えない決済サービスではあるが、こう考えたときに非常に大きな市場でありかつ革命的な変化が起こるであろう。今後の動きに非常に注目である。