量子コンピュータは2017年についに新たなステージへ


量子コンピュータは2017年1つのバズワードになるかもしれない。
あらゆる可能性を秘め、IT革命の次なるステージへのカギになる技術であるが、すでに研究を進めるGoogleやマイクロソフトらが研究領域からエンジニアリングの領域へ進もうとしている。

量子コンピュータがエンジニアリングへ

量子コンピュータは、一般的にはなじみのない言葉である。これは、コンピュータの小型化・高性能化に欠かせないトランジスタの小型化がある一定まで達すると量子の世界になり、電子が壁をすり抜けてしまうという現象が起き、新たな動き方をするコンピュータで、現在の1億倍のスピードで動くとされている。

今のコンピュータの性能を遥かに超える量子コンピュータは、Googleやマイクロソフトをなど、IT企業の巨人やスタートアップによって実用化を目指して研究が進められている。そんな中、科学誌の権威であるNatureは、2017年は量子コンピューターが”研究”から”エンジニアリング”の領域に移行する年になると発表している。

IT企業が量子コンピュータに挑む

Googleは2014年から超伝導を用いた量子コンピュータに取り組んでいる。マイクロソフトはトポロジカル量子コンピュータの開発を進めるなど、異なる理論でから量子コンピュータを実現しようとしている。事実、量子コンピュータの研究に取り組むスタートアップも増えており、量子コンピュータへの関心は今もなお高まる一方である。

各所で行なわれている量子コンピュータの研究は多くがすでに同じポイントになっており、物理学実験が必要なのが現状の動きとなっている。つまり量子の性質そのものを研究して可能性を探る段階から、量子コンピュータそのものを作っていく段階に至っていると言えるだろう。

量子コンピュータが完成すると、AIやVRなど非常に莫大な処理を必要とする技術がいとも簡単に実現されるようになる。当然、それが実用化され、一般に販売されるようなレベルになるまで、企業が使える価格になるまでには時間がかかるだろうが、あらゆる可能性が模索されるようになるだろう。

なぜ量子コンピュータがあらゆることを実現するのか

量子コンピュータはただ1億倍計算が速いだけなのに、なぜあらゆる技術を実現することができるのだろうか。それを考えるためにはコンピュータというものそのものを知る必要がある。コンピュータが行っていることはそもそも計算でしかない。0と1から構成される情報を変換することで今このように文字列を表現したり、写真や動画を表現することが可能になる。例えば、文字をうってエンターキーを押すと変換されるが、それもプログラムされた変換機能が計算によって作動しているだけということである。

また、AIも計算であると言えるだろう。今存在するAIの多くは(というよりも未来で実現されるAIも)、膨大なデータから計算を行い、目的の指標を最大化したり(利益を最大化する金融AIなど)、どれに分類されるかを見極めたり(この画像は猫か)といったことを行う。その計算をする必要があるのだが、AIに必要なのは膨大なデータと膨大な(統計学のそれに近い)計算なのである。

つまり、計算が次元の違うレベルで速い量子コンピュータですぐにAIを構築することができるし、学習のスピードも上がるということになる。例えば、囲碁で世界チャンピオンに勝ったようなAIが瞬時に構築できるようになる可能性があるだろう。
(囲碁のAIの場合は膨大なデータに加え、AI同士で対戦を行うことによって次々に強くなっていく)

また量子コンピュータの仕組みについてはこの動画が非常に分かりやすい。