Yコンビネーターがベーシックインカム導入へ


Yコンビネーターが驚愕のプロジェクトに挑む。
その内容は、ベーシックインカム。なぜ彼らがベーシックインカムを導入するのか。

Yコンビネーター驚きの発表

シリコンバレーで最も名高いインキュベーターであるYコンビネーターが今年2016年6月に驚くべき発表を行った。『ベーシックインカム』のパイロットプロジェクトをカリフォルニア州オークランドで年内に開始するのだという。
Yコンビネーターと言えば投資先の企業の時価総額の合計はAlphabet(旧Google)をも上回る60兆円以上とされている。

Yコンビネーターの取り組みはベーシックインカムを模したものであり、参加者に1年間無条件で少額の現金を毎月支給し、その動向を見るというものである。ベーシックインカムは国内ないしは地域内で必要最低限の生活できる額の現金を支給し続けるというもので、そのことによって人々は労働の意欲を失い制度が成立しなくなるのか、それとも機械によって多くの仕事は代替されるために成立するのかが注目されている。

プロジェクトの中身は

この取り組みは、30~50人に対して月額1500ドルないしは2000ドルを支給する。それと同時に現金の支給を受けない同規模の比較対象群も用意しその違いを比較することでどのような変化が生まれるかを観察するという形になっている。このプロジェクトには1年間総額150万ドルほどを費やす。

ベーシックインカムの制度自体は20世紀の思想家の間で盛んに議論が行われている。制度自体を取り入れた国家は存在せず、フィンランドでは試験的な導入が検討されており、またユトレヒトではすでに試験的な導入が2016年1月から行われている程度で、どうなるかという部分について結論はついていない。

なぜ民間がベーシックインカムに挑むのか

上記の例は全て自治体であり、Yコンビネーターという民間団体がこれを行うことは非常に興味深い。このプロジェクトの運営者に抜擢されたのは、ミシガン大学の博士課程を2016年に卒業したばかりの研究者エリザベス・ローズである。まだ細部は十分に決まっているわけではなく、参加者は実際にはどのように選ばれるのかといった部分は疑問のままであるという。
もし成功すればこのベーシックインカム・プロジェクトは次の5年で数百人規模になり、オークランドを超えた範囲でこれが行われることが予想されている。Yコンビネーターの狙いは貧困層を、適切な方法で支援することなのだという。

Yコンビネーターには、ただお金を稼ぐだけでは面白くないというカルチャーがあり、得た収益をこうした社会に対する研究に投入することをミッションとしているのだという。今までこうしたことを行うのは常に国家だった。それが今では民間になりつつある。彼らの影響力は急速に増していくのかもしれない。