2016年度、牛肉の高騰により飲食業界は鶏肉を注目するようになりました。
鶏肉の持つ魅力は加工して味の変化を付けやすいこと、そして何より原価が安いことです。この中でも日本の誇る「焼き鳥」は巨大なコンテンツとブランドを構築しています。
ではなぜ飲食の中で焼き鳥が注目されたのかを探っていきましょう。
2016年の飲食業界の動向について
2016年度は居酒屋チェーンの鳥貴族が大幅な業績向上し、ワタミグループ系列である三代目鳥メロが全国に展開されました。鳥貴族は全品280円の安さを強調した手法を取ることで成功し、三代目鳥メロはワタミの悪印象を払拭させるほどの展開を果たしました。
両社に共通して言えるのは鶏肉の中でも”焼き鳥”を主力に置いたことです。この”焼き鳥”はマーケティング面からしても様々な可能性を秘めています。
焼き鳥の魅力とは
焼き鳥の魅力は味の種類が豊富で、食べやすく、低価格で提供しやすいという面にあります。食べやすさとはこの場合、人を選ばないことを指します。
嫌いな人が少なく、また日本人以外にも親しみやすい要素を多分に含んでいます。焼き鳥はシンプルさと奥深さを両方兼ね備えた料理と言えるでしょう。
焼き鳥の味の拡張性
焼き鳥という一大ジャンルの中には他種多様な味があります。ももだけでなく、ねぎま、つくね、かわ、レバー等々、鶏肉の部位を余すことなく使うことができます。胸肉ともも肉以外は癖が強く調理の幅が狭いという欠点を抱えていますが、焼き鳥として含めることで誰でも食べやすいよう工夫が為されています。
焼き鳥というシンプルで安定性のある料理に拡張性をもたらすことで、食べる人を飽きさせずに売上を伸ばすことが可能となりました。
グローバル展開が容易
焼き鳥の魅力は箸を使わず手に持って食べることが可能という点にあります。調理方法も難しくないことに加え、原材料も販路を確保しやすいです。また海外ではてりやきソースとして既に甘辛い醤油ベースソースが浸透しているため、焼き鳥のたれも受け入れ易くなっています。
更に鳥肉は宗教によって制限されず食べる人を選ばないという利点もあります。世界的に食べる人を選ばないというのはそれだけで大きな利点であり、生魚等が苦手な人にも日本食として提供しやすいというのは海外進出の可能性を大きく秘めています。
焼き鳥のブランド力
コンビニから和食料理店、居酒屋、屋台までジャンルを選ばない強さがあります。サークルKで人気商品だったジャンボ焼き鳥は、ファミリーマートに統合されてもなお商品として生き残るほどの根強い人気があります。これを知ったセブンイレブン等はホットスナックコーナーに焼き鳥を導入しようかという動きも見られ、これからコンビニ業界全体でコーヒー、ドーナツに続く競争分野になることが想定されます。
また焼き鳥のブランド力は和食店にも適用されます。比内地鶏等の地鶏を全面に押し出し、高級感を演出することもできます。コンビニが焼き鳥の手軽さに注目したように、和食店では高級鳥の素材を味わう方法として焼き鳥が採用されることも多くあります。
低価格帯の大衆向けから高級感まで幅広くブランドを広げられるのが焼き鳥の持つコンテンツの魅力と言えるでしょう。
食品におけるブランド力とは
普段みなさんが何気なく食べている食品にも、そこには様々な可能性に満ちています。
これから飲食業界へ参入したいという方は店舗形式に拘るだけでなく、どのような食材を用いるのかを多角的に考え時流に乗る必要があります。飲食業界は参入障壁が少ないため競合店が非常に多く、時代の先を読み分析して事業展開する力が求められます。
今回は日本人にとって身近な焼き鳥を題材に取り上げましたが、ブランド力とは何かを考えるきっかけと、マーケティング思考を養うことに繋がってもらえることを願っています。