DeNA創業者南場智子氏が語るサービス立ち上げの秘訣


DeNAがコングロマリットとして様々な事業を展開していることは有名な話であろう。
そんなDeNAの創業者である南場智子氏がサービス立ち上げの秘訣を語った。

DeNA創業者南場智子氏のカリスマ性

DeNA創業者南場智子氏が『マッキンゼーで学んだことは1つもない』と語るわけ

日本にも様々な経営者が存在するが、DeNAの創業者であり現横浜DeNAベイスターズオーナーの南場智子氏は非常に強いカリスマ性を持つ経営者の1人だ。中でも彼女のあまりの”ぶっちゃけぶり”というのは語られることが多い。上記の記事でも南場氏が新卒で入社した世界でも指折りの超一流企業マッキンゼーでの経験は企業を経営する上で『全く役に立たなかった』と語っている。

そんな歯に衣着せぬ物言いは語り草となることも多く、発言は常に注目を集めている。その一方で自身の携わる横浜DeNAベイスターズの経営ではスタジアムを改修した(特に女子トイレやスタジアム内をリニューアルし明るい雰囲気にした)ことで観客数はうなぎ上りに増えておりDeNAが親会社になってからの3年間でなんと観客数は42%に増加した。そんなカリスマ性と高い経営能力を持ち合わせるのが南場智子という起業家である。

南場智子氏は”経営会議をやめた”

そんな南場智子氏は事業の進め方にも特徴が出ている。普通DeNAのようなITサービスを作る企業は『企画→開発→リリース→成功』というフローを踏む。これはどのようなサービスでもおそらく同じであろう。この際に、当然ながらDeNAレベルの企業ともなれば経営会議を挟んで本当にそのサービスをやるべきかを判断する。つまり、『企画→経営会議→開発→経営会議→リリース→経営会議→成功』という風にその都度経営会議が必要になる。経営陣の許可が下りないと開発に入れないし、リリースもできないのだから自然な話であるだろう。

ところが、南場氏はこれを『企画→開発→リリース→経営会議→成功』という風に変えた。つまりリリースするまでは経営会議を挟まない、経営陣の知らないところでサービスがリリースされているという状況だ。
『これを我々は「Permissionless」と呼んでます』と南場氏は語る。Permissionは許可、つまり許可をするかどうかではなく、リリース後にユーザーがどんな反応を示したかという数字のみで判断を行うという形になっている。経営会議でも社長でもあの南場氏でもなく、ユーザーがそのサービスを続けるかを決めるという非常に結果主義である。この決断を上場企業であるDeNAが行うというのは非常に大きなことであろう、この規模でありながら社員は自由にサービスをリリースできるというベンチャースピリットを残している。

南場智子氏は”ユーザー体験を最重要視した”

例えば、若者向けにヒットするアプリを作りたい。そうしたらもっとターゲットセグメントをはっきりさせようよ。そのために、市場調査やろう、競合調査やろう、ニーズの調査をやろう、差別化ポイント何だっけ、ペルソナ設定しよう、コンセプトを設計しようということが始まります。

出典 https://codeiq.jp/

これは非常にスタンダードなビジネスモデルの構築方法である。ターゲットを明確してそれを調査する。その先にはサービス自体の魅力、立ち位置、差別化のポイントを決めるというプロセスを踏む。敵(ユーザー)を知り、己(サービス)を知らば百戦危うからずといった形である。

ところが、南場氏はこのプロセスを変えた。まず先にUX(ユーザーエクスペリエンス)を定義するというのだ。ユーザーエクスペリエンスとはそのサービスの中でユーザーがどんな体験をするかということである。こんな体験ができるサービスはどうだろうか→それならこんなターゲットが最適なんじゃないだろうかといった具合に。今まではターゲットを決めた→じゃあこんな体験はどうだろうかといった形であるから順序が変わっている。まず、どんな体験が得られるかどうかということを最大限に重視するというITサービスならではの形である。

南場智子氏は”個別最適化に変えた”

今まで、webサービスというのも全員に同じ内容を表示していた。誰がサービスを訪れていても当然同じ結果が表示される。それが、データドリブン(データを計測し、サービスを適応させること)によってセグメントごとにサービスを変化させた。つまり、若い男性ならこういった具合にしてみよう、高齢者ならこういう風に変えようという風にそれぞれに対してちょっと作りを変えるということを多くのITサービスは行っている。これが、セグメント最適化と呼ばれる手法だ。

ところが、南場氏は『個別最適化』に変えている。例えばゲームコミュニティの中で『この人はどんなつながりがあってどんな難易度や特性を好むのか』といった具合に分析して1人の人に対して変化を加える。これは数少ないユーザーが月に何十万という単位で課金を行うソーシャルゲームならではの施策であろう。より細かい単位で最適化を行うマーケティングはITの普及、さらにはAIの登場などで今後広まっていくに違いない。事実、グノシーなどは当初パーソナライズ(個別最適化)を謳っていた。

時代はカリスマリーダーを求めている

カリスマと言えば世界的にはスティーブジョブズであろう。彼の没後Apple製品、特にiPhoneを『普通になってしまってつまらない』と語るAppleファンが多いことを考えると非常にその影響力が強かったことを実感させられる。Facebookも創業時同社が資金難になる中でもザッカーバーグは『広告は出さない』と収益化を頑なに拒んだ結果今の地位がある。

これらの海外企業など、急成長を果たし世界を引っ張る企業にはカリスマリーダーが存在し、彼らが常に常識にとらわれない発想をしてきた経緯がある。南場智子氏もきっとその一員なのであろう。