ショーンK氏の学歴詐称発覚がもたらした衝撃は大きいものでしょう。
そして、彼が図らずして暴いたのはこの世の中がいかにいい加減かということでした。
ショーンマクアードル川上氏
DJタレントおよび経済評論家であるショーンマクアードル川上氏の学歴詐称が発覚しました。ショーン氏はテレビ朝日の『報道ステーション』などでコメンテイターを務め、自らを経営コンサルタントと名乗っていたわけですが、そうした経営コンサルタントとしての実態はなく、テンプル大学で学士、ハーバード大学MBA(経営博士号)といった学歴は詐称であったとのことです。また、本名は川上伸一郎であり、外国人の血などは特に入っていない純日本人であることも判明しました。
この学歴詐称は全くのゼロからの嘘ということでもなく、テンプル大学についてはテンプル大学ジャパン(厳密には大学区分ではない)を入学直後退学しており、ハーバード大学やぱり大学もオープンキャンパスなどの受講(基本的に誰でも受けられる開けたもの)をしたのみですが、ほんの少し関係はしているとのことです。自分の経歴を盛ろうとしたところが、完全なる嘘にいつの間にかなってしまったとのことでしょう。
ショーン氏の学歴詐称の経緯
おそらく、ショーン氏は決して最初から明確な悪意を持った嘘をついていたわけではないのではないでしょう。テンプル大学、ハーバード大学、パリ大学のそれぞれについてある程度関係しています。当初はそれとなく幅を持たせる形で、経歴について書いていたことでしょう。その中で活動を続けていく中で周りが予想以上に自分の経歴を受け入れてくれたことからそれがエスカレートした可能性があります。つまり、自分のあいまいな経歴に対して全く突っ込みが入らなかったからやりすぎてしまったというところでしょう。
そういった意味ではありがちな部分なのかもしれません。学歴を詐称したところでその事実について知るすべはそうそうありません。テレビのコメンテイターをやる際に卒業証書の提示を求めることなどほとんどないでしょうし、テレビ業界で言えば、一度キー局が起用してしまえばあとのテレビ局などマスコミはその事実を信用してその人間に対する調査を行わないといいます。結果としてショーン氏はこういった事態になりましたが、彼を起用したテレビ局については特に飛び火は受けていませんし、そういった流れは変わらないでしょう。
学歴詐称でもコメンテイターができたわけ
ハーバード大学でMBAを取得し、日本で活動をする経営コンサルタントおよびコメンテイターは他にもいるはずです。では、なぜそうした本当に経営について詳しいプロフェッショナルではなく、ショーン氏がずっと起用されていたのでしょうか。フジテレビで新しく始まる報道番組『ユアタイム』ではメインキャスターに起用される予定だったと聞きます。彼には学歴以上に評価されていた点があるわけです。
それは、そもそも報道番組のレベルで求められる素養というものが、経営博士号レベルの知識ではなく、ビジュアルや発言の分かりやすさ、テレビ用の喋り方(その番組の方向性に合わせる、尺の中で必ず完結させる)といった部分であるということです。
例えば経営博士号をとった天才がいたとしても、その彼が喋りが下手であったら意味がないし、あまりに高度なことばっかり言っていたらテレビの視聴者に対しては有益ではないわけです。
ショーン氏はそのルックスと声が高く評価されていたといいますし、実際に整形を行っていたとの報道が出ています。顔によって説得力も違うわけですから、それも一つの能力と言うことができるでしょう。ショーン氏より経営に詳しい人物がいてもその容姿が報道番組にピッタリな人物はなかなかいないのでしょう。
東京大学の犯した大きなミス
私は今回の件について、テレビ局については特に問題を感じません。例えば『報道ステーション』を見ている層に対してそこまでレベルの高い経営の知識や解説はいるのでしょうか。正直、そこまで頭のよくない人たちの見る番組ですから(これはほとんどの番組について言えます)、全くもって問題ないわけです。それよりも嘆くべきなのは東京大学がショーン氏を講演に呼んでいたということでしょう。
『日本の教育:産学連携のダイナミズムを取り入れた知の生態系-スタンフォード大学Center of Integrated Systemsの学際教育をベンチマークに』というタイトルで東京大学はショーン氏の講演を実施しています。おそらくハーバード大学の教育を知るショーン氏からアメリカなどの大学での教育からヒントを得るという方向性で見地を得ようとしたのでしょう。
テレビ上でニュースの解説をするうえではショーン氏の知識でも十分ですが、こうした題材の中でそれを行う上でショーン氏の経歴や知識では不十分でしょう。自称経営コンサルタントでしかなく実態はDJおよびコメンテイターだったわけですからそれを見抜けない東京大学には問題があります。1つの作品として楽しんでもらえばいいテレビ局とより高いレベルの学問を追究する東京大学では全く求められるレベルが違います。
テレビ局に知性や知識、高度な学問性を求めるのはお門違いというものですが、東京大学にとっては必要不可欠な要素です。日本でトップの最高学府がそうしたミスを犯したということは、それほど世の中が甘いことを示してもいるでしょう。これを機に杜撰な体制を改めて頂きたいものです。