現れつつあるモチベーション3.0


人間を動かすモチベーションにはいくつかの段階があります。
昔話題になったモチベーション2.0.そしてその次になるのがモチベーション3.0です。

ロンドンで行われた吸殻のポイ捨て対策

交通ルールなど公共の場での仕組みが以前とは違ってきているように感じます。代表的なのがロンドンでのタバコの吸殻のポイ捨てに対する施策でしょう。ロンドンの環境問題に様々なアプローチをしている団体Hubbubによって行われたこの取り組みは、タバコの吸殻入れが投票箱になっているという仕組みで、この場合は、『メッシかロナウドどっちが世界最高の選手?』という投票にタバコの吸殻を捨てることで参加することができます。サッカーの母国での非常にユーモア溢れる取り組みです。

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ロンドンでは、毎年1500億円をかけて公道の清掃に取り組んでいるも全く改善されなかったそうですが、この取り組みによって吸殻のポイ捨ては改善されつつあるそうです。お金をかけて綺麗にしようとするよりもアイディア1つでたちまち変わってしまうのは面白い例です。

広まりつつあるモチベーション3.0

他にも、公道でのスピード違反を防止するために、法定速度で走ると音が鳴るようになっており、それが曲のようになる道路や、男性用トイレの便器に的を設置してそこめがけて用を足すようにしたトイレなど、このような『まるでそうしたくなってしまう』施策は数多く存在します。
これは、モチベーション3.0というくくりで表すことができるのです。

モチベーション1.0は強制することによってその動機を作るやり方です。ポイ捨てなら、シンガポールのようにポイ捨てに対して重い罰則をつけることでポイ捨てをなくします。
モチベーション2.0はそれによって報酬が得られることでその動機を作ります。例えば、タバコの吸殻を自分の携帯灰皿に捨てるようにして、それがある程度たまるようになったら何グラムでいくらもらえるとかポイ捨てしないことによる動機を作ります。
モチベーション3.0はその行動そのものに楽しさを感じることで動機が生まれます。上記のように、投票したいという気持ちにさせることで、ポイ捨てではなく、所定の場所に捨てるようになります。

働き方もサービスを使ってもらう方法も、受験勉強もそれら全てがモチベーションによって左右されます。その上でいかに動機付けを作るかというのは非常に重要な部分でしょう。
かつては、モチベーション1.0のような強制的に従わせる方法が多かったでしょう。しかし、それでは人はいいパフォーマンスは上げられないために報酬を与えてニンジン作戦に出ました。ただ、これには欠点があります。報酬を目的としているため、報酬のための我慢になってしまうのです。燃え尽き症候群になったり、ある程度経済的にも満足している人は動きません。
最も理想なのがモチベーション3.0のそれ自体が楽しく趣味のような感覚であることです。理想論に聞こえるような話ではありますが、働くことそのものがものすごく楽しくなってしまえばいいパフォーマンスが上げられるようになるでしょう。

モチベーション3.0が最も功績を残す理由

例えば、東京大学に合格するような学生などは非常に優秀ですが、それ以上に勉強そのものが好きな割合が多いのではないでしょうか。それが見られるのは理系学部において顕著であるように思えます。東大生の4人に1人はアスペルガー症候群の疑いがあるようですが、アスペルガー症候群の特徴は、自分が好きな物事については非常に長い時間飽きずに集中力が持続するところにあります。
知識を入れること、問題を解くことそのものが好きなのですから当然上達する可能性も極めて高いことになります。

また、受験をうまく勝ち抜く学生の特徴として目標設定がうまく、日々の中で目標達成を繰り返していくことで成績を上げることができたり、受験直前になると集中力を発揮する自己コントロール力の高いタイプがいます。これはモチベーション2.0をうまく活用していると言えるでしょう。
ただ、上記のモチベーション3.0ほど優れてはいません。そもそも勉強が好きな人は、何もなくても勝手に勉強をするためそういう意味では勝てないからです。受験勉強において勉強自体に楽しさを見出すのは誰にでも当てはまることではありませんし、モチベーション3.0がいかに難しいかが分かります。

今後求められるモチベーションの在り方

このように、モチベーション3.0をいかにして引き出すかというのは非常に難しいことが分かります。仕事に対してやりがいや責任感を見出しているとしても、休日も勝手に自分1人で仕事をするほどにそれが好きな人間は皆無でしょう。ごく一部の好きなことを仕事にすることができた幸運の持ち主くらいしか当てはまりません。

ただ、最初に挙げたような、ポイ捨てをなくすとかそういった小さなことであればモチベーションを3.0にもっていくことができるのではないでしょうか。小さな小さな一瞬に対してモチベーションを作るような仕組みにすればいいわけです。ルールでもって人を縛り付けるのではなく、ルールでもって人を楽しませ、なおかつ目的を達成させることが今後求められるのではないでしょうか。