いつの時代も、世の中を大きく変えるのはイノベーターだった。
では、はたしてイノベーターは他者と何が違うのだろうか。彼らがイノベーターである理由はどこにあるのだろうか。
イノベーターの条件
偉大なイノベーターはいつの世も人々の憧れであった。今イノベーターと言って思い浮かべるのはアップルを創ったスティーブ・ジョブズだろう。
イノベーターとしてその挙動が注目されているのはテスラモーターズCEOのイーロン・マスクである。
では、イノベ-ターははたしてなぜイノベーター足り得たのか。イノベーターの平均像では、彼らの60%が博士号を所有しているなどの特徴があることが分かったが、勉強ができること、学問を究めていることが社会を動かすイノベーションに直結するとは限らない。
勉学とビジネスにおける業績はイコールではないが、はたしてイノベーターに必要な要素とはなんだろうか。ハーバードビジネススクールの看板教授であり、イノベーションの権威である、クリステンセン教授は偉大なイノベータに共通する能力は『5つの発見力』であると結論付けた。
1、関連付け思考力
一見関係のないと思われている問題や違う分野同士のアイディアを関連付ける思考力のことを関連付け思考力(Associatiing)と呼ぶ。この関連付け思想は残り4つの発見力を結束させる核になる力であり、これを身に着けることで残りの4つの発見力の質は飛躍的に向上するという。
『メディチエフェクト』と呼ばれる様々な分野がつながりあう場所で革新的なアイディアが生まれるという現象もこの思考力によるものだ。
スティーブ・ジョブズはエンジニアやデザイナーだけでなく、哲学者や詩人なども雇い意見を交わしたという。さまざまな視点のアイディアがぶつかり合ったことが独創的なアイディアを創出した大きな要因であるとジョブズ自身は主張している。
2、質問力
『マネジメント』の発明者であるピータードラッカーは『重要なことは正しい答えを見つけることではなく、正しい質問を見つけることである』と50年以上前に言葉を残している。疑問、つまりスポットライトを当てる焦点が本質的でなければ、本質的な解答は得られないだろう。
革新的な企業は常に『なぜ?』ということを問い続ける。ある問題が考えるときに、『そもそもその問題を解決する必要があるのか?』ということを考える。細かな部分ではなく、全体像を常に見ながら本質的な問題を解決しようとする。『なぜ?』ということを考えるのは意外と難しい。『まあこれでいいか』と思考を停止するのではなく、常に目の前の疑問を受け止め、本質的な質問をもたらす必要がある。
3、観察力
『優れた芸術家は真似る。偉大な芸術家は盗む』との明言を画家のピカソは残した。スティーブジョブズはこの名言を引用したという。
観察を重ねることで、他人の能力を自分自身に吸収し自分の能力と組み合わせることで、オリジナルを超える可能性を手に入れることができる。
実は、マイクロソフトとアップルは常にお互いがアイディアを盗み合っている。革新的なアイディアを創出する能力を持つ人間は、他人を観察することでその要素を常に取り入れることができる。他の要素を常に取り入れ続けることでより良いものを取捨選択して洗練されたものが出来上がるのである。
4、実験力
『私はまだ失敗していない。ただうまくいかない方法を1万通り発見しただけである』という言葉は偉大な発明家でありゼネラル・エレクトロニックの創業者であるトーマス・エジソンのものだ。
発明家やイノベーターは常に何度も試作品を作り、ダメならば違うやり方を試し、その末に成功を収めている。
スティーブ・ジョブズがiPhoneを発表したとき、その試作品は完成しておらず、動かないこともしばしばであったという。ところが、何度もの失敗を繰り返し、今や世界の多くの人々が使うデバイスになっている。
5、ネットワーキング力
ジョブズが哲学者や詩人のアイディアを取り入れたように、多様な背景を持つ人々とのネットワークを通してアイディアを見つけたり多様な見解を取り入れることで劇的に違う見方を身に付けることができる。
シリコンバレーをはじめとしてサンフランシスコではネットワークの重要性の認識が進んでおり、毎晩ネットワークイベントが行われている。偉大なイノベーターは常に他者からのアイディアを取り入れ、より新しい知見を吸収する。
イノベーターは先天的なものではない
この5つの発見力(関連付け思考力、質問力、観察力、実験力、ネットワーキング力)を提唱したクリステンセン教授はこの5つの発見力について後天的にも身に付けることができると語っている。
イノベーションを起こすために重要なのは、単なる知識ではなく、知識を得るための行動である。イノべーター足り得る行動をすることがイノベーターを形成するだろう。