大学生が成長する場はないのが基本


『成長したい』という欲を持っている大学生はきっと多いだろう。
若く体力に溢れている大学生はそんな野心を持っている。ところが、大学生が成長することというのは実はものすごく難しい。その場はなかなかないのだろう。

ライフネット生命の岩瀬大輔社長が炎上

こんな話が世を騒がせた。ライフネット生命へある学生がインターンをさせてくれとドアの前へ待ち伏せして懇願したという。ライフネットの岩瀬社長はそこまで言うならと自身の名刺の情報を一つ一つExcelに入力させる仕事を与えたが、その学生は2週間で辞めてしまったという。

これを受けて『学生にこれだけやらせるのは酷』『せっかくやる気ある学生が来たのにそれをマネジメントしきれなかった』という批判があったようだ。もちろん、それだけでなく『単純作業で自分の能力をアピールできなかった学生の力が足りない』『自分から頼み込んだんだからどんなことでもやり遂げるべき』というような学生へ批判的で岩瀬社長を擁護する意見も多く見られた。

成長のチャンスというのは少ない

とはいえ、これが学生にとっての現実なのではないだろうか。岩瀬社長は東京大学在学中に司法試験に合格しボストンコンサルティンググループ、リップルウッドと職を移した後に、ライフネット生命を創業した秀才中の秀才であることもあって学生がやる気を持って働きにきても戦力にならないという厳しい判断をしたこともあるだろうが、多くの企業にとって学生など当たり前ながら使い物にはならない。だから新卒採用して半年間ほどの研修期間を設け、社会人として働けるように教育する(言い方を変えれば社畜に仕立てあげるということでもあるだろう)。

ところが、インターンの場合についてはそういうわけにもいかない。たとえ教育して働けるようにしても他の企業にいくかもしれないし、そもそもフルタイムで働けないことは大きなハンデになる。もしもこの学生が初めからライフネット生命で戦力になるレベルにあればチャンスが与えられたことだろう。もし東京大学の秀才で頭も切れたら、もし様々な言語を操るプログラマーだったら、もし英語がペラペラだったら、その場合はまた違った展開があっただろう。そんな一目見て分かる能力でなくとも、名刺の管理の中で他の形を示したり、岩瀬社長を驚かせるようなやり方があれば2週間以内に他のチャンスがあったはずだ。名刺の情報を管理することにどういう意味があるのか、そこから何を見出せるのかといったことにいきつかなかったということは学生自身が社会で通用するレベルにはなかったということだろう。

名刺の管理をさせられたのはかわいそうという意見もあるが、社会人の仕事の中で上場企業の社長の持つ名刺を管理でき、岩瀬社長と直接話すことのできる立ち位置がそこまで恵まれていない立ち位置だとは思えない。少なくとも新卒の社員はそれ以上につまらない仕事をさせられているだろう。

学生が成長できることは数少ない

世の中には有給インターンシップという形で、意欲のある学生がアルバイトの枠組みを越えて限りなく社員に近い形で働いている場合もある。ところがその実態は体のいい雑用係であることも多く、またインターンシップは雇用でないため最低賃金を支払う必要のない働き手とみなせれている(厳密には実務と関係ないことをさせるのは違法)。そのため学生にチャンスが与えられることは非常に少ないと言える。言い換えれば学生に核になる部分を任せるほど危ない会社はそうない。

ともなると、やはり学生が社会に出る経験をするというのは非常に難しい部分がある。企業には学生を教育するほど余裕はないし、そのメリットよりもコストが多くかかる。基本的に前述の学生のような境遇から企業で認められるような働きをする他成長の機会はないだろう。

その他のやり方では起業するという方法は1つあるだろう。何も後ろ盾のない状態で自分だけの力で社会に出る方が苦労は比べ物にならないほど多いだろうがその分だけ自分の評価を受け止めることもできるし、1つ1つ学ぶことができるだろう。社会での成長を求めるという意味では学生団体などの枠の中ではおままごとでしかないからいずれにせよ経済活動としてシビアな評価を受けるしかない。学生というのは意外に成長する機会がないし、なかなか難しいものなのかもしれない。