シリコンバレーを目指すインターンの実情


シリコンバレーという憧れの地で悲しい問題が起こっている。
インターンを無給で働かせたとして指摘を受けるなどインターンの労働搾取が起こっているようだ。

シリコンバレーをめぐる問題

シリコンバレーは多くの若者の憧れだ。そしてそれはアメリカ内だけの話ではない。そこから生まれたアップル、Google、Facebookは世界を支配する巨大企業であるし、それに追いつけ追い越せで日夜コードを書く若手起業家が所狭しと存在する。シリコンバレーをはじめとした西海岸のスタートアップのカルチャーは独特だ。スーツを着るよりサンダルにTシャツという大学生顔負けのラフな格好が良しとされるし、肩書よりもずっと実力が重要視される。しかし、競争はどこよりもシビアで多くのギークが自身のプロダクトを競って世界に発信する。
多くのベンチャーキャピタルが存在するものの、持ち込まれる案件のうち投資に至るのは10%にも満たない。

そんなシリコンバレーは、そしてシリコンバレーのスタートアップやベンチャーキャピタルでインターンシップをする、働くという経験はアメリカの学生のみならず日本の学生にとっても大きな出来事であり、その経験が履歴書の1行になることは非常に大きなバリューであるのかもしれない。しかし、そういったことが問題を引き起こしている。

日本人の無給での違法労働

アメリカでインターンをするということは海外で働くということで、たとえインターンであっても有給なれば労働が許されるビザを取得する必要がある。逆にESTA(アメリカ渡航のビザが免除されるプログラム)を申請して訪米しているのであれば、労働は許されない。

アメリカメディアが2016年2月22日(現地時間)、シリコンバレーのベンチャーキャピタルであるFenox Venture Capitalの無給インターンシップ問題について報じた。Fenoxは国内ではテラモーターズやメタップス、ZUUなどへの投資を行っているベンチャーキャピタルである。アメリカの労働省はFenoxに対して、インターンシップに参加する日本人を中心とした若者56人を無給で違法に働かせていたとして3700万円の支払いを行うように命じたという。

Fenoxで起こった無給インターン

報道では、Fenoxが無給インターン生に業界レポートを作成させ、日本のクライアント(LP、つまりは出資者)に送付しているとのことである。インターンシップであれば業務に関わること(労働)を行ってはならないし、業務に関することであればそれは労働になる。それについては、Fenox側は『まさかインターンの作成したレポートがクライアントに届くことはない』と否定しているが、無給インターンが『アナリスト』という肩書きを持ってリサーチに従事していたとの話もある。雑務を任されたという話もあり、無給インターンの扱いではないように見受けられるのも事実だ。

労働省からの命令によって現在インターンシップは多くの問い合わせがありながらも受け入れができない状況にあるという。今回の件で、インターンをしたい学生の渡米が閉ざされるようなことはあってはいけない。

インターンという言葉の抱える問題点

インターンという言葉は廃止した方がいい

本誌でも以前からインターンの在り方については大きな疑問を抱いている。インターンという聴こえのいい言葉は、実際何も生まないし、要するにただの『やりがい搾取』でしかないのだろうという話だ。雑務であっても通常派遣社員を雇えば1ヶ月に22日ほどで45万円くらいは給与を(派遣会社に)払わなくてはいけないのではないだろうか。それが、インターンによって無給でまかなわれるのであれば非常に都合のいい話だ。そして何より、派遣社員よりずっと積極的に業務に取り組んでくれるであろう。
しかし、それに対して給料を払って継続的に働いてもらうほどの、ないしは他社に引き抜かれないようにするほどの評価はしていないわけである。アルバイトよりは評価しているが社員には期待も責任も及ばない。それでも学生はインターンに対して胸を張っているのだからのん気なものだ。

今回の場合は、最大の問題はビザだろう。日本ではこんなことをしている企業はたくさんあるが、日本人を働かせても特に支障はない。
しかし、話を広げた場合、こうしたインターンは大きな問題をはらんでいるように思える。インターンという甘い言葉と見にならない雑務、労働者として正当に評価されない事実は学生の可能性を奪っているのではないだろうか。責任泣き仕事にある価値など乏しい。シリコンバレーのベンチャーキャピタルで力を磨きたいなら有給で自分の価値を買ってくれる状況を作ってシビアに挑戦すべきではないだろうか。無給で何かを得るならわざわざ何ヶ月も働く必要はない(ESTAの上限は90日)。
この問題、まだまだ続きそうだ。