最近では、「IoT」という言葉を耳にすることも増えてきました。ただ、日常生活では目にする機会も多くないため、よくわからないという方もいると思います。では、IoTは実際にどのような場面で活用されているのでしょうか。今回はIoTを活用したビジネスの事例を15個紹介していきます
- 目次
- IoTとは何か?
- 1.スマートロック「Akerun」
- 2.竹中工務店「建物管理システム」
- 3.スマートシティ「バルセロナ」
- 4.みまもりほっとラインi-pot
- 5.カーシェアリング「Car2Go」
- 6.建設機械の稼働管理システム「KOMTRAX」
- 7.ヘルスケアサービス「WellnessLINK」
- 8.ロンドン地下鉄
- 9.安全運転支援サービス「スマイリングロード」
- 10.めざましカーテン「mornin’」
- 11.AeroFarms
- 12.スマート宅配BOX
- 13.セキュリティサービス「Safie」
- 14.RFIDタグを導入する蔦屋書店
- 15.ディズニーワールド「マジックバンド」
- あらゆるものがインターネットに繋がる
IoTとは何か?
IoTとは、「Internet of Things」の略称で、「モノのインターネット」と訳します。
ここでいうモノとは、パソコンやスマートフォンなどの通信機器だけでなく、冷蔵庫、自動車、靴など世の中のあらゆるものです。つまり、IoTとはインターネットに接続されたありとあらゆるものを指します。あらゆるものがインターネットに繋がることによって、膨大な量のデータを収集、分析することが可能になり、日常生活や仕事の利便性を向上させるだけでなく、新たなイノベーションが生まれます。
スマートロック「Akerun」
Akerunは、世界初の後付けのスマートロックです。スマートロックとは、スマホのアプリを使って開け閉めできる鍵です。ドアにAkerunを取り付け、スマートフォンのBluetoothで認証することで、専用のアプリをタップするだけで鍵の開け閉めを行えるようになります。
この仕組みを使えば、誰かに家の鍵を貸したい時でもアプリをダウンロードするだけで鍵をシェアできます。さらに、鍵を失くすということはありません。仮にスマートフォンを失くしたとしても、新しいスマホにアプリをダウンロードしなおして権限を与えれば再度鍵を使うことができます。
スマートロックという仕組みは、家庭用だけでなく、不動産の内見や子供や高齢者の見守りなど様々な場面に応用できます。今後は様々な施設でスマートロックの導入が進むことでしょう。
竹中工務店「建物管理システム」
竹中工務店ではマイクロソフトと連携し、IoTとクラウドサービスを活用した建物管理システムを提供しています。建物内で使用される空調や照明などの設備に通信機能を持たせ、そこから得られる情報をクラウドで統合することで、ビルの管理・制御を効率的に行います。マイクロソフトが提供する機械学習ソフトによる解析を利用することで、これまで人力で行なっていたデータ解析を自動で行ない、低コストで最適な運用を実現しています。
スマートシティ「バルセロナ」
スペインのバルセロナは、IoT先進都市として有名です。マイクロソフト社と手を組んで、街中にセンサーを張り巡らせ、水道や交通、医療などのIoTプラットフォームを構築しました。各センサーから得られるビッグデータを解析することで効率的に街中のシステムを運用することができます。例えば、駐車場の空きスペースをセンサーで感知し、駐車場を探しているドライバーにスマートフォンから空き状況を伝えています。このように、街中のデータを収集・分析することで今まで非効率だった場面が効率化されるのです。
みまもりほっとラインi-pot
象印マホービンでは、離れて暮らす高齢者の安否を確認できるサービス「みまもりほっとライン」を提供しています。高齢者はインターネットに繋がった電気ポットi-potの使用状況を送信することで離れて暮らす家族に安否を伝えることができます。i-potに電源を入れたり、給湯するたびにセンサーから信号が送られ、家族のパソコンやスマホにメールで連絡します。使用している高齢者が、i-potを操作しなかった場合、何らかのアクシデントが発生したとして異変を知らせます。
カーシェアリング「Car2Go」
ドイツの自動車メーカー、ダイムラー社が提供している、乗り捨てが可能なカーシェアリングサービス「Car2Go」。スマートフォンで使用可能な車両を検索して、簡単に見つけることができます。
フロントガラス内に搭載している認証機器に会員カードをかざすと車のロックが外れ使用できるようになります。返却する際は、駐車違反にならない区域で路上駐車してサービスを終了させるだけです。借りた場所に返す必要がないので、自分のスケジュールに合わせて乗り回すことができます。
建設機械の稼働管理システム「KOMTRAX」
「KOMTRAX」とは、建設機械・鉱山機械メーカーであるコマツが開発した機械稼働管理システムです。コマツでは、自社の建設機械にGPSやセンサーを標準搭載しており、機械の稼働状況を可視化しています。建設機械の現在位置だけでなく、稼働時間、燃料の残量、故障の有無などの情報を遠隔から知ることができます。KOMTRAXを搭載した建設機械から得られるデータを分析して、故障の予兆を事前に予測し、部品交換や修理などの保守サービスを提供しています。
KOMTRAXの装備は、建設機械に無償で搭載しています。それは、データを集めることがコマツ側にもメリットがあるからです。約40万台の世界中の建設機械から得られるデータから故障の予兆を事前に予測し、部品交換や修理などの保守サービスを提供することで顧客満足度を向上できるだけでなく、建設機械の需要を予測し生産計画にも活かすことができるのです。
ヘルスケアサービス「WellnessLINK」
出典 http://www.wellnesslink.jp/
「WellnessLINK(ウェルネスリンク)」はオムロンのヘルスケアサービスです。スマートフォンと体重計や血圧計などのIoTデバイスを連携させることで、毎日測定した健康データをクラウド上で解析し、パーソナルアドバイスを受けることができます。
ロンドン地下鉄
出典 https://enterprise.microsoft.com
ロンドン地下鉄は日本の地下鉄と比べ故障や遅延が多いとされていましたが、IoTによる監視システムを導入することで大きく変わりました。駅構内の空調システム、エスカレーターや監視カメラなど様々な箇所にセンサーデバイスを設置し、クラウド上にそれらのデータを蓄積して一元管理しています。クラウド上の大量のデータを解析することで、設備の故障や異常発生なども予測できるようになりました。
地下鉄側はリアルタイムで各設備の状況を遠隔から一元管理することで、メンテナンスなどにかかるコストが大きく削減されています。さらに、乗客もアプリを使って地下鉄の運行状況をリアルタイムで確認できるようになり利便性が向上しました。
安全運転支援サービス「スマイリングロード」
損保ジャパン日本興亜は、IoTを活用した企業向け安全運転支援サービス「スマイリングロード」を提供しています。通信機能を搭載したドライブレコーダーから走行距離や速度、急ブレーキの回数などの詳細な走行データを収集します。得られたビッグデータをクラウド上で分析し、ドライバーや企業に安全運転診断等のフィードバックを送信します。
安全運転が増え事故が減少することで、企業は保険料が軽減され、損保ジャパン日本興亜は保険金の支払いが軽減されるといった双方にメリットがあります。
めざましカーテン「mornin’」
「めざましカーテン mornin’」は世界初のスマホ連動型カーテン自動開閉機です。Bluetoothが搭載されている同商品をカーテンレールに装着した後、スマートフォンアプリで時間を設定することで、その時間に自動でカーテンを開けてくれます。太陽光を浴びることでメラトニン
が減少し、快適に目覚めることができます。
AeroFarms
これまで農業従事者の経験に頼る部分が大きかった農業の分野においても、IoTの活用が進みつつあります。アメリカのベンチャー企業AeroFarms社は、都市部で世界最大規模の植物工場を立ち上げました。都市部でも効率よく植物を生産するために、縦にトレイの積み重ねてLEDライトで照らすことで植物を育てています。さらに、この工場の大きな特徴は、ミストを根に吹き付けることで植物を育てているので、他の農場と比較して水使用量を95%も抑えられることです。21世紀に深刻化されると言われている水不足を解決できる手段として注目を集めています。
スマート宅配BOX
「スマート宅配BOX」は、受取人がいなくても荷物を保管できる宅配ボックスです。宅配便の再配達を減らすために開発されました。ネットで注文した荷物がボックスに届くと自動でメールに通知が届き、スマートフォンアプリをかざすだけで鍵の開閉ができます。鍵の開閉履歴はクラウド上で一元管理できるため、配送時のトラブルを防止することも可能です。オフィスや駅、空港など様々な場所を荷物の受け取り場所に指定することができるので、荷物を自分の都合に合わせていつでもどこでも受け取ることができます。
セキュリティサービス「Safie」
Safie(セーフィー)は、カメラとスマホを使って簡単に家や店舗を見守ることができるセキュリティサービスです。カメラをインターネットに繋げば、クラウドを通じて、高画質な録画動画もライブ映像もスマホから手軽に見ることができます。さらに、動体検知センサーがで何か変化を検出すると、スマホに自動的にアラートする防犯システムも備わっています。
Safieは、約2万円で導入でき、月額料金も1台1058円という圧倒的な低価格が特徴です。なぜ、低価格を実現できているのかというと、国内の防犯カメラのほとんどがシステムが別々に稼働しており非効率が生じている一方で、Safieはクラウドで一元管理することで運用コストを軽減しているからなのです。
RFIDタグを導入する蔦屋書店
小売業界では、RFIDと呼ばれるICタグの導入が進んでいます。RFIDを使えば、無線通信によって直接触れなくても情報を読み取ることが可能です。これを商品に装着することで、いつ、どこで生産され、どの店舗のどの棚に陳列され、レジまで運ばれたのかという生産から販売までのプロセスを追跡できるようになります。在庫の可視化、生産計画の改善、万引き防止など無駄なコストを軽減し、商品をより安く安定的に販売することが可能になります。
TSUTAYAが運営する代官山の蔦屋書店では、書籍、DVD、CDなどの主要商品に約80万枚のRFIDタグを用いた販売・在庫管理システムを構築しました。レジ作業では、複数の商品を一括で認識できるので手間が省けるだけでなく、セルフレジも設置しているため、従業員を減らして人件費を減らすことができます。さらに、RFIDタグを使えば、どの商品がどこにどのくらいあるのかを瞬時に把握することができるので、人気商品や不人気商品などの販売データをもとに精密な在庫管理が可能になります。
経済産業省は2020年の東京五輪開幕に向けて、3年以内に店員のいない「無人コンビニ」を実用化を目指しており、全国に無人の小売店が増えるのも遠い未来ではありません。現在、RFIDタグの製造コストは1枚10~20円と言われていますが、大量に生産することができればコストは下がりさらに導入のハードルが下がるでしょう。
ディズニーワールド「マジックバンド」
米国フロリダにあるディズニーワールドでは、チケットの代わりにマジックバンドと呼ばれるリストバンドを導入しています。マジックバンドとは、RFIDチップ内蔵のウェアラブルデバイスで、来場者は園内で財布やチケットの代わりとして使用することができます。来場者はマジックバンドをかざすだけで入場し、レストランやショップで買い物もできるのです。
マジックバンドは顧客満足度を向上させるだけでなく、ディズニー側にも大きなメリットがあります。リアルタイムで来場者の状況を把握することで、設備やサービスの改善に繋げることができます。例えば、混んでいるアトラクションが把握できれば、それに応じてスタッフの配置を最適化することができます。
あらゆるものがインターネットに繋がる
2015年時点でインターネットに接続しているるデバイスは約250億台ですが、2020年には2倍の約500億台に達すると言われています。今後はインターネットに接続するデバイスが激増する流れにあり、かつてテクノロジーとは無関係であった業界でさえも、IoTやクラウドサービスを活用する必要が出てくるでしょう。
IoTにより、モノがインターネットに接続すると、今まで数値化できなかったものを定量化・可視化することにより、コスト削減や生産性向上といった大きなメリットをもたらします。どんなデータを可視化できれば、新たな価値が生まれるのかを考えていくと、新たなテクノロジーの活用方法が見つかるかもしれません。