FinTechは銀行から天下を奪うのか


FinTechについて語られることは多いが、未だそれがもたらす影響について我々は実感がない。
シティバンクの衝撃のレポートはその影響力の大きさを物語っている。

シティバンクが衝撃のレポート

シティバンクが『今後10年で、欧米の銀行員の3割がスタートアップに職を奪われる』とレポートで予測を発表した。FinTechの急成長が今後も長期的に継続するという見解に基づいたものである。安定な職業の1つであるとされている銀行員が3割も減るという予測に対しては大きな驚きが広がっている。FinTechが猛威を振るうのはまだこれからの話であり、現在は銀行を脅かすようなレベルにあるとはお世辞にも言えない。しかし、この成長が続けば3割の銀行員はFinTechに敗れるかもしれない。

また、シティバンクは『欧米でFinTechがピークに達するが最後、銀行の天下が終結する』とし、そして、『その日はそう遠くはないだろう』とレポートを締めくくった。

銀行で導入される最新技術

実は欧米ではその兆候はすでに始まっている。
多数の銀行がブロックチェーンや人工知能などの最新テクノロジーを採用し始めたことで、欧米では銀行支店の閉鎖や人員削減が相次いでいる。銀行員の役割の1つの中に銀行支店での接客業務が挙げられるわけであるが、それ自体はAIで代替可能な分野である。

そして、ブロックチェーンの技術により、銀行のバックオフィスはその仕事をブロックチェーンに代替されることだろう。最新のテクノロジーはCOBOLに代表される古い技術によって運用される銀行の決済をより素晴らしいものに変えることだろう。昨年はバンク・オブ・アメリカも同様の分析を行い、『金融関連産業は20年以内にロボット化され、2500万人が失業する』との結論を示していた。

FinTechが侵略するのは決済と融資

FinTechで最も開発が進んでいるのは、決済と融資の分野である。FinTechへの昨年の投資額は190億ドルにも上り、過去5年間で10倍以上にまで成長した。決済に融資となればまさに銀行の主力業務でありそういった部分がITの力で銀行の仕事を非常に高いクオリティでそして小規模で実現することができるようになる。

特にこうしたFinTechが進んでいるのは中国でP2Pによる融資額は669億ドルであり、非銀行系決済によるオンライン・セールスは96%に達している。オンラインでの融資のほぼ全てが非銀行系の機関によって行われている。未だ銀行が健在であるアメリカでも2023年には金融業務のうちスタートアップが占める割合が17%まで伸びると予想されている。

そもそも決済の業務においてはSquareStripeなどのオンライン決済が台頭しており、そのさらに先にはApple PayやGoogle Payといったクレジットカードすら通さないシステムが普及する可能性もある。

そして、融資業務においては、今まで銀行は各行員の経験からそうした業務を行っていたが、今後はそれを行うのはAIになるだろう。いちいち人間が判断しなくてもその融資のリスクがいったいどれだけであるかを計算することができる。マシンパワーが圧倒的に上がった今では人間よりもAIの方が正確な判断を下すことができるだろう。
すでに、銀行の天下をFinTechが奪うのは既定路線かもしれない。