サイバーエージェント×AVEXのAWAの目指す形とは?


音楽市場は6000億円から2000億円へとスケールダウンした。しかし、
このAWAは音楽界にとっての新たな可能性を秘めている。

AWAとは

 欧米に後れること数年、日本にもようやく定額制音楽配信の波がやってきた。5月27日、音楽配信サービス「AWA」のスマートフォン向けアプリが登場。国内主要23のレコード会社が提供する数百万曲がストリーミングで聴き放題となるサービスで、利用開始から90日間は無料で体験できる。

出典 http://business.nikkeibp.co.jp/

世界的にはこのような形式が主流となってきており、音楽は定額制で全てが聴き放題となる『サブスクリプション型』が当たり前になっている。日本独自の文化の中で今まではそう浸透していなかったが、このAWAがそれを打ち破る可能性は大いにあるだろう。すでにApp Storeでもダウンロードランキングで総合1位に輝くなど勢いがある。

サイバーエージェントと言えば、『片目惚れ』の事件のような印象が強いが、アメーバピグなどのUI/UXデザイン(使いやすく、ユーザーを魅了するデザインのこと)など特に若年層に対するweb、エンタメの領域でのアプローチに強みがある。

AWAは音楽の領域をAVEXが、そうしたデザインやアプリの開発部分をサイバーエージェントが担っている。両社の折半出資で始まったこの事業はまさにAVEXとサイバーエージェントが強みを生かし合った形となっている。

ユーザーにとってメリットの大きい『サブスクリプション型』

今まで、ユーザーはCD1枚を買い、シングルを1曲聴くのに1600円という金額が必要だった。しかし、iTunes Storeなどによってその額は1曲150円から可能になった。その価格が10分の1までに落ちたのである。これを可能にしたのはネット配信での物流コストやCDという物体のコストをなくしたからである。
今ではCDはなかなか売れず、握手券などの販売方法やライブやグッズで売り上げを稼ぐアーティストも少なくはない。iTunes Storeで安価で音楽が聴ける以上、CDというものの存在意義は希薄であると言ってもいい。

そして、今回のものが『サブスクリプション型』。全ての曲を定額で聴けるシステムである。もちろん、新曲は3か月後からの入荷にするなど、必ずリリース直後に購入するという層に対する売り上げを逃さない工夫は行う。
それでも、ユーザーにとってはとてつもないメリットがある。1曲150円でもダウンロードの際には次々とお金がかかるが、月額1080円で聴き放題となるAWAでは、ユーザーは今までにない数の楽曲と触れ合うことが出来る。
物流コストがなくなり、楽曲はデータという原材料費がは0円の形に移行したからであるが、今まで1曲1600円ものお金を使っていたユーザーは月々たったの1080円で楽曲に囲まれた生活を行える。これ自体はインターネットの生みだした功績と言っていい。

CDはこれからもっと売れなくなる

断言しよう、CDの売り上げはこれからさらに落ち込む。これは情報革命の中においては至極当たり前の減少である。
インターネットによってデータが世界に溢れている。つまりデータを取得することへのコストはぐんぐん下がっている。となるとデータを販売している事業者というのは価格競争状態に入るからどんどん売れなくなる。音楽も出版もしかりである。

ネットを見渡せばそれに近いデータがただで取得できるのである。音楽番組が、PVがYouTubeに上がっている(これ自体は違法であるが)、ビジネス書に近いだけの内容がニュースサイトに書かれている。
その中でわざわざユーザーはお金を払うだろうか?それだけの差別化が図られていないと無理な話であろう。だから事実アーティストはライブを中心としたビジネスに切り替えている。ネットでは絶対に体験できない臨場感を味わうことが出来るライブはネットにとって代わることは無い(もしかしたらバーチャルリアリティがここさえ奪うかもしれないが50年は先の話だ)。

CDが売れなくなることはメリットだ

CDが売れなくなる、音楽業界の市場が小さくなる。これを重く見る人は多いだろう。
しかし、これ自体はメリットでしかない。
音楽自体がすたれているわけではない。人々が音楽に触れる時間自体はむしろ増えているのではないだろうか。

ではなぜ市場が縮小するのだろうか?
それは、より安く提供できるからである。コストをカットしたことで1曲150円という時代が訪れた。それ自体ユーザーにとって大きなメリットである。

では、音楽業界の人間はどうするのだろうか?
それも悲観することではない。仮に音楽というものが日本で10万人によって構成されていたとしよう。それだけの人手がかかって音楽界はユーザーに音楽を届けていた。それが今は1万人でできるようになった。ほぼほぼ同じクオリティを提供できるようになったのである。だから安価になるしその分市場も小さくはなる。しかし、それによって9万人の職はどうなるのだろうか?それは他の業界に移るしかない。人間の使うお金は常にほとんど変わらない。音楽に費やすお金が少なくなった分、他にお金を使うようになったのである。そちらに人が流れるようになるだろう。
9万人は音楽の職に就きたくてもしょうがない。だって1万人で音楽は成り立つことが出来るのだから。

アーティストに追い風

この時代はアーティストにとっては非常に追い風だ。
『サブスクリプション型』であれば、ロングテールの需要が増える。今までの1曲1600円だとユーザーは買える曲数に限りがあるから選ぶのはメジャーなアーティストばかりになる。CDの数に限りがあるCDショップに置かれているのもメジャーなものばかりだ。しかしながら、『サブスクリプション型』であると、聴き放題であるから、マイナーなアーティストにも目を向ける機会がある。アーティストは宣伝費などをかけずとも売れる可能性が出てくるのである。

そこからは先程の通りだ。ライブやグッズなど売り上げを出す方法は楽曲以外にも存在する。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20150529/281799/?rt=nocnt