人の芝生を見ながら『なんで日本には…』とよく言うものですが、
はたしてそれを解決するためにはどうすればいいのでしょうか。今すべきことは愚痴を言うことではなく、解決策を探ることです。
なぜ日本からはジョブズが生まれないのか
アメリカからはビル・ゲイツに始まり、スティーブ・ジョブズ、イーロン・マスク、マーク・ザッカーバーグという世界を代表する、そして世界を動かすリーダーが生まれている。なのになぜ日本からはそれが生まれないのか。
こんな問いが様々な経済紙で、批評家の書籍で繰り広げられています。この問題に対する答えというのはそう簡単に一言で言い表すことはできませんが私が言いたいのは、『それ日本から出ないんどころかそもそもアメリカからしか出てないんだけど?』ということです。
例えばこの記事なんか印象的な結果を示しています。私もこの記事の執筆には関わらせて頂きましたが、最初は『アメリカやっぱ多いなー』という印象から終わってみればアメリカしかいないという結果。いかにアメリカが特別な存在かという話です。だから、『なぜ日本からジョブズは生まれないのか』ではなく、『なぜアメリカからしかジョブズは生まれないのか』という議題であるべきです。
どうしてアメリカからイノベーターは生まれるのか
ではどうしてアメリカからイノベーターは生まれるのでしょうか。
それを考える前に逆説的に『アメリカ以外に本当にイノベーターはいないのだろうか』ということを考えてみました。
世界の企業時価総額の総額(上場した全ての企業の時価総額を足した)ランキングではアメリカが1位で20兆ドル、世界の36%を占めています。続くのは中国で3.6兆ドルということが分かります。だいたいアメリカの5分の1くらいですね。
この時点である一定の答えが出ます。そもそもアメリカがめちゃくちゃでかくて圧倒的であると。
とはいえ、上記の本誌記事のように全てがアメリカというのも不思議な話です。なぜ一つも他国が出てこないのか。1つの理由としてはアメリカは世界の公用語である英語を用いています。これは大きなアドバンテージであることは間違いないでしょう。じゃあ、なんでイギリスじゃダメなんでしょうか?
イギリスは国の時価総額の総額ランキングでは4位に位置しています。なんとか食い込むことができてもおかしくないのではないでしょうか。
この問いに対して1つ答えを用意するとしたら、イノベーターはアメリカで生まれるのでなくイノベーターはアメリカを選ぶということではないでしょうか。
仮に香港だったりドイツやフランスで生まれたイノベーターの卵がいたとしましょう。英語を操れる(だろうと仮定される)彼が選ぶのはアメリカなのではないでしょうか。少なくとも25歳やそこらにもなればアメリカを勝負の地として選択するであろうことは想像に難くありません。
アメリカはなぜイノベーターにとって最適であるのか
では、その彼はなんでアメリカを選んだのでしょうか。
今はIT産業で世界のどこからでも世界中に商売を仕掛けることができます。英語さえ使えれば別にどこで会社を作ったってできないことはありません。
その理由の1つは、『優秀な人材がアメリカに集まっている』ということ。サービスをリリースするのならともかく人材を集めるのにweb上というのもまた難しいでしょう。アメリカにいたら優秀な人材に出会えるチャンスがものすごいあるのだから。
さらなる理由としては、法規制や税制上の有利な点がベンチャー企業にとって多いことにあります。特に大事なのは解雇規制でしょうか。簡単に言うとアメリカの方が解雇がしやすいのでどんどん人を雇って会社を大きくすることができます。
そして、地理上の歴史的な要因があります。実は、イギリスはもともと世界最強の国だったわけですが、その国力を存分に発揮し植民地を持っていました。そして世界の歴史として当然貴族階級が出来上がります。貴族階級はそこにあぐらをかくわけですが、そうして下級の貧民は虐げられることとなります。そんな貴族以外の民族が夢を求め開拓したのがアメリカです。だからこそアメリカは強いのです。だからこそイギリスはアメリカに勝てないとも言えるでしょう。そんなアメリカでも階級制が今は明確になっていますからイスラエルあたりがアメリカを追い抜く日は来るかもしれません。
イノベーターへの障壁でしかない日本
では、日本はイノベーターにとってどんな地なのでしょうか。
結論から話をしてしまうと、日本はこの上なくイノベーターにとって恵まれていない国であると言えるでしょう。
実は、日本自体は経済的に相当優れています。先程の『国の時価総額の総額ランキング』では日本は中国に次ぐ3位で経済的基盤からするとイノベーターが生まれてもおかしくありません。それなのに全くイノベーターが生まれていない(少なくともそうされてる)現状はかなりまずいでしょう。
日本で圧倒的に劣っているのはテクノロジーに対する許容です。ドローンの件でいち早く日本ではドローンを規制する方向へと歩みを進めました。アメリカでははたしてこのようなことが起こるでしょうか?
テクノロジーに対してその恩恵ではなく、『危険性や既存の事業への影響』が懸念されることが先立ちます。それではまずイノベーションは起こりえないでしょう。
もっとも、これは日本だけではなくフランスやドイツではタクシーの配車アプリ『ウーバー』がタクシー事業者の職をおびやかすとして規制の対象となりました。アメリカがそうした点では世界で圧倒的に優れているという話です。
日本はイノベーターを知っているのか
そもそもの話にはなりますが、日本にははたして本当にイノベーターがいないのでしょうか?
例えばソフトバンクの孫正義氏は?DeNAの南場智子氏は?サイバーエージェントの藤田晋氏は?
彼らははたしてイノベーターではないのでしょうか?
イノベーターがいないいないと言う前に日本の中で優れた実績を残す彼らを認め、彼らがより日本の経済を上昇させることを願うべきではないのでしょうか?
スティーブ・ジョブズだってマーク・ザッカーバーグだって決してただの偉人ではありません。ジョブズは部下の披露したアイディアをパクりました。ザッカーバーグは共同創業者の多くと揉めて決別しています。
それを含めてイノベーターを受け入れることができるのでしょうか?どちらが正しいということではなく、それでイノベーターを事業上では小さな欠点からこき下ろすのなら少なくとも日本からイノベーターは生まれることはないということです。
日本はイノベーターというものを本当に知っているのでしょうか?
おそらく最も世界で評価され、熱烈なファンを作り、世界中を魅了したスティーブ・ジョブズは人間的に大いに難のある人物です。圧倒的なクズとしても悪名高い人物です。
アップル社としての船出から彼はスティーブ・ウォズニアックの天才的技術力にのっかっただけの商売のうまいやつとしか思われていませんでした。事実として、業績が悪化した際には更迭され、アップル社を退いています。
『エレベーターに乗り合わせた社員が臭かったのでその場でクビにした』『社員が総出で作り上げたiPhoneの試作品を水の中に投げ、気泡が浮き上がるのを見るとその分小型化できると命じた』彼のエピソードはその人間性の低俗さを語るには事欠きません。
イノベーターは決して人間的に優れている人間を指す言葉ではありません。
イノベーターを殺す国
世界的イノベーターだってこのありさまです。
しかし、彼は世界で最も大きく、ロシアの全ての企業を足しても届かないほどの巨大なアップル社を作り上げました。結果に最大の敬意を払うアメリカならではではないでしょうか。
『そんなこと言ったってジョブズぐらい優れているのなら人間性は忘れるよ』
本当に日本はそれができますか?
ジョブズだって最初から功績を残していたわけではありません。彼は偉大である前から人としてクズでした。たとえクズでも結果を評価することが日本ではできるのでしょうか?
堀江貴文氏はイノベーターではなかったのでしょうか?
彼はヒルズ族という用語のその元でもあり、若手経営者として時代の寵児となりました。そしてその彼がしようとしたことはまさに”日本の腐った部分を変えること”です。日本放送株を取得し、フジテレビを手中に収めようとした彼がしようとしたことはテレビという当時最大のメディアを使ってインターネットを広めること。彼がフジテレビを手に入れていたらすでにスマートテレビは日の目を見ていたのではないでしょうか。
ライブドアの事業内容は革新的ではありませんでした。しかし、権力に逆らいながらも彼がしようとしたことは急激なスピードで日本を変えること。インターネットにより変えること。当時、ライブドアの幹部であった人材が今のLINEを作っていることを考えるとそれだけのことを成し遂げるまでの軌跡にいたことは言うまでもないでしょう。
堀江氏が逮捕された事由は、”粉飾決算”です。そしてその額は53億円と言われています。(本当に粉飾決算かどうかは断言はしません)
そして、今世間を騒がせている東芝のその額は3000億円に上ります。
なぜ、ライブドアは刑事事件で東芝は不正会計と呼ばれるのでしょうか?知識のある方は調べてみてください。両社を比較した際に出てくる気持ちの悪い理不尽さを。
こんな日本にイノベーターは生まれるのでしょうか?
イノベーターが欲しければ村社会をやめよう
アメリカが街だとしたら、日本は村です。その中は非常に閉鎖的であり、独自のルールが存在し、合理的ではない団結感が存在する。そして自らの地位を守るので必死で他者を受け入れることは無い。
この村社会が改善されない限りはイノベーターは生まれません。日本で生まれたイノベーターがいたとしてもメタップス社の佐藤氏のように海外へと出ていきます。
村社会の今のままに固執したいのなら、今の惨状を変える努力をすることが怖いのなら、全員で各々の既得権益を守りながら新しいことに挑戦するものを退け、古臭いやり方で生きていけばいい。ろくに仕事もしない経営者が私腹を肥やす社会であればいい。そのときに日本はアメリカ、中国どころかインドや韓国、台湾をも見上げるようになっていることでしょう。
移民が作った国アメリカと、単一民族による国日本。これがアメリカと日本の違いです。もちろん日本にだっていいところはたくさんある。治安は日本の方が圧倒的にいい。日本人はみなズルをしない、アメリカはその何倍も嘘を平気でつくし仕事だって適当でサービスの質も悪い。日本は”住む”のには最高の国でしょう。私は日本が大好きですし日本人であることに誇りを持っています、日本にずっといたい。
しかし、日本で働きたいかと言われたらそうは思いません。住民にとって最高の国でも労働者にとって最低の国が日本です。
日本にアメリカになれとは言わない。日本はアメリカよりずっといい。しかし、捨てなきゃいけない日本はたくさんあるのではないでしょうか。