人工知能は弁護士の仕事をも奪うのか


人工知能の進化は人間を超える可能性が大いに存在する。
優秀すぎる人工知能は確実に人間の仕事へまでその領域を広げることだろう。そんな人工知能が活躍する領域と言われているのが”弁護士”の業務である。人工知能は弁護士の仕事すらも奪うのか。

人間の役割を果たす人工知能

人工知能は人間の頭の中を再現できるか

弊誌ではたびたび人工知能に関する題材を取り上げてきた。中でも反響があったのは上記の”人工知能は人間の頭の中を再現しうる可能性がある”という記事である。そしてそんな人工知能の持つ能力は、”人間の仕事は人工知能に奪われるのか”という懸念を内包している。

人工知能が人間に近づけば近づくほど、そして人工知能が安価になればなるほど、企業は人間よりも人工知能を採用する可能性が高まるだろう。それは市場の原理から明らかであり、知能を有するものが人間だけではなくプログラムでもある今の時代においては企業は”人間”なのか”人工知能”なのかという2択に迫られている。

テクノロジーは常に人々から仕事を奪い、仕事を与えた

とはいえ、人間の仕事が機械に奪われるのはそれほど悲観することではないだろう。それは先代の例を見れば明らかだ。
例えば、まだ人間がまだ一つ一つ手によって衣服を作っていた頃、機械によってそれが実現するとなれば人々は嘆き、怒った。自分のやってた仕事を機械がこなすようになったのだから当然である。我々はどうやって生きていけばいいのか、人々は機械を破壊して回り反対した。では、今の時代ではどうなっているだろうか。はたして本当に機械がなくなって人が手作りで衣類を完成させればいいと思っているのだろうか。そのような考えは世界中どこにもないはずである。

そして、本当に機械のせいで仕事は奪われたのだろうか。短いスパンで見ればたしかに織物工業に従事する人々は仕事を奪われたかもしれない。しかしながら、それによって現在労働人口は減少しているのだろうか、働きたくても働けない人が増えているのだろうか。仕事がなくなれば人間はもっと機械にはできない人間という価値を生かした仕事を行う。そうやって新たな機会が生まれるだけである。

同様に、人工知能は人々から仕事を奪うことになるだろう。それ自体はすでに決定的である。ところが、それによってまた新たな雇用がどこかで生まれる。他のもっと人工知能ができない仕事に人間は就くだけだ。むしろなぜ、もっと広い目で、『ああよかった。人工知能が仕事をしてくれるから我々はこんなつまらないことをしなくていいんだ』と考えないのか。

人工知能は弁護士を減らす

実は、医師免許などと共に最難関の国家資格の1つに数えられる弁護士資格は以前ほど絶対的なものではなくなっている。弁護士資格を取得した弁護士の中でも食い扶持に困っている弁護士は決して少なくない。弁護士の平均年収は120万円ほど下がったというデータもあるほどだ。1つには弁護士自体の数が増えたことによって供給量自体が増加したこと。もう1つは、訴訟自体が減ったことによって総量として弁護士に対する費用が低下しているということが挙げられる。

そんな弁護士業界においてさらに痛手となりえるであろうものが人工知能の存在だ。
士業の中でもパラリーガルはIBMのワトソンなどに代表される人工知能に代替されるとされている。

パラリーガル

別名リーガルアシスタント。定型的・限定的な書類の作成などの法律業務を弁護士の仕事を補助する役割の者を指して呼ぶ。
欧米のある程度の規模を持つ法律事務所では至極一般的な存在であり、日本でも大規模法律事務所を中心に一般的な存在となりつつある。法律業務に付随するような書類作成・文献調査・資料収集・翻訳などに従事することが多い。

今後、簡単な業務から人工知能が代替していく可能性が高い。その中でも弁護士などの士業は決して例外でなく、特に知識などを武器にしている士業は人工知能の格好の獲物である。知識だけならば半無限に増やすことのできる人工知能は人間を遥かに上回るスピードで業務をこなすため、いとも簡単に人間以上のパフォーマンスを行うであろう。

資格はどんどんとその磐石の椅子を失う

弁護士という資格自体の意味はなほとんどなくなるだろう。弁護士免許は法廷に出るなどの業務を可能にするまさに資格でしかない。資格があるからといってその仕事を高い水準でこなせるわけでもないし、まさにただの”資格”でしかない。
資格を持った上で、法律業務においてクライアントに利益をもたらせるからこそ弁護士の仕事は尽きないのであり、資格を持っていて知識を持っているだけならばそれは人工知能にお任せできる領域でしかない。

資格という、ただの試験に合格しただけのものはあくまで一定のスタートラインに立つための条件でしかなく、『資格をとったから仕事がある』というのは成り立たなくなるであろう。そんな静的な能力は人工知能がいつでも身に付けることができる。医療などの分野はまだまだ機械が追いつける領域ではないだろうが、言語や法律を司る弁護士などの資格は機械で代替がすぐ可能になるだろう。

安定という言葉からはある意味遠ざかるのがこれからの時代であろう。どんなに優秀な人間でもそれだけでは仕事はなくなる。あくまで機械のできない能力がなければいけない。テクノロジーは我々の生活を確実に豊かにするが、凄まじい勢いで進歩する生活では確実な資格というものもなくなることだろう。