スマホの出現で変わった写真業界


IT化の波を受けた写真業界。
写真家とITは近年更に深い繋がりを見せ、写真市場を拡大させています。しかし既存のプロカメラマンの仕事は衰退の一歩を辿っている状況です。

スマートフォンの性能向上

昨今スマートフォンを利用することで誰でも簡単に写真を撮ることができるようになりました。instagram上では毎秒9000枚の写真が投稿されている現状です。スマートフォンの普及、そしてSNSサービスの普及によりアマチュアカメラマンが増え、SNS写真家を名乗る者も現れました。ストックフォトサービスを利用することで、誰でも撮った写真をサイトに載せ収益を得ることもできます。こうしてネットを駆使することでアマチュアでもどんどん作品を発表していけるような環境が整備されてきました。
PIXTAなどのサービスでは、自分の撮った写真を掲載し、それがダウンロードされるごとに報酬がもらえる仕組みになっています。アマチュアカメラマンでも月に50万円を稼ぐケースもあるようです。

またカメラ機能がより強化されたと噂のGooglePixelがリリースされることで既存スマートフォンの低光量時の静止画撮影、高光量時の動体撮影の弱点がカバーされます。このように近年著しい撮影機器の性能向上により、今後プロとアマチュア間の機材の格差は縮まることでしょう。デジタル技術の進歩によりプロとアマチュア間の垣根はどんどん消えてきています。

アマチュアの意識向上

メルカリに代表されるCtoCマーケットでは個々人が物品を撮影、アップロードをして出品しています。被写体と顧客を意識するカメラマン業務を消費者が無意識化で行うことは、ヤフーオークションが興隆した世代より更に浸透することでしょう。彼らにとってカメラマンとしての業務を自然と行うことはもはや日常茶飯事なのです。

ストックフォトサービス上では風景写真等の競争率が高い為、ニッチな需要を満たす被写体選びも研究されています。こうしたアマチュアカメラマンの意識向上、そして写真ストックの過当競争により既存のプロカメラマンの仕事は大きく限定されることでしょう。
音楽業界のCD売上の衰退のように、芸術性の高い職業は徐々にビジネスモデルの転換を迫られています。

なぜ衰退しているのか

雑誌や広告が紙面からネットへ移行し、多種多様な選択肢が広告主やメディアにとって生まれたことで今まで紙面のみだったがゆえに取り得ていた高単価の契約は実現しなくなりました。また写真に対し拘らなければネット上のストックフォトサービスの利用、あるいは社内編集スタッフが撮影するケースが発生します。安価で高性能なデジカメを通すことでプロに外注する費用をカットしています。例えば、ZOZOTOWNなどを運営するスタートトゥデイでは、撮影する確度や照明の位置を固定し、カメラの設定を一定にすることでどんな人でも素人でもプロと遜色ない写真を撮れるようにしています。こうして一つ百万単位の案件が減りつつあります。

zozoused
出典 http://www.careertrek.com/

近年では広告出版業界の縮小もあり、カメラマンビジネスは縮小傾向にあります。ITの発達、安価な機材の普及によりアマチュアからのプロが増えました。これも過当競争の一因となっているでしょう。

プロカメラマンの仕事とは

では、その中で今の時代においてプロのカメラマンに求められるものとは何なのでしょうか。スマートフォンによって一般人が高機能のカメラを持ち、企業ですらもフォトストックサービスからセミプロの素材を利用する時代でも、プロのカメラマンにしかできない仕事があるはずです。

それは、写真に対しどれだけ付加価値をつけられるかにかかっています。被写体の種類を絞り専門性に特化する者、またIT知識を身に付けWEBディレクターになる者、ライターと兼任する者とそれぞれ多様性に富んでいます。会社勤務か独立か、アシスタントかフリーランスかによっても大きく異なります。顧客との取引網を独自に発達させ、ギャラの交渉を上手に活用している人々が最もプロと言えるでしょう。

今後の写真業界の変革

今後の写真業界においてITを駆使し、写真に付加価値を創造し新たなビジネスを作ることが主流となります。特に情報としての写真は利用価値が高く、ネットを通じ速度性を上げることで情報価値を高めています。

一例として事故、災害、事件等は即時需要性が高く、文章で表現せずとも写真を一枚撮りアップロードすることでものの一分の間に様々な人の目にニュースとして届きます。世の中の変動を既存ニュースメディアより早く、現地の声としてフィルターを通さずに情報を届けられるのが写真媒体の最も優れた点ではないでしょうか。それをコミュニケーションとして最大限利用したサービス(snapchatやsnowなど)が流行ったのを見るに、写真の持つ魅力は測り知れないでしょう。

IT発達とこれからの写真業界

独学でも実践を繰り返し顧客需要を見極めることでアマチュアからプロへと転身することが容易となりました。しかし機器の発達によるアマチュア人口の増加、過当競争が進むことで逆説的にプロとして大成することは難化しています。

写真+付加価値を考え創造的なことができる人が今後プロとなれるでしょう。ITの発達は決してカメラマンの仕事を奪うものではなく、個々の能力の拡張と創造性の成長を刺激するものであると考えます。