中国人の『爆買い』その裏にある国民性とは


お馴染みの鼓動様式となっている中国人の爆買い。
その裏にある中国人の持つ独自の国民性とは何なのだろうか。

留まるところを知らない中国人の『爆買い』

10月1~7日は中国の建国記念を祝う国慶節と呼ばれる大型連休だった。それに合わせ、中国からはMade in Japanを求め多くの買い物客が東京、大阪、京都などの日本の観光地へと足を運んだ。訪日外国人全体でもその数は増えているが、中でも日本に訪問する中国人観光客は年々増加しており、今年春の大型連休の時も来日した中国人観光客は35万9100人されている。そして、その消費額はなんと約1125億円にも上る。日本各地の観光・買い物スポットの多くで、売上高が通常の4~11倍となるなどまるでお祭り騒ぎのような中国人バブルである。
今年の国慶節ではその数は40万人とも言われている。株価の大暴落が心配されたがそんなことはつゆ知らず中国人の消費はエスカレートしていく。

毎年、大型連休の時期に日本を訪れる中国人がニュースを騒がせる。中でもおなじみなのは、日本製品を大量に買い漁る『爆買い』の光景である。
『爆買い』とは、訪日外国人が日本で日本製商品を大量購入する様を指して言う。まさに爆発的に買物をしていく様からここ数年でそんな呼び方がなされるようになった。『爆買い』は1つの大きなマーケットとしてこれからも定着していくだろう。

『爆買い』を生む中国人の『面子』とは

そもそもなぜ、中国人観光客は日本での旅行で『爆買い』をするのか。通常の消費行動ではありえない量の品物を買っていく。ヨーロッパやアメリカから日本へ来る観光客も同様に裕福であっておかしくないがあのような『爆買い』は見られない。中国人の何がそうさせるのだろうか。

純粋に中国人の日本滞在での消費量の増加の原因としては、高い経済成長による中国の旅行人口の増加、円安元高の進行、免税店舗の増加などが挙げられるが、中国人が『爆買い』を行うのには『面子』という言葉を抜きには語れない。
『面子』というのは中国人が物事を決定するうえで最も重要視しているものである。日本では『面子』という言葉がイメージするのは他者への対抗意識、見栄、虚栄心などみみっちさという言葉に置き換えられるようなネガティブな方面でのものである。しかし、中国人にとっての『面子』という概念は深く中国人の生き方を規定しているものでそのような日本でのイメージとは少し異なる。
状況を見て判断し臨機応変に一番良いと思うことを実行するのが中国人である。

例えば、日本人がお土産を買う際には、『だいたいこのくらいの仲の人にはいくらくらいが妥当だからこのくらいの予算の中で収めよう』という社会通念に乗っ取って決定をする。ご祝儀などについても一般的に妥当な額、マナーが定まっていてそれに従うのが日本人だ。リクルートがゼクシイにおいて結婚に関するガイドラインを独自に設置し、日本人は従うためそれが日本全体の常識となったのは有名な話である。
対して中国人はそういった取り決めにこだわることがない。『いいものを見つけた!これをあの人にプレゼントしたら喜ぶに違いない!』と思える商品が目に付いたらためらわずにそれを買う。どのくらいが基本的に妥当かという行動方針ではない。中国人が何かを贈るという行為には重要な意味が込められている。それは具体的に何らかの見返りを求めるわけではなく、”物を贈る”行為自体がその贈る相手に対する好意伝達であり、ある人にお土産を渡すことはあなたのことが好きですよ、気にかけていますよ、というメッセージであり、それにかける対価は相手に対する想いの大きさを示している。『あなたのことを思っている自分はこのくらいする』という行為自体が『面子』なのであり、だからこそ中国人は予算を気にせずお土産やプレゼントを買う傾向がある。その中で高いブランド力を持つ日本製品から、相手への最高の気遣いを表している。

中国人に薬が人気な理由

今まで日本製品の中でも電気炊飯器、美容パック、高額化粧水にドライヤーといった美容製品全般、温水洗浄便座などの珍しい日本以外にない製品が人気であったが、近年はそれと代わって薬局で日本の薬が『爆買い』されている。

日本の薬は高い臨床の基準を設けていることから世界的に安全というイメージがあり、中国人からも人気が高い。また、日本製品の口コミが広まっていることや、インターネットメディアで『日本で買うべき薬の一覧』等、日本の製品の紹介をしていることにより薬の爆買いに拍車がかかる形になっている。また、中国では小林製薬というブランドが非常に人気であり以下のような製品がよく買われている。実際小林製薬は2015年4~6月期の売り上げが前年同期と比べて5倍以上となっている。

アンメルツ

anmerutsu
出典 http://www.kobayashi.co.jp/

肩こりや筋肉痛をやわらげるという用途の広さから、自分のものだけでなく知人の分も含めて購入するケースが多い。特に高齢者には必需品となっている。

サカムケア

sakamcare
出典 http://www.kobayashi.co.jp/

液体ばんそうこうは質の低いものではすぐはがれてしまうため、質の高い日本製品はこぞって買っていく傾向にある。また、2015年4~6月期には売り上げが5.43倍になった。

熱さまシート

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出典 http://www.kobayashi.co.jp/

日本でもおなじみの熱さまシートは、2015年4~6月期には37%売り上げが上がった。

ニノキュア

ninocure
出典 http://www.kobayashi.co.jp/

二の腕などのブツブツを治せる塗り薬である。こうしたかゆいところに手の届く商品は日本ならではであり、2015年4~6月期には52%売り上げが上がった。

命の母

inochinohaha
出典 http://www.kobayashi.co.jp/

更年期障害や生理不順によく効く製品であり、そのネーミングからも中国で人気となっている。

日本のドラックストアの海外戦略

これほどの需要があるともなると日本のドラックストアも免税対策や、訪日観光客への端末整備などをしていく必要があるように思われる。事実、あまり『爆買い』に購入量を制限せざるを得ないなど機会損出につながっている場面は多々ある。

日本の薬製品の人気を考えるに医薬品メーカーに関しては海外展開の可能性も大いに存在することだろう。実際中国のOTC市場はアメリカに次ぐ第二位で、2020年には世界一位の座を獲得することが予想されているなど大きな可能性を秘めている。
しかしこの場合課題が中国ではOTC医薬品の販売許可を取得するのに1年半から3年、化粧品でさえ半年から1年かかるという現状である。こうした許可を取得するための手間と時間、コストが商品の価格に上乗せされあまり利益につながらないことから今まで日本のメーカーは二の足を踏んできた。

中国でのOTC医薬品の許可規制緩和がなされるかがポイントとなってくるが、その可能性は具体的なことは未だ上がらず、日本企業は3年ほどの月日とコストを費やし中国市場に参入するかどうかの岐路に立たされている。それでも経済成長により伸びる市場規模を考えると十分にメリットはあるのではないだろうか。