キュレーションメディアはITスタートアップにとって大きな選択肢の1つだ。
MERYやiemoなどをはじめとして多くのキュレーションメディアが存在し、その多くが20代の起業家によるものである。はたしてインターネットメディアにはどんな進化が待っているのか。
webメディア全盛期
今はwebメディアにとって全盛期なのではないだろうか。DeNAのキュレーションプラットフォーム『Pallete』ではMERYやiemoが買収され、その総額は50億円である。また、サイバーエージェントなどもキュレーションメディアを運営している。
そのほかにもTABILABOなど数多くのキュレーションメディアが存在し、スタートアップはEXITを狙って日々コンテンツを量産している。
もちろん、MERYやiemoのように大きなトラフィックを得るメディアはそう多くはないが、参入障壁が低いことや、SEO対策などの見地があれば専門性がなくともビジネスとしてある程度の計算が立つことからwebメディア(特にキュレーションメディア)が数多く存在している。
MERYのようにEC機能を備えたり、iemoのようにリフォームの発注をしたりなどメディアからそうした導線を引くことも可能である。
時代は分散型メディアへ
そして、現在主流となっているのは分散型メディアである。例を挙げるとバズフィードやVICEなどであり、日本ではまだとりたて有名な分散型メディアというのは存在しないだろう。
日本国内の分散型メディアで例を挙げるとするならばこの『C CHANNEL』だろうか。クリッパーと呼ばれる人物が動画を投稿するなどしているのが特徴だ。分散型メディアの特徴は‟自社のドメインではなく、Facebook、TwitterやInstagramなどのSNSで拡散され閲覧される形”であり、主に動画がそういった分散型メディアに適している。
テキストコンテンツとは違い、リンクを踏んだり検索エンジン経由からそのサイトへ訪問しコンテンツを読むという文化がないため(おそらくはGoogleのクローラーは動画の中身を認識できないためSEO対策が難しいということが大きい)、SNS上で拡散される形へと傾いているのだろう。
広告はなくなる?
そうなると、従来のメディアとは違って、分散型メディアではマネタイズの形式が異なってくる。メディアの多くはアドセンスやアフィリエイトなどの形での収益化が一般的であるが、これは自社のサイト上でないと不可能である。SNS上の投稿でアドセンスやアフィリエイトリンクを配置するのは不可能に近い。
そういった意味での成功例はVICEだろう。ドキュメンタリー動画を主にYouTubeのチャンネル上で配信しているカナダ発のメディアではテレビへのコンテンツ提供や、スポンサーコンテンツの配信の主に2つのやり方で収益を得ている。このスポンサーコンテンツの形は今後増えるのではないだろうか。グノシーなどのニュースアプリでもスポンサードコンテンツは他のコンテンツとそん色なく読まれていると言われ、広告というものに対するユーザーの嫌悪感を感じさせない。
広告という領域をどこまで持たせるかというのは線引きが難しい。少なくとも、MERYのEC機能のような形で、広告主ではなくMERYが販売まで行っている、アプリ上で完結するという点でもはや広告ではない。スポンサーコンテンツについては、従来のリンクを踏ませるという嫌悪感はないものの、広告の従来の定義には当てはまる。
ただ、ユーザーの忌み嫌う(急に見たくもないコンテンツが飛び出してくる)広告という要素は今後消えるだろう。
webメディアの課題はストック要素
MERYやiemoは雑誌だ。今まで消費者が雑誌を通して読んでいた情報をインターネット上で読む形へと変わってきている。
とはいえ、雑誌とは明確に異なる点がある。雑誌は読んでいる側はそれがどの雑誌なのかを認識しているがwebメディアについてはその限りではない。どこのメディアの記事なのかを認識していないし、分散型メディアに至ってはともすればFacebook上で流れてきたコンテンツとしか認識しない可能性は高い。
コンテンツを作り、それをSNSなどのチャネルで拡散してインプレッションを増やすというフローの仕組みは存在するものの、雑誌などと違い、ブランド価値からくるリピーターなどのストック要素が蓄積しにくいという特徴がある。いかにメディアそのものにブランド価値を持たせることができるかが今後の課題になるだろう。
メディア独自のハッシュタグで拡散を図るなど、SNS上でのユーザーのコミュニティの形成を図っている部分もある。それでもユーザーに強くメディアそのものが認知されることは難しく、今後メディアは量から質へとスイッチするのかもしれない。