Googleの対策でキュレーションメディアは終わったのか


キュレーションメディアが大打撃を受けています。
Googleの日本限定の仕様変更によって、オリジナル性の低いコンテンツおよびサイトの順位が軒並み下がるという事態が観測され、今後のキュレーションメディアはどうなっていくのでしょうか。

Googleがキュレーションメディア対策

話題になっているためご存じの方も多いと思いますが、日本のGoogle検索のページの品質評価の形が変わりました。

今回のアップデートにより、ユーザーに有用で信頼できる情報を提供することよりも、検索結果のより上位に自ページを表示させることに主眼を置く、品質の低いサイトの順位が下がります。その結果、オリジナルで有用なコンテンツを持つ高品質なサイトが、より上位に表示されるようになります。

ものすごいざっくりと要約するとパクリコンテンツは順位を下げるよ!ということでしょうか。
オリジナルで有用なコンテンツをより評価するとしていることからも、オリジナルでないコンテンツ、引用などによって成り立つコンテンツに対する評価を見直すということになるのでしょうか。
いつものことながら、Googleは明確な基準を公表しておりませんので、そちらに関しては検索順位の推移から推測していくことになります。

キュレーションメディアの抱える問題とは

とはいえ、この文面を見る限り、その対象にあるのがキュレーションメディアであることは明らかです。下記記事でも紹介したように、WELQをはじめとしたキュレーションメディアは倫理的な問題によって多くの批判を招いていました。

DeNAのキュレーションプラットフォーム事業が非公開に

キュレーションメディアが抱える問題として挙げられるのは2つです。

著作権違反の疑い

1つはいわゆるコピーコンテンツというものです。コピーであるかは別として、キュレーションメディアには1次情報はほぼなく、ほとんどがネット上の情報を継ぎ接ぎしたものだとされています。(そもそも、キュレーションとは情報を寄せ集め、適切に編纂したものを指すためキュレーションである以上ある種当たり前のことです。)

BUZZFEEDなどによって明らかにされたWELQの外部ライターの管理の仕組みでは、暗に他のコンテンツからの引用(言い回しや語尾を変えることで完全なコピーコンテンツにしないことを指示しています)を促すものでもあり、オリジナル性という意味では乏しいことは間違いありません。

情報の正確性の欠如

そうしたオリジナル性のあるコンテンツが少ないことと、インターネット上の情報から成っていることもあり、キュレーションメディアでは情報が正確であるかの検証がなされていません。これがWELQなどの医療に関する情報であると大問題になることは明白です。

『肩こりは守護霊のせい?』などのトンデモコンテンツが生まれていることもあってその対策は必要でしょう。実際、DeNA創業者の南場智子氏は、癌についてGoogleで検索を行ったところWELQのいい加減なページが出てきてビックリしたと語っています。

キュレーションメディアの戦略

キュレーションメディアは穿った見方をすれば、Googleの検索エンジンの穴をついた仕組みだと言えます。Googleのアルゴリズムは、情報の正確性やコンテンツの品質を知ることはできません。
仮に間違った情報を書いたとしてもアルゴリズムがその正否を判定することは難しいわけです。AIとは言うものの、今の時代のコンピュータはそこまで頭がよくないのでそこは分かりません。また、コンテンツが良質かどうか(この場合、ユーザーの役に立つか、楽しめるかという文脈で使っています)というのもコンピュータには当然分かりません。

正確性や品質はあくまで人間にしか分からないため、Googleは被リンク(そのページへのリンクを貼っているサイトがあるか)の数であったり、ワードの中の語彙数および共役語、単語の出現を見るということをします。
多くのリンクを貼られているサイト・ページはそれだけ信頼できる可能性が高いし(論文などの評価の仕組みから採っています)、語彙数が多い、つまり専門的な難しい言葉を使っているサイト・ページほど専門家が書いた可能性が高いと考えるわけです。

これを利用したのがキュレーションメディアです。

Googleの仕組みには穴がある

利用というのは言い方が悪いですが、要するにGoogleに評価されるための費用対効果の高い、つまり短い時間や手間でGoogleに評価される仕組みを作ったのがキュレーションサイトと言えるでしょう。多くのサイトのコンテンツを引用すればそれだけで自然に語彙数は増えます。文章というのは簡単にコピーすることができますから一次情報を持った専門家よりも遥かに手間がかからずある程度Googleから見て高評価を受けるコンテンツが作れます。

ただし、そういったサイトが出れば出るほどにユーザーにとっては信頼できるかどうか分からない、オリジナル性の薄いコンテンツが蔓延ることになります。医療の情報を見たかったら実際に医師の書いたコンテンツを見るのが有益なはずなのに情報を継ぎ接ぎしたキュレーションサイトが出てくるのは勝手の悪い話です。

Googleのコンテンツの評価の仕方には問題がある、そうした穴があるということになります。

今回変わったこととは

では、今回どのような対策がなされているのでしょうか。今までにもペンギンアップデート(人工的なリンクの排除)、パンダアップデート(低品質なコンテンツの排除)といったGoogleの検索エンジンのアルゴリズムの変更が行われています。

ペンギンは人工的なリンクを貼ることで被リンクを増やして、自分のサイトを良く見せようとするブラックハットSEOに対する対策であり、リンクに関する変更になります。
そして、パンダは意味をなさない言葉を機械的に羅列する(ワードサラダなどと呼ぶ)ような行為に対する対策です。上にも出たように、語彙数を無理やりして増やす、しかし読んでもなんら意味の分からないコンテンツに対する変更です。

今回の変更は、どちらかと言うとパンダアップデートに近いということになります。低品質なオリジナル性のないコンテンツを下げるものですから、リンクはおそらくあまり関係ないと思われます。そもそも、キュレーションサイトは(外部)リンクはあまり付きませんのでそこを対策する必要はおおよそ少ないように思えます。

大規模なアップデートではないのは間違いない

対策については正直どのようなものが採られているかまだ定かではありません。パンダアップデートは、Googleのアルゴリズムで文章としておかしな機械的だと思われるものを弾く仕組みでしたが、それとはまた違うわけです。このパンダを強化するならば日本語だけ変更を行う必要も、オリジナル性という文言を入れる必要もありません。

ということは、日本語だけ特別に行う必要があったと考えることができます。キュレーションサイト含むオリジナルでないコンテンツの排除を行いたいのならば、全世界で対応すればいいだけです。局所的にしか効かない対応をしたと想像をするのが自然ではないでしょうか。

つまり、オリジナルでない信頼性を欠く(でも、Googleのアルゴリズムでは高く評価されてしまう)コンテンツやサイトをピンポイントで狙ったものであるでしょう。その対応をするのが日本語のみであるということから大規模なアップデートである可能性はまずありません。

影響を受けたのは新興キュレーションメディア

では、実際に今回の対策の影響を受けたサイトはどこなのでしょうか。ITMediaの記事では、SEOの権威である辻正浩氏が影響を大きく受けたと思われるサイトを挙げています。

google_cu

見る限り、やはりキュレーションサイトが多いことが分かります。ただ、NAVERまとめなどの大規模なサイトについてはあまり影響が見られません。一概にキュレーションサイト、つまりオリジナルコンテンツの少ないサイトが影響を受けたわけではないようです。

一説では、手動でのペナルティを与えたのではないかとも言われています。そちらについて検証していきましょう。

手動である可能性は高い

Googleの今回の対策を考える上で難しいのは、オリジナルではないコンテンツをどうやって見つけ出すのかということです。例えば、パンダアップデートによる低品質コンテンツの排除では、人工的に機械によって作られた文章を検知し下げることを行っていますが、それでもSEO事業者の行った実験では、丹精を込めて作った5000字ほどのコンテンツよりも20000字ほどのワードサラダが高い順位になった(先にワードサラダでページを公開し、オリジナルコンテンツに差し替えたところ順位が下がった)という結果が出ています。

同じワードに対して説明を行おうとすると当然内容は似通ってきます。それが専門的な内容であればあるほどでしょう。
また、WELQのように巧妙に言い回しを変えるなどして、同じ内容を言っていても表現の仕方の異なるものであれば機械ではそれを確かめる術がありません。ただ偶然そうなっただけかもしれないのです。

オリジナル性の低いコンテンツを弾こうとすれば、おそらくそのアルゴリズムで汎用的なジャンルを扱っている専門的なサイトも弾かれます。競争の激しいジャンル、つまり色んなサイトが扱っているようなジャンルであれば必ずどこかと被ってしまうからです。そのリスクを考えると、手動で人間の手によってサイトを指定して順位を下げるやり方はある意味妥当なようにも思えます。

Googleはアルゴリズムの穴を認めるのか

今回の対策については、昨日あたりから施行がなされていると思われ、今24時間も経つかどうかくらいでしょう。その短い間ではまだ影響が出ていないサイトもあると思われます。どのような変更が加えられたかについては徐々に分かるようになっていくでしょう。

今のところ見られる影響、Googleのした発表を見る限りではある程度人間の目によって変化を加えているという線が濃厚であるようにも思えますが、はたしてGoogleがアルゴリズムではなく人為的にそうした変更を加えるかについては私は懐疑的にならざるを得ません。そうしたことをすることは、Googleにとっての敗北を意味します。つまり、『アルゴリズムの穴をつかれたけど、これを対策できる見事なアルゴリズムも作れない。仕方ないから人間に判断させよう。』というのはアルゴリズムが不完全であることを認めているようなものです。

検索エンジンというのはあくまでアルゴリズムでありコンピュータであり人間の目で検索結果を決めるものではないわけです。(人間が決めれば必ず主観が入ってしまいます。それでは、Googleの合言葉”Don’t be evil.”に反するでしょう。)
しかし、ブラックハットSEOに対するペナルティを手動でも行っており、その延長線上にあると私は考えます。それゆえに、今回の対策で下がるサイトはあれど上がるサイトはないでしょう。(当然、相対的には上がります。)

キュレーションメディアはやっていけるのか

では、キュレーションサイトおよびキュレーションメディアは今後どうなっていくのでしょうか。今回、大きな影響が見られたうち、『RETRIP』『MARBLE』『KAUMO』は規模も大きく、おそらくそれぞれ月間1億PVくらいはあるのではないでしょうか。キュレーションメディアの中でもトップクラスのサイトです。

それぞれ運営をしているのは学生ベンチャー(出身)として大きな注目を浴びる企業であり、次のMERYとして期待されていたでしょう。今回の対策でもし仮に手動での対策を受けているのならばPVは半分ほどに落ち込むかもしれません。流入のほとんどを検索に頼っているはずです。

こうした対策を受ければPV数が勝負のキュレーションメディア(もちろんPV数が全てではありませんが、PVが半減すれば売上高も半減に近くなると想定されます。)は成り立たなくなるのは明らかでしょう。キュレーションメディアはかなり厳しいと言えそうです。

外部ライターの仕組みは間違いなく厳しい

とはいうものの、私はキュレーションメディアおよびキュレーションサイトの仕組みそのものが間違っているとは思いません。たとえオリジナルでなくとも、世の中に存在する情報を我々が見やすいように要所要所を抑えてくれるサイトは便利だからです。誰しも1回くらいはキュレーションサイトの情報が役に立っているでしょう。

専門的な情報を求めるとき(医療など)にはキュレーションサイトは厄介ですが、自分のあまり詳しくないジャンルについて情報を得たかったらキュレーションサイトは便利です。
例えばファッションに詳しくない人が、マフラーの巻き方を知りたかったとしてキュレーションサイトでその方法10選とかざっくりとまとめてあったらファッションの専門家の語る高度な内容よりも参考になる可能性は高いです。

どちらかと言うと問題なのは外部ライターを利用した仕組みです。ライターにキュレーションサイト側が支払う単価は文字数あたりいくらという単位になっています。そのため、自然と文字数を稼ぐのが目的でコンテンツの質には気が回りません。そうすれば当然コンテンツの質は落ちるでしょう。最低賃金以下で働くクラウドソーシングサービスの外部ライターがコンテンツを作っているのが問題なのです。

クラウドソーシング頼みのキュレーションメディアは潰れる

文字数稼ぎの外部ライターに頼っているキュレーションメディアはおそらく今後もGoogleから低品質の扱いを受けるでしょう。キュレーションメディアの仕組みよりも、安価な外部ライターの仕組みに問題があります。

しかし、NAVERまとめなどのプラットフォームとしての力が強くライターへの還元への仕組みがある程度成立しているサイトを除いて(そのようなサイトはNAVERまとめくらいのものでしょう)、安価なクラウドライター以外にコンテンツを調達する手段がありません。(MERYなど学生起業出身のサイトはインターン生がライターをしていますがおおよそ同じようなものです。)

そのため、今ある多くのサイトはサービスの停止を余儀なくさせるのではないでしょうか。